徴兵制ノ維持。
國家ハ國際間ニ於ケル國家ノ生存及ビ發達ノ權利トシテ現時ノ徴兵制ヲ永久ニ亙わたリテ維持ス。
徴兵猶餘一年志願等ハ之ヲ廢止ス。
現役兵ニ對シテ國家ハ俸給ヲ給附ス。
兵営又ハ軍艦内ニ於テハ階級的表章以外ノ物質的生活ノ階級ヲ廢止ス。
現在オヨビ将來ノ領土内ニ於ケル異民族ニ對シテハ義勇兵制ヲ採用スル者アルベシ。
註一。
支那ニ於テ傭兵ト云フ物英米ニ於テ義勇兵ト名附ク。
則チ雇傭契約ニヨル兵士ナリ。
是レ彼等ノ國民精神ニ適合スル制度ナリ。
米國ノ建國ガ社會契約説ヲ理想トシテ植民セル者ノ契約綜合ナルハ前説ノ如シ。
英國又實ニ其ノ謬説ノ誕生地ナルヲ以テ、今尚 「 ジヨンブル、ソサイテー 」 ト名クル如ク
英帝國其者ヲ組合視シ 會社視シテ悉ク社會契約説ニ基ク立法ナラザルナシ。
從テ其ノ國防ニ於テモ組合ト組合員トノ間ニ雇傭契約ヲ締結スルハ、
米ノ建國トシテ 又英ノ國家組織トシテ少シモ不可ナシ。
而モ此ノ故ヲ以テ 「 ヴエルサイユ 」 會議ニ於テ英米ガ傭兵制度ヲ日本ニ鞏ヒタルハ 何タル迷妄ゾ。
日本ハ建國精神ヨリ、又現代國民思想ノ凡テニ於テ、日本帝國ヲ契約ニヨリテ組織シタル者ト一考セシコトモナシ。
日本國民ノ國家観ハ國家ハ有機的不可分ナル一大家族ナリト云フ近代ノ社會有機體説ヲ、
深遠博大ナル哲學的思想ト宗教的信仰トニヨリ發現セシメタル古來一貫ノ信念ナリ。
徴兵制度ノ形式ハ獨佛ニ學ビタルモ、徴兵制度ノ精神タル國民皆兵ノ義務ハ、
中世封建ノ期間ヲ除キテ、上世建國時代ニ發源シ 更ニ現代ニ復興シテ漲溢シツツアル國民的大信念ナリ。
日本ノ講話委員ハ何ガ故ニ英米ト日本トガ國民精神ノ根本、國家組織ノ信念ヨリ異ニスル所以ヲ指摘シテ、
日本國民本有ノ國家有機體的信仰ヲ彼等ニ訓ユルコトナカリシカ。
徴兵制其者ガ直ニ所謂軍國主義ニ非ザル事ハ、徴兵制ナリシガ故ニ辛ウジテ獨逸ヲ防止スルヲ得タル佛蘭西ガ、
會議ノ人々ヨリ軍國主義ナリシトシテ攻撃セラレザリシガ如シ。
日本ノ講話委員ハ何ガ故ニ、「 カイゼリスム 」 ト日本ノ國家有機體的信仰ヨリ結果セル
国民皆兵主義トヲ混同シテ臨ミシ無智ノ昏迷者ニ學バシムル所ナカリシカ。
軍國主義ナルカ否カハ傭兵トニヨリテ決セラルル者ニアラズ。
軍備ニ依頼シテ弱國ヲ併呑シ以テ私慾ヲ恣ニセントスル意味ノ者ガ軍國主義ナラバ
嘗テ陸上ニ於テ獨逸ガ然リシ如ク、海上ニ於テ英國ノナシツツアル者ハ實ニ遺憾ナク完成シタル海上軍國主義ナリ。
此ノ軍國主義ガ、單ニ自己ガ問題外ナル傭兵制ナリト云フノ理由ヲ以テ、
他ノ徴兵ニヨリテ斯ル軍國主義ガ者ノ侵害ヲ防衛セントスル者ニ己ノ冠ヲ冠セントセシハ惡ムベシ。
彼ノ愚昧ナル善人ガ斯ル惡魔ノ喇叭卒ニ使役セラレテ
其レヲ日本ニ向ツテ吹キシコトハ米國史上空前ノ恥辱ナリトス。
註二。
從テ傭兵ト徴兵トノ鞏弱ヲ論ズルコトハ無用ナル詮議ナリ。
英米ノ國情ニ於テハ必ズシモ鞏兵ヲ意味セズシテ、
日本ノ建國ト信念トニ於テハ傭兵ハ必ズ弱兵ナルハ論ナシ。
是レ徴兵制ヲ明確ニ永久ノ制度ナリトセル所以ナリ。
