橡の木の下で

俳句と共に

「二月」令和2年『橡』4月号より

2020-03-27 12:54:59 | 俳句とエッセイ

 二月      亜紀子

 

流感やマスクに口を噤む民

卓に来る蜘蛛もふためく寒戻り

輝ける雪嶺便り建国日

隠密の白腹ひそむ実南天

知らん顔して枝を移る鶇をり

望楼はあけぼの杉の古巣なり

残る鴨一羽真白き巫女秋沙

蕗のたう顔洗はるる今朝の雨

鳥引きしのちの空より小雪舞ふ

独り住むおうなを慕ふかじけ猫

沈丁花香る巷をマスクして

天地も季を忘れて二月果つ

巣鴉も部活ラガーを眺めをり

歌ひをり今朝いやおひの軒雀

電線の鵯も男雛と女雛かな