橡の木の下で

俳句と共に

「しろやなぎ」橡会報 平成26年1月号

2013-12-28 09:54:56 | 俳句とエッセイ

   しろやなぎ      亜紀子

 

 俳句仲間には自然の動植物にたいへん詳しい人がいる。一緒に歩けばひとりで歩く時の何倍もの楽しさがある。鳥博士と行動をともにすると目についた鳥の名を即座に教えてもらえるばかりでなく、物陰にかすかに動く影や一声過った鳴き声の主まで知ることができる。植物の専門家と一緒なら足許の小さな花や見上げる樹木のその名前のみでなく性質や仲間、あるいは似て非なるものとの識別方法なども伝授してもらう。しかし白状すると生き字引を頼るばかりでいつまでたっても自分の身につかない。何遍でも同じ質問を繰り返していささか恥ずかしい次第である。

 知りたいと思うのは何故だろう。名前を五七五に詠み込みたいということもあるし、正確を期するためにその詳細な知識が必要なこともある。けれども根底はただその草木や生き物に惹かれるからである。好きになったものについて知りたくなるのが人情である。

水漬きつつ新樹の楊ましろなり    秋桜子

 この木の実物を見ても名前が分らず帰宅して調べると「シロヤナギ」らしい。一緒に吟行した吉田道子さんはさらに詳しく調べられて楊は各地で相当数の雑種があると教えてくれる。楊、柳の字を区別して詠まれていたそうだがその根拠も曖昧になったとのこと。完璧に科学的に正確を期して句を詠むことは難しい。しかしいい加減に詠まれたのでは味わうことができない。読者をしてこれは一体何だろう、調べてみようと思わせるような句を作りたい。