只獨逸ガ最後ニ破レタルガ故ニ徴兵制ノ価値ヲ疑フハ非常ナル妄断ナルコトヲ注意ス。
一人ト五人ト力角シテ己ニ三人ヲ倒シタル者ガ他ノ二人ヨリ足ヲ奪ハレタルヲ見テ
其ノ人ヲ弱者ナリト云フ能ハズ。
特ニ獨逸ノ實戰シタル軍隊ハ徴兵制ノ佛蘭西ト露西亜ニシテ、
甲ノ徴兵國ガ乙ノ徴兵國ニ破レタリト云ヒ得ベシ。
今次ノ大戰ニ於ケル英米ハ只海上封鎖ニヨリテ食料ト軍需品トヲ遮斷シタル任務ニ働キシ者。
英米ノ傭兵ト獨逸ノ徴兵トノ優劣ハ實戰ニヨリテ立証セラレタルモノニ非ズ。
只退却將軍ノ報告文トシテ古今獨歩ノ文豪 「 ヘーグ 」 元帥ニヨリテ英國傭兵ノ光榮ハ
十分ニ認知セラレタルハ周知ノ如シ。
註三。
或ル理想又ハ或ル信仰ニ基キテ徴兵ヲ拒否セントスル者ノ欧米ニ多キヲ以テ、
日本ガ國家ノ權利トシテ主張スルヲ非議スル者アラン。
而シナガラ政治ノ自由經濟ノ自由戀愛ノ自由ガ他ノ社會的生活ヲ犯サザル自由ノ意味ニ於テ、
思想ノ自由信仰ノ自由亦絶對的ノ者ニ非ルハ論ナシ。
自由ノ誤解セル解釋ヨリ來ル思想ノ自由信仰ノ自由ハ、
自由戀愛説ノ註ニ説明シタル所ヲ移シテ直ニ説明トスルヲ説クベシ。
思想又ハ信仰ノ点ヲ考フルトキ、
實ニ価値ナキ又ハ有害ナル者ヲ神ノ如ク裁決シ得ルノ大処ニ立ツヲ要ス。
印度人ガ生殖器ノ形像タル 「 リンガム 」 ヲ頸ニ掛ケ寡婦ガ自ラ薪ヲ抱テ夫ニ殉死スルコトヲ天國ニ行ク道ナリト信仰ストモ、
西蔵人蒙古人ガ諸神ト動物トノ生殖行爲ノ彫像圖画ヲ礼拝シテ極楽行ヲ信仰ストモ、
基督教徒中ノ旧教一派ガ一度結婚シタル者ハ離別ハ地獄ノ火ニ焼カルト信仰ストモ、
是等ノ信仰ガ信仰ナルガ故ニ自由ナリト認ムル能ハザルコトハ、
戀愛ナルガ故ニ自由ナリト認ムル能ハザルト同ジ意味ト程度ニ於テ然リ、
思想信仰ノ価値ハ其ノ民族精神又ハ世界思想ニ戰ヒテ凱歌ヲ擧ゲタル時ニ認メラルル者ナリ。
戰ノ中途ニ於テ又ハ退却或ハ降伏ノ狀態ニ於テ信仰ノ自由ヲ鳴合スル如キ信仰ハ、
終ニ十字架上 「 我レ勝テリ 」 トシテ國家ト世界ノ上ニ其自由ヲ建設スル価値ナキ者ナリ。
彼ノ兵役忌避ヲ本旨トスル 「 キエーカー」 宗ノ如キハ、小乗教ノ基督ニ於テスラ天國ノ戰ヲ指シ、
地上ニ於テ尚我レ刃ヲ出サンガ爲ニ來レリト宣シテ終ニ羅馬ヲ天火ニ亡シタル一面ヲ有スルニ係ラズ、
只其ノ殺ス勿レノ一項ヲ盾トシテ盲守スルニ過ギザル者。
同ジキ一神教ニ於テ 「 マホメツト 」 ハ刃ヲ出サンガ爲メニ來レルヲ明言シテ 「 殺スベシ 」 ト教フルニ非ズヤ。
「 コーラン」 ト共ニ劍ヲ示シテ殺スベシト云フ信仰ト殺ス勿レト云フ信仰トヲ兩立セシムルニ、
Liberty ナル 「 アルアゥベット 」 七個ニ依頼セントスルガ如キ浅薄ナル信念ニテ何ノ信仰ゾ。
「 クエーカー」 宗ノ価値ハ天理教ヨリ遙カニ以下ニシテ 「 リンガム 」 礼拝ヨリ 聊カ以上ナル程度ノ者ナリ。
彼等ノ信仰ガ鞏固ニシテ犠牲ヲ甘ンズル事例ヲ擧ゲテ對抗スルナラバ
宗教ノ低級ナル者ニ於テ斯ル例ノ他ニ無數ナル者ヲ擧ゲ可ク、
