橡の木の下で

俳句と共に

第32回「橡の芽投句欄」選後鑑賞

2023-09-27 08:25:47 | 小・中学生の俳句募集
橡の芽投句欄 第32回
            選 亜紀子


一席
     岐阜 中三 小田憩
サーブ打つ瞬間止まるせみの声

 テニスの試合でしょうか。真夏のコート。サービスエースをねらう。一瞬の緊張、集中、ひしひしと伝わります。

二席
     四日市 中一 榊史帆
蝉の羽化ハラハラ見守る三時間

 夜明けのドラマ。三時間もはらはらと見つめるのはけっこう疲れます。羽化無事成功。

三席
     岐阜 中二 桐山倫実
体育後みんな下じきあおぎだす

 よくわかる光景。下じきがはからずもうちわや扇子といった夏の季語になりました。

秀逸

     久留米 小四 大野みずき
へそ天をしながら子ねこ昼ね中

     岐阜 中三 木下瑛介
久々の友と楽しむ夏祭り

     岐阜 中三 飯田千夏
花火見て余韻にひたる午後十時

     吉岡 中三 山岸奈々色
公園に躑躅の小さな音楽隊

     東京 中一 吉藤心菜
太陽が照らす中での夏期講習

佳作

     吉岡 中二 高橋萌花
駐車場一つ寂しき菫かな

     大府 小五 杉山友啓
すいかわり流れてくるよ赤い汗

     岐阜 中三 山下華嘉
思い出の一つに日焼けを追加する

     岐阜 中三 伊藤芳花
夏祭り大きな一口りんごあめ

     岐阜 中二 古田輝来
雨宿り僕の隣にカエル来る

     岐阜 中二 竹川初花
夏の夕びっくりするほど明るいね

     岐阜 中二 日下部巧実
かき氷雪崩のように溶けていく

     岐阜 中二 大杉ひより
寝どこにも聞こえやすらぐ虫の声 

     東京 小二 吉藤涼真
ないていてそのしょうたいはセミなんだ

     市川 小四 御所園寧々
プールサイドとても暑くて足ぶみだ


*お知らせ*
 8年間お世話になりました「橡の芽投句欄」は今回で終了です。令和6年度より橡会報が「橡」に編入されるところとなり、ページ数の関係から当欄は継続中止となりました。長きにわたるご参加ありがとうございます。若い皆さまの言葉と心を学びました。楽しい勉強でした。

皆さまお元気で、またいつか一緒に勉強させていただける日が来ますように。



「休暇果つ」令和5年「橡」10月号より

2023-09-27 08:21:02 | 俳句とエッセイ
休暇果つ   亜紀子

隠れ耶蘇通ひし小径葛の花
電車来るたびに芒も手を振つて
法師蟬急いてつまづき暑は去らず
この径がいーよいーよと法師蟬
百日紅風よりかろく散りつげる
大虹を皆ふり返る家路かな
月を観る会とて集ふオンライン
暑をかこつ地上は知らぬ月の色
テレビ消して了る原爆慰霊式
我が影の貧しく歩む西日中
八月の日に片灼くる殉職碑
新涼や家計簿閉ぢて今日果つる
九月来る初めは雲と空の色
唐黍や安き長旅若き日々
休暇果つ空にぽつかり穴あいて