橡の木の下で

俳句と共に

草稿06/30

2021-06-30 11:27:06 | 一日一句
こしあき蜻蛉雨後の腰帯締めなほし
秋海棠水琴窟にかしぎをり
亜紀子

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草稿06/29

2021-06-29 11:03:04 | 一日一句
梅雨曇ときに帰宅の足重く  亜紀子

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「雑草図鑑」令和3年『橡』7月号より

2021-06-28 11:48:00 | 俳句とエッセイ
雑草図鑑   亜紀子

心にも窓の開閉よなぐもり
あをじでも頬白でもなし囀れる
その昔鮎田楽の振り売りも
ちちははとはらから揃ふ簗料理
朝月や棹を追ひゆく鵜の一羽
矢車を早しのぎたる若葉かな
病む世とも思へぬ銀杏若葉かな
すは火事と焦る階下のバーベキュー
梅雨晴間虻かがやける森のはな
子か親か鴉騒めく真夜の森
小鴉が野太き声で餌をもらふ
持ち歩く雑草図鑑街薄暑
ビル街につと新緑の一区画
醜草の花も顔あげ風薫る
座を離るとき香りくる卓の薔薇

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令和三年紙上五月大会講評 令和3年「橡」7月号より

2021-06-28 11:42:13 | 俳句とエッセイ
令和三年紙上五月大会講評   亜紀子


特選
啓蟄や公園デビュー靴鳴らし  永山比沙子

 春よ来い、早く来い、歩きはじめたみいちゃんのように、幼は自分の足で歩くのが大好き。掲句もようやく暖かな日差しを得て、今日は初めてベビーカーを降りて公園へ。靴鳴らしの一語に弾む姿を彷彿。童謡「靴が鳴る」を自然と口ずさんでしまった。
 後に伺ったところでは、コロナ渦中の巣ごもりの日々、時折送られてくる曾孫さんの動画を見ての作とのこと。読者もまたビデオを抜け出して一緒に青き踏む頃の気分に浸れるだろう。
 ところでデビューにも、スマホデビュー、デイデビュー、シニアカーデビュー等々色々、思いつく限り何でもできそうだが、一句の中に活かすのは難しい。掲句の公園デビューは成功。

二重丸の中から

桜時楽しく学ぶ余生かな  水本艶子

 余生の学びの楽しさを何の衒いもなく詠われて気持ちが良い。余生こそが真の花の時だろうか。あやかりたい。

巣鴉の覗く青空句会かな  大塚洋二

 戦後各地に青空教室があった。掲句の青空句会はコロナ感染対策の一環。密を避け、風通しを良く保ち、散策吟行の後そのまま戸外で句会を開かれたのだろう。
見上げた樹上には営巣鴉、時折黒い尾が動く。こんな呑気な句会も良いもの。コロナの世を忘れる。

名を呼ばれその人知らず彼岸寺 伊藤霞城

 彼岸参りの寺で誰かに呼び止められた。その人は確かに自分の名を知っている。しかし自分には相手が誰だか全く覚えが無い。不思議な気持ち消えやらず。彼岸の語が効いて、茫として、何故かせつない。

一重丸の句から

作り滝施設の妻と逢ふロビー 竹下和宏

 滝の設えの有るロビー。作り滝という季語が外の季節は早進んでいることを示している。環境整った介護施設で、夫人も落ち着いて過ごされていることと想像される。と、ここまでは理詰めに導き出したところ。必要以上には何も書かれていない一句に呼び起こされる感慨は、読者一人一人で異なるのではなかろうか。

芽起こしの風へ投網を放りけり 寳來喜代子

 柔らかな芽吹きの緑、放られて広がる投網。さざ波。春到来の解放感が満ちてくる。

 
 一昨年の五月には予想もしなかった紙上大会も二度目となりました。今年もたくさんのご参加有難うございます。そして準備万端、進めてくださった幹事の皆さまに感謝いたします。
 この文章を書いている現在、今後の状況は見通せませんが、来年こそは一堂に会して開催できますよう念じております。
 まずは毎月の橡誌上での繋がりを大切に学ばせていただきます。日々の感染防止にも注意して、体調を維持して行こうと思います。
 今後ともよろしくお願いいたします。