更ニ斯ク頑迷移サザル者多キガ故ニ殺スベシト云フ回教ノ信仰ニヨリテ答ヘザルベカラズ。
神ハ全智ニシテ全能ナルガ故ニ、古ヘ 「 ノア 」 ノ洪水ヲ以テ大殺戮ヲナシ、
現時又六月二十八日ニ始マリテ六月二十八日ニ終レル五年間ノ屍山血河アリ。
神ヲ信ジテ而モ殺スコトヲ否ム 「 クエーカー」 宗徒ハ、神ノ能力ト智見ガ此ノ殺戮ヲ防グ
能ハザリシ完キ者ニ非ズト云フ信仰根本ノ矛盾ニ立ツ者。
基督其人スラ彼レノ弟子等ニ向ヒテ明カニ 「 我ガ神 」 「 汝ノ神 」 トシテ神其者ニ自他彼此大小高級ヲ差別しタリ。
日本國民ノ神ハ 「 クエーカー」 教徒ノ神ニ對シテ弥陀ノ利劍ヲ揮ツベキノミ。
生死ノ煩悶ヲ天空ニ求ムル如キ低級極マル小乗的信仰ヲ以テ將、
印度文明ノ密封セラレタル宝庫トシテ漸ク將ニ二十世紀ノ今日ヲ待チテ開カレントスル
日本民族ノ大乗的信仰ニ對セントスル如キハ、眞ニ竜車ニ向フ蟷螂ノ斧。
信仰既に然リ。況ヤ學者文士輩ノ口耳ヨリ濫造セラレタル思想ナル者ノ自由ヲヤ。
將來 「クエーカー」 宗ノ如キ又浅薄ナル非戰主義ノ如キヲ輸入シテ徴兵忌避ヲ企ツル者アラバ、
刑罰ハ斷々トシテ其ノ最モ重キ者ヲ課シテ可ナリ。
註四。
徴兵猶予一年志願兵等ハ現時ノ教育的差等ヨリ結果セル者ナルヲ以テ、
十年一貫ノ國民教育ニヨリテ此等ヲ存置スル善悪一切ノ理由ハ消失スベシ。
特ニ其ノ兵質ガ、前註説明ノ如ク今ノ少尉級ニ匹敵スベキヲ以テ自ラ現役年限ノ短縮トナルベク、
一年又ハ一年半ノ軍隊的軍艦的訓練ハ如何ナル専門的使命アル者モ
體心ノ根源ヲ培養シテ其ノ使命ノ大成ヲ準備セシムル者ナリ。
今ノ徴兵猶餘ハ速成學士ノ 「 ローズ 」 物ヲ官廳會社ニ賈出サントスル現經濟組織ヨリ來レル者。
特ニ彼等ノ殆ド凡テハ今ノ大學教育ナル高等職業紹介所ニ入ルコトヲ以テ一種ノ特權階級ノ如ク考ヘ、
心裏實ニ徴兵忌避ノ私ヲ包蔵シテ其ノ猶餘ヲ求ムル者ナラザルハナシ。
此ノ一点ヲ寛過スルハ實ニ國家ノ大綱ヲ紊ル者。
他ニ百利アリト仮想スルモ存置セシムベキ除外例ニ非ズ。
註五。
現役兵ニ俸給ヲ給附スベキハ國家ノ當然ナル義務ナリ。
俸給ガ傭兵ノ其レト全ク別個ノ義ナルハ論ナシ。
國民ノ義務ニセヨ、父母妻子ノ負担アル男子ヨリ其ノ勞働ヲ奪ヒテ何等ノ賠償ヲナサザルコトハ
國家ノ權利ヲ濫用スル者ナリ。
此ノ權利濫用ノ下ニ血涙ヲ呑ミシ爆発ハ眼前ニ見ル露西亜ノ勞兵會ノ蹶起ナリ。
軍隊ノ鞏盛ヲ念トスル軍事當局スラ此ノ鞏兵ヲナス根源ヲ提唱スル者無ク、
凡テノ國民ハ國民ノ義務ナル道念ニ忍ビテ一ニ只忘却ニ封ジツツアルトキ、
兵卒其者ガ憤恨ニ爆発スルノ日ハ則チ勞働者ト結合シタル勞兵會ノ出現ナラザルベカラズ。
「 ボルセヴイキ 」 ハ此ヲ防グベク、「 ボルセヴイキ 」 ヲ必然スル義務ノ忘却ハ可ナリト云フノ理ナシ。
或ハ國庫ノ負担堪ヘザルヲ云ハン。
然ラバ多大ナル俸給ニヨル傭兵ヲ以テ戰ヒシ英米ヲ見ヨ。
生産各省ノ収入優ニ餘リアリ。
註六。
兵營又ハ軍艦内ニ於ケル將校ト兵卒トノ物質的生活ヲ平等ニスル所以ハ自明ノ理ナリ。
