橡の木の下で

俳句と共に

「飯田線」令和元年『橡』10月号より

2019-09-26 18:01:28 | 俳句とエッセイ

  飯田線    亜紀子

 

来ては去る蜂の極秘の巣のいづこ

響きをり朝の熊蟬太鼓腹

涼やかやめうがの花のうすごろも

蚊の退治ひと日とんぼが来て呉るる

夕空に季のうつろひ広島忌

飯田線臭木の花の見頃なる

秘境線いよよ緑の山かひへ

涼風に蝶吹かれとぶ無人駅

顔上げて汽車に手を振る水遊び

峡の家の人住む気配星祭

この暑さ平気平左の蝶とんぼ

藻畳に時の死したる昼下り

かはほりも感に堪へたる大夕焼

省みずまたも八月十五日

反省お猿のやうに終戦日

なぜ縋る葉月だだ漏れ核の傘