あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

「 政治的非常時變勃發に処する對策要綱 」

2016年12月08日 15時57分26秒 | 尾鰭

 片倉衷
「 二 ・二六事件の時の戒嚴令は、私が中心になって作った對策要綱が原案になって居るんです 」
・・・片倉衷 ( 戦後、NHKの中田整一にそう語る )

豫測される皇道派による軍事クーデター勃發に際し、その鎭壓過程を逆手にとり、
自分達の側が依り鞏力な政治權力を確立するための好機として利用しようという、
カウンター・クーデター の構想 をまとめたもので、昭和九年に片倉衷等が作っていたもの。
「 政治的非常時變勃發に処する對策要綱 」
序文
帝國内外の情勢に鑑み・・・國内諸般の動向は政治的非常事變勃發の虞 おそれ 少なしとせず。
事變勃發せんか、究極軍部は革新の原動力となりて時局収拾の重責を負うに至るべきは必然の歸趨 きすう にして、
此場合 政府 竝 國民を指導鞭撻し禍を轉じて福となすは緊契 まま の事たるのみならず、
革新の結果は克く國力を充實し國策遂行を容易ならしめ來るべき對外危機を克服し得るに至るものとす。
即ち 爰 ここ に軍人關与の政治的非常事變勃發に對する對策要綱を考究し、萬一に処するの準備に遺憾なからしむる。
「 對策要綱 」 の實施案
(一) 事變勃發するや直ちに左の処置を講ず

イ、後継内閣組閣に必要なる空氣の醸成
口、事變と共に革新斷行要望の輿論惹起竝盡忠の志より資本逃避防止に關する輿論作成
ハ、軍隊の事變に關係なき旨の声明
但社會の腐敗老朽が事變勃發に至らしめたるを明にし一部軍人の關与せるを遺憾とす
(二) 戒嚴宣告 ( 治安用兵 ) の場合には軍部は所要の布告を發す
(三) 後継内閣組閣せらるゝや左の処置を講ず
イ、新聞、ラジオを通じ政府の施政要綱竝總理論告等の普及
ロ、企業家勞働者の自制を促し恐慌防止、産業の停頓防遏、交通保全等に資する言論等に指導
ハ、必要なる斷壓
( 檢閲、新聞電報通信取締、流言輩語防止其他保安に關する事項 )
(四) 内閣直属の情報機關を設定し輿論指導取締りを適切ならしむ
・・・片倉衷・『 片倉参謀の証言 叛乱と鎮圧 』
この 「 要綱 」 は、國内において軍人による事變が勃發することを豫見しつつ、
併せて、國力充實のため、國家體制の革新が求められているとの基本認識 に立って、
こうした事變勃發を逆に利用して軍部自らは直接手を汚すことなく、
しかも結果的に 『 革新の原動力 』 たらんとする意思を明確に打ち出したもの。
それは、皇道派靑年將校らの國家改造案とは異なり、
緻密な計畫性と戰略をもった、統制派の省部幕僚たちによる反クーデター計畫案であった。

統制派幕僚たちは、いつクーデターが起こっても素早く對應できるよう、既に萬全の體制を整えていた。

「 二 ・二六事件の勃發についても、それは第一師團の満洲移駐が決定的な引き金になるだろうと豫測し、
2月22,23日には、憲兵より事件勃發の警告を得ていた 」・・・片倉衷


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