古來將ハ卒伍ノ飲食ニ後レテ飲食スト云フガ如ク、
口腹ノ慾ニ過ぎザル飲食ニ差等ヲ設ケテ部下ノ反感ヲ平時ニ養成シ
戰時ニモ改メザル如キハ殆ド軍隊組織ノ大精神ヲ知ラザル者ナリ。
敗戰國又ハ亡國ノ將校ガ常ニ兵卒ノ粗食飢餓ヲ冷視シテ己レ獨リ美酒佳肴ヲ列ベシハ一ノ例外ナキ史實ナリ。
之ニ反シテ皇帝ニ堕落セザル以前ノ奈翁軍ノ聯勝セシ精神的原因ハ、
彼ノ無慾ト其ノ無質的生活ガ兵卒ト大差ナカリシ平等ノ理解ニ立チシガ故ナリ。
日本ノ最モ近キ將來ハ奈翁ナポレオンノ軍隊ヲ必要トス。
乃木將軍ガ軍事服ヨリ見テ許ス可カラザル大錯誤ヲナシテ彼ノ大犠牲ヲ來タセシニ係ラズ、
彼ガ旅順包囲軍ヨリ貫通サレン理由ノ一ハ己レ自ヲ兵卒ト同ジキ弁当ヲ食セシ平等ノ義務ヲ履行セシガ故ナリ。
士卒ヲ殺シテ士卒ニ赦サルル將軍ハ日本ノ最モ近キ將來ニ於テ千百人ト雖モ足レリトセザル必要アリ。
マサカニ兵卒ト同ジキ飲食ニテハ戰争ニ堪ヘズト云フ者アルマジ。
是レ其ノ飲食ヲナス兵卒ガ戰爭スル能ハズト云フモノ。
斯ル唾棄スベキ思ナリ。
勞兵會ヲ作ラシムベキ内應者ナリト云フベシ。
但シ家庭等ノ隊外生活ニ於テ物質的差別アルベキハ、
兵卒ガ等シク其ノ範位ニ於テ貧富ニ應ジタル自由アルガ如シ。
開戰ノ積極的權利。
國家ハ自己防衛ノ外に不義ノ鞏力ニ抑壓サルル他ノ國家
又ハ民族ノ爲メニ戰爭ヲ開始スルノ權利ヲ有ス。
( 即チ當面ノ現實問題トシテ印度ノ獨立及ビ支那ノ保全ノ爲メニ開戰スル如キハ國家ノ權利ナリ )。
國家ハ又國家自身ノ發達ノ結果 他ニ不法ノ大領土ヲ獨占シテ
人類共存ノ天道ヲ無視スル者ニ對シテ戰爭ヲ開始スルノ權利ヲ有ス。
( 即チ當面ノ現實問題トシテ豪州又ハ極東西比利亜ヲ取得センガタメニ
其ノ領有者ニ向テ開戰スル如キハ國家ノ權利ナリ )。
註一。
近代ニ至テ世界列鞏ガ戰爭ヲ開始セントスルトキ悉ク自他ヲ欺ク旧道徳的名分ヲ掲ゲ、
又ハ之ヲ自己防衛ノ口實ニ求ムルハ國家生活ノ權利ヲ半解スルヨリ來ル卑怯ナリ。
眞ノ徹底的理解ハ自ラニシテ正々堂々タル宣布トナル者。
日本ガ積極的發展ノ爲メニ戰フコトノ單ナル我利私慾ニ非ザルコトハ、
他ノ民族ガ積極的覺醒ノ爲メニ占有者又ハ侵略者ヲ排除セントスル
現狀打破ノ自己的行動ガ正義視セラルル如ク正義ナリ。
自利ガ罪惡ニ非ザルコトハ自滅ガ道徳ニ非ザルト同ジ。
從テ利己其者ハ不義ニ非ズシテ他ノ正當ナル利己ヲ侵害シテ己ヲ利セントスルニ至テ正義ヲ逸ス。
正義トハ現在ノ狀態其者ニ非ザルハ論ナシ。
英國ガ印度ヲ牛馬視シテ己ヲ利シツツアル現狀ガ正義ニ非ザル如ク、
日本及ビ近接ノ亜細亜七億ノ民族ヨリ濠洲ヲ封鎖シツツアル現狀ハ同一ナル不義ナリ。
支那ヲ併呑シ朝鮮ヲ領有セントシタル 「 ツアール 」 ノ利己ガ當時ノ狀態ニ於テ不義ナリシ如ク、
広漠不毛ノ西比利亜ヲ獨占シテ他ノ利己ヲ無視セントスルナラバ 「 レニン 」 政府現在ノ狀態亦正義ニ非ズ。
正義トハ利己ト利己トノ間ヲ劃定セントスル者。
