つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

入江波光

2024年05月14日 | 入江波光
入江波光の作品もこのブログでまず皆様に画像だけご紹介させていただきました。小品ながら、波光らしいピリッとした作品です。


どこをどう切り取ってもとても美しい。


「磯の魚」というタイトルで波光は幾つか作品を制作しているようですが、この作品は大変写実的で、魚の生々しい触感まで表現されているように感じられます。

磯の魚といえば波光はいつもキスを描いていますので、こちらもキスだと最初から思い込んでいますが、いまふと余りにも写実的なので「?キスだよねぇ」と怪しくなりました。皆様のご意見もお聞かせいただけたらと思います。


波光は各年代細かく落款を変化させますが、こちらの印からも1935年昭和10年頃の作家50歳、よく川エビや鯰を描いていたころの作品だろうと考えています。


当店の「かにときす」の印はそれより10年ほど後によく使われていたようなので、「磯の魚」よりのちの作品ということになります。

入江波光は最良の友人であった村上華岳を喪ってから法隆寺金堂の壁画模写に参加しその晩年のすべてをこの仕事に打ち込みました。

「わたしは村上君を尊敬している。かれの端倪タンゲイすべからざる創造力(計り知れない創造力)、表現力は天与の才であって、わたしのような理詰めの人間とは正反対の作家である。若いころから、わたしは村上君にどれだけのことを教えてもらっているかわからない。山の頂だけでなく、谷間へも連れていってくれたのは、いつも彼であった」

入江波光は生きる姿勢そのものが作品となる画家であったと思います。波光自身もそのことがよくわかっていたのだとも思います。だからこそ、華岳を「山の頂だけでなく、谷間にも連れていってくれた」と評することができたのでしょう。

一見、入江波光という画家のほうが、その慎ましい生活態度から神々しいと思われがちですが、華岳の才能を知っている彼は、生活態度を律することによって制作には自分を殺していまわないよう、自由でありたいと願っていたのだと思います。華岳には才能では及ばないけれど、そうしてコツコツと自分の道を歩みながら、少しづつ少しづつ華岳とは別の、けれどその高さは決して華岳に劣らない画境に至れたのではないでしょうか。

当店の作品も含め波光作品は4点もありますが、今回はこの作品を中心に展示させていただこうと思っています。



入江波光 「磯の魚」
絹本 共箱 36.5×42.5㎝  ◇




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