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選後鑑賞令和3年「橡」7月号より

2021-06-28 11:39:02 | 俳句とエッセイ
選後鑑賞      亜紀子

逃げ水の先や風車の巨人立つ 佐野愛子

 夢かうつつか、揺らめく水の蜃気楼。追えども追えども行き着かぬその先を詠もうとする句は数あるが、進撃の巨人ならぬ風車の巨人に行き当たったという掲句が面白い。初めて白い大風車を目の当たりにした時の感慨が思い起こされた。はっと覚醒させられる大きさなのだ。しかし逃げ水の影から一旦は現実に戻ったものの、巨人という措辞の風車の佇まいもまたうつつか夢かの感。晩春の光の魔法にかけられたか。

結葉や小さき駅舎に風の客 小谷真理子

 無人駅かもしれない。乗降客は作者ひとり。既に花の時期もとうに過ぎた桜の木でもありそうな。その緑の葉がそよと揺らいだ瞬間、人の気配を感じたのか。風の客が詩的。

梅咲いて臨時停車の百草園 太田順子

 東京日野市、京王電鉄の百草園駅。江戸に遡る歴史を持つ庭園「百草園」の最寄り駅。園では四季折々の花を楽しむことができる。何より梅の名所。梅まつりの期間は特急列車等も臨時停車。私が学生の頃には確かに停車していた。今は通り過ぎてしまうようだ。土地勘のない読者も、掲句に梅まつりの情緒を十分に味わい理解されることと思う。

コロナ禍の手洗ひ習ふ入園児 髙野悦子

 外から帰ったらうがい、手洗いと子供の頃から教えられた。けれどそうそう厳しくは言われなかった。パンデミックの現在、入園と同時に何より先に重要視されるのが衛生の教育なのだろう。家に戻って、幼声で今日教えられたところを大人に諭しているのかもしれない。

真つ白に万の籾の芽勢揃ひ 大澤文子

 十分に水を吸った種籾がいよいよ発芽。一斉に。苗箱に生え揃った緑の稲苗は見たことがあるが、真っ白というのは発芽の初めのはじめの状態か。命の力。美しいことと想像する。農に携わる人の喜び。

見覚えのこの木の先や蕨狩 森谷留美子

 昨年の山菜採りで一大収穫のあった所。その折の目印になった木。山に遊ぶ人たちにはこうした独特の地図があるのだろう。見覚えのの措辞が巧み。

朝風や父の掲ぐる鯉幟   澤玲子

 一家にとって男の子の誕生は特別ということが五月の句会の折に話題になった。地方ではこれ見よがしに他人より高く立派な幟を立てるそうな。掲句はそういうことではなく、心地よい朝風に泳ぐ鯉幟に託して父となった人の素直な喜びを詠っているようだ。あるいは兄弟の為に上がる幟を見ていた作者の懐かしい記憶であろうか。

緑さす白馬はいづこ御射鹿池 髙田くにゑ

 長野県茅野市にある御射鹿池(みしゃかいけ)は落葉松林に囲まれた静謐な佇まい。池というのは農業用に作られた溜池であるから。東山魁夷の名作『緑響く』のモデル。掲句の白馬は魁夷の作品中の白馬。落葉松林の新緑の美しさひとしお。

青麦の風渡る野に新車輌  坂本庸子

 麦畑を走るのは地方の第三セクターの鉄道だろう。人口減につれ、いずれも経営は厳しい中、掲句のように新車輌を走らせてくれるのは嬉しい。麦の青穂のなびく風が快い。地元の人々から愛され、また全国にも根強いファンが居るのかもしれない。




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