國家内ノ階級爭闘ガ此ノ劃定線ノ正義ニ反シタルガ爲メニ爭ハルル如ク、
國際間ノ開戰ガ正義ナル場合ハ現狀ノ不義ナル劃定線ヲ変改シテ正義ニ劃定セントスル時ナリ。
英國ハ全世界ニ誇ル大富豪ニシテ露國ハ地球北半ノ大地主ナリ。
散栗ノ島嶼ヲ劃定線トシテ國際間ニ於ケル無産者ノ地位ニアル日本ハ、
正義ノ名ニ於テ彼等ノ獨占ヨリ奪取スル開戰ノ權利ナキカ。
國内ニ於ル無産階級ノ闘爭ヲ認容シツツ獨リ國際的無産ノ戰爭ヲ
侵略主義ナリ軍國主義ナリト考フル欧米社會主義者ハ根本思想ノ自己矛盾ナリ。
「 ヒユーズ 」 ガ勞働者出身ナリトモ、「 レニン 」 ガ社會主義者ノ尊敬スベキ同志ナリトモ、
国際的對立ヨリ見テ彼等ガ大地主タルコトハ、昔時魚賈タリシ大倉喜八、
貧書生タリシ加藤高明ガ無産階級ヨリ見テ富豪タルト同ジ。
國内ノ無産階級ガ組織的結合ヲナシテ力ノ解決ヲ準備シ
又ハ流血ニ訴ヘテ不正義ナル現狀ヲ打破スルコトガ彼等ニ主張セラルルナラバ、
國際的無産者タル日本ガ力ノ組織的結合タル陸海軍ヲ充實シ、
更ニ戰爭開始ニ訴ヘテ國際的劃定線ノ不正義ヲ匡スコト亦無条件ニ是認セラルベシ。
若シ是レガ侵略主義軍國主義ナラバ日本ハ全世界無産階級ノ歓呼声裡ニ黄金ノ冠トシテ之ヲ頭上ニ加フベシ。
合理化セラレタル民主社會主義其者ノ名ニ於テモ日本ハ濠洲ト極東西比利亜トヲ要求ス。
如何ナル豊作ヲ以テストモ日本ハ數年ノ後ニ於テ食フベキ土地ヲ有セズ。
國内ノ分配ヨリモ國際間ノ分配ヲ決セザレバ日本ノ社會問題ハ永遠無窮ニ解決サレザルナリ。
只獨逸ノ社會主義ニ此ノ國際的理解ナク、
且ツ中世組織ノ 「 カイゼル 」 政府ニ支配セラレタルガ爲ニ、
英領分配ノ合理的要求ガ中世的組織ノ破滅ニ殉ジテ不義ノ名ヲ頒チタルコトヲ注意スベシ。
從テ今ノ軍閥ト財閥ノ日本ガ此ノ要求ヲ掲グルナラバ獨逸ノ轍ヲ踏ムベキハ天日ヲ指ス如シ。
改造セラレタル合理國家、革命的大帝國ガ國際的正義ヲ叫ブトキ之ニ對抗シ得ベキ一學説ナシ。
註二。
印度獨立問題ハ來ルベキ第二世界大戰ノ 「 サラエヴオ 」 ナ覺力援助トナリテ現ルベシ。
仮令英國ガ彼等ノ所謂自治ヲ許容シテ 「 ヂヨンブル、ソサイテー 」 ノ組合ヲ脱セシメザラント計ルトキモ、
彼ニシテ全然没交渉ナル獨立ヲ慾シテ蹶起スルナラバ固ヨリ然ルベキハ論ナシ。
大戰中ニ於ケル印度獨立運動ノ失敗ハ凡テ日本ガ日英同盟ノ忠義タリシガ爲メニシテ、
從テ英國ガ一時的全勝將軍タルガ爲ニ瞬時雌狀スルニ過ギズ。
而シテ日本ノ實力援助ニツキテ大方針トスベキハ海上ニ於テノミ彼ノ獨立ヲ援護スルコトナリ。
印度ノ獨立ハ尚米國ノ獨立ノ如し。
米國ノ十三洲獨立戰ハ其ノ始メ常ニ英兵ニ敗ラレツツ幾年ヲ經過シタル後、
最モ有力ナル實力援助ヲ与ヘタル佛蘭西海軍ガ英國海軍ヲ 「 メーン 」 岬ニ決定的ニ撃破シテ
陸兵輸送ヲ不可能ナラシメタルコトニ存ス。
外力ノ援助ナクシテ植民米人ガ戰フベキ武力ヲ有セザリシ如ク、
一切ノ武器ヲ奪ハレシ印度獨立軍ニ對シテ
恣ニ鎮圧軍ヲ輸送セシムルナラバ其ノ獨立ハ永久ニ期待スベカラザル者ナリ。
