橡の木の下で

俳句と共に

「弥生」平成28年『橡』5月号より

2016-04-27 08:26:46 | 俳句とエッセイ

 弥生      亜紀子

 

老眼鏡とれば確かや芽吹き山

弥生富士白妙の身のやや細り

初音せり古紙くくりをる勝手口

薪ほど巣枝落してゆく鴉

北窓を開く四隣の親しさよ

いやおひの春後戻る震災忌

日々来る鶯路地に老いにける

道塞ぐ弥生をみなのマラソンぞ

若返る手指やよひの廚水

今朝も来る路地にうぐひす廿日まり

春光や鳳のごと鴉二羽

思ひ出の堰かれ溢るる春夕焼

紫のあてなる十ニ単かな

  悼石倉美津子様

思ひ出の花の千里の朧かな