實ニ米國ノ獨立ヲ決定シタル者ガ佛蘭西海軍ナリシ如ク、
印度獨立ノ能否ヲ決定スル者ハ一ニ只英國海軍ヲ撃破シ得ベキ日本
及日本ノ同盟スベキ國家ノ海軍力如何ニ在リ。
日本ノ陸軍援助ハ多ク有用ナラズ。
却テ戰後ニ於ケル利權設定等ノ損因ヲ播キ、
印度其者ヨリハ何等ノ報謝ヲ求メザル天道宣布ノ本義ニ汚点ヲ印シ易キハ餘メ深ク戒ムベシ。
「 レニン 」 政府ノ尚存續シテ陸上ヨリノ援助ヲ仮想ストモ、決定的成否ハ己ニ海軍力ヲ喪失セル露國ニ非ズ。
日本ハ此ノ改造ニ基ク國家ノ大富力ヲ以テ海軍力ノ躍進的準備ヲ急グベシ。
日英兩國ハ中立的關係ニ立ツ能ハズシテ、
彼ノ從属的現狀ヲ維持スルカ 彼ノ分割ヲ結果スル征服者タルカノ二ナリ。
日本ガ永遠ニ政治的言語的思想的属邦トシテ印度ノ志士ヲ屠ラントセバ止ム。
國ヲ擧ゲテ道ニ殉ズル天道ノ使徒トシテ世界ニ臨マントセバ、
米國ノ海上軍國主義ヲ砕破スルニ足ルベキ軍國的組織ハ不可欠ナリ。
「 カイゼル 」 ハ海上ニアリ。
コレ佛蘭西ガ陸上ノ英國ニ對シテ軍國的組織ヲ放棄シ得ザリシ所以。
日本ニ加冠セラレタル軍國主義トハ印度獨立ノ 「 エホバ 」 ナリ。
此ノ萬軍ノ 「 エホバ 」 ヲ冒瀆シテ誣妄ヲ逞ウスル所謂平和主義ナル者ハ、
其ノ暴戻悪逆ヲ持續セントシテ 「 エホバ 」 ノ怒ヲ怖ルル惡魔ノ甘語ナリトス。
英人ヲ直譯スル輩ハ 「 レニン 」 ヲ宣傳スルヨリも百倍ノ有害ナリ。
註三。
支那ハ亦大戰ノ結果ニヨリテ急轉直下純然タル印度タラントス。
日本ガ印度ノ獨立ヲ慾スル如ク支那ノ保全ヲ希フナラバ、
眼前ニ迫レル支那ト英國トノ衝突ハ日英同盟ヲ存立セシメザル者ナリ。
英國ガ早ク己ニ支那ヲ財政的准保護國トセルコトハ説明ノ要ナシ。
仮令平家全滅ノ前ノ隆盛ノ如キニセヨ、英國ガ今次ノ大戰ニ於テ本國ヲ脅威せン獨逸ト、
印度ヲ脅威セシ露國トニ恐怖ナキニ至レルコトハ、
支那ニ於テ二國ガ亦同様ナル脅威ヲ満蒙ト青島ヨリ加ヘタル恐怖ヲ除去シタル者ナリ。
英國ハ日本ヲ外ニシテ支那ニ恐ルベキ實力ヲ見ズ。
而シテ日本ノ奴隷的臣從ハ大戰中ト講話會議トニ於テ彼ノ十分ニ安意シタル所。
則チ彼ハ西蔵獨立ノ交渉中ニ青海四川甘粛ノ一部ヲ包有スル要求ヲ加ヘ來レリ。
是レ日露戰爭ニヨリテ露西亜ガ南下ノ途ヲ日本ノ満洲ニ塞ガレタルガ故ニ、
直路中央亜細亜ヨリ中部支那ニ殺到セントセシ大道ノ繼承ヲ要求スル者。
印度ヲ其点トシテ己ニ阿富汗ニ及ビ波斯ニ及ビタル彼ガ中央亜細亜ニ進出スレハ論ナク、
極東海上ノ基点香港ト相應ジテ中部支那以南ノ割取ヲ考ヘ始メタルハ明白ナリ。
此レ往年露西亜ノ満洲ニ進出シタルヨリモ支那ノ一大危機。
而テ支那保全主義ヲ堅持スル日本ハ彼トノ衝突ニ於テ、
其ノ支那經略ノ根拠地香港ノ有害ナルコトハ、
日露戰爭ニ於ケル旅順浦塩斯徳ノ根拠地ニ優ルトモ劣ラズ。
彼ハ日本ノ口舌的抗議等ヲ眼中ニ置カズ天下無敵ノ全勝將軍トシテ支那ニ臨ムベシ。
是レ單ナル推定ニ非ズ。
事實ヲ以テ立証セレルルノ日ハ則チ日英両國ガ海上ニ見ユルノ日ナリ。
支那保全ニ於ケル日英開戰ハ己ニ論議時代ニ非ザルナリ。
註四。
日本ハ支那ニ於テ東洋ノ獨逸ヲ學バントスル野心國ナリト云フ世界ノ批評ニ對シテ
男子的ニ是認シ而テ男子的ニ反省シ改過スベシ。
周知ノ如ク英獨協商ハ香港ヲ根拠トセル英國ト青島ヲ根拠トセル獨逸トガ、
支那分割ノ阿弗利加大陸ノ如ク實現スベキコトヲ確信シテ、
北支那ヲ独逸ニ中央支那以南ヲ英國ニ妥協シタル者ナリ。
彼ノ津浦鐡道ガ南北ニ分割サレテ列車ヲ直通スル能ハズ。
南段ノ英資ニ對シテ北段ノ獨資ナルハ先ヅ投資的分割ニ現ハレタル者。
然ルニ今次ノ大戰中ニ於テ日本ハ獨逸ノ青島ヲ領有シテ支那ニ還附セザランコトヲ企ツルト共ニ、
獨逸ノ投資ヲ繼承シ更ニ北支那ニ投資的侵略ヲ學ビタルコト悉ク獨逸ノ跡ヲ追フ者ナラザルハナシ。
天道ハ甲國ノ罪惡ヲ罰トシテ乙國ノ同一ナル其レヲ助クル者ニ非ズ。
日本ガ東洋ノ獨逸ナリト云ハレ、獨逸ト等シキ軍國主義侵略主義ノ國ナリト云ハレ、
列國環視ノ間 「 ウヰルソン 」 輩ノ口舌ニ委縮シテ面上三斗ノ汗ヲ拭フノ耻晒シヲ爲セン者悉ク是レ天意。
敢テ軍閥内閣ト党閥内閣トニ差等ヲ附スルノ要ナシ。
明治大帝ナキ後ノ歴代内閣ノ爲ス所悉ク大帝降世ノ大因縁タル日露戰爭ノ精神ニ反逆セザル者ナシ。
一幸徳秋水ノミガ大逆罪ニ非ズ。
其ノ罪正ニ大帝ノ陵墓ヲ發クノ大逆政策ヲ改メズシテ支那ノ排日ヲ怒リ米國ノ排日ニ
憂ヘ尚且ツ茫々然トシテ天佑ヲ夢ム。
彼等ハ講和會議ニ於テ英國ノ保護ヲ蒙リテ獨逸ノ利權ヲ繼承スルコトヲ認容セラレタルトキ
相賀シテ 「 國難去レリ 」 ト去ヘリ。何ゾ然ラン。
英國ハ英獨協商ノ相手方ヲ日本ニ代ヘタルガ故ニ、
今ヤ該協商ノ目的タリシ中部支那以南ノ領有ヲ現實ナラシメントシテ
玆ニ青海四川甘粛ヲ包有セル西蔵獨立ノ要求トナリテ現レタレナリ。
早く己に揚子江流域は英國の勢力範囲なりと云はるる今日、
日本を相手方として英獨協商を日英協商として支那に臨む時、
明治大帝は何の爲めに日露大戰を戰ヒシカヲ解スベカラザラントス。
日本ハ 「 ヴエルサイユ 」 ニ救ハレタル同胞ノ誼ニヨリテ 英國ノ支那本部併合ニ報謝スベシト云フカ。
排日ノ聲ガ支那ト米國トニ一斉ニ擧レル所以ハ日露戰爭ニヨリテ保全サレタル支那ト、
日露戰爭ヲ有力ニ後援シテ日本ニ支那ヲ保全セシメタル米國トガ、
天ニ代リテ當年ノ保全者ニ脚下ノ陥穽ヲ警告スル者ナリ。
驕児 「 カイゼル 」 ハ世界的排斥ニ反省セズシテ陥穽ニ墜落シタリ。
米支両國ノ排日ニ省悟一番シテ日露戰爭ノ天道宣布ニ歸ル時、
日本ハ排日ノ實ニ天龍 限リナキヲ見ルベシ。
英國ノ恩恵ノ下ニ青島ニ租借地ヲ得ルヨリモ、英國其者ノ香港ヲ奪ヒテ日本ノ海軍根拠地トセヨ。
香港ニ根拠セバ青島ノ如キハ無用ノ長物ナリ。
山東苦力トシテ輸出セザルベカラザルホドニ人口漲溢セル支那ノ貧弱ナル一角ニ没頭スルヨリモ、
支那其ノ者ヨリ広大ニシテ豊饒ナル英國ノ濠洲ヲ併合セヨ。
日本ニ取リテ支那ハ只分割サレザレバ足ル。
四千年住ミ古シタル支那ヲ富源ナルカノ如ク垂涎スル小胆國民ニシテ、如何ゾ世界的大帝國ヲ築クヲ得ベキ。
日本ガ首ヲ擡ゲテ英領ヲ直視スル時、支那ノ排日ハ根本的ニ永久的ニ跡ヲ絶ツベシ。
註五。
此ノ支那保全主義ノ徹底ヨリ視ル時、日本ノ極東西比利亜領有ハ日本ノ積極的權利タルト同時ニ、
支那ヲ北方ヨリ脅威セル露西亜ノ伝統的國是ヲ打破スル者。
日本ガ東清鐡道ヲ取得シテ、極東西比利亜トヲ結合スル時、
内外蒙古ハ支那自ラノ力ヲ以テ露國ノ侵略ヲ防禦スルヲ得ベシ。
斯クシテ日本ハ北ニ大ナル円ヲ畫キテ支那ヲ保全シ、支那亦日本ノ前營タルベシ。
露西亜ノ外蒙古進出ニ押サレテ日本亦内蒙古ニ進出シテ防備ヲ試ミントスル軍閥ノ支那保全策ハ、
或ル程度ニ於テ支那ヲ保全シツツ 或ル程度ニ於テ支那ヲ分割スル者、
其ノ無策ト不徹底ト斷ジテ亜細亜聯盟ノ盟主タルベキ器ニ非ズ。
特ニ 「 セミヨノフ 」 輩ヲ用ヒテ内外蒙古ノ獨立ヲ策シツツアル如キハ誠ニ小策士陰険手段。
國家ノ有スル開戰ノ積極的權利ヲ心解セバ公々然日本及ビ支那ノ必要ヲ主張シテ
「 レニン 」 其人ニ向テ極東西比利亜ノ割譲ヲ要求スベシ。
「 チエツク、スローバツク 」 援助ノ口実ノ蔭ニ國家ノ當然ナル權利ヲ隠蔽スルガ故ニ
野心ヲ包蔵ストナシテ敵味方ノ警戒ヲ受クルナリ。
日本ノ對外行動ハ取ルベカラザル者ヨリ寸士ヲ得ザルト共ニ、
天日照覧ノ下旬モ奪フベクンバ全地球ヲモ大ナリトセザルベキ大丈夫ノ健脚ニ立ツベシ。
註六。
要スルニ日本ハ日本海朝鮮支那ノ確定的安全ノ爲メニ、則チ日露戰爭ノ結論ノ爲メニ、
極東西比利亜ヲ領有スベク露西亜ニ對スル大陸軍ヲ欠クベカラズ。
而テ印度獨立ノ援護、支那保全ノ確保、及ビ日本ノ南方領土ヲ取得スベキ運命ノ三大國是ニ於テ、
英國ト絶對的ニ兩立セザルガ故ニ實ニ大海軍ヲ急務トス。
若シ今次ノ大戰ニ際シテ大西郷アリ明治大帝アリシナラバ、
獨逸ノ陸軍ト東西呼應シテ一擧露國ヲ服從セシメ、
海軍亦東西ニ相分レテ英國艦隊ヲ本國と印度濠洲トニ防備ニ兩分セシメ
十分ナル優勢ヲ持シテ各々之レヲ撃破シ、朞年ナラズシテ早ク己ニ北露南濠ニ大帝國を築キタリシ筈。
獨逸ノ敗因實ニ其ノ始メニ於テ背後ニ迫レル露軍ノ爲メニ巴里占領ノ好機ヲ逸シ、
更ニ英國艦隊全部ヲ本國ニ集中セシメタルガ爲メニ一擧根本ヲ屠ル能ハザルノミナラズ、
却テ其ノ艦隊を 「 キール 」 軍港ニ封鎖セラレテ國内物質ノ空乏ヲ來シ僅カニ潜航艇戰ノ窮策ニ訴フルヤ、
又却テ米國ヲ脅威シテ之ヲ敵ニ駆リシニ基ク。
開戰當初ヨリ露ノ陸軍ト英ノ海軍トヲ兩分シ得ベキ日本一國ノ向背實ニ世界大戰ノ勝敗ヲ決シタルヲ見ルベシ。
日本ハ明カニ英獨ノ間ニ 「 キヤスチングヴオト 」 シテ其力ヲ以テ獨逸ヲ亡ボシ英國を活カセシ者。
然ルヲ擧國一致此ノ天龍ヲ逆用シテ却テ兩立スベカラザル敵國ノ犬馬ニ就キ、
救國ノ恩主 倒マニ其ノ脚下ニ俯伏シテ糞土ニ値セザル小群島ト一青島トヲ哀訴ス。
國政ヲ執ツテ國ヲ亡ボサントスル斯クノ如キ者ニ加フベキ大逆罪ノ法文ナキヲ如何セン。
註七。
只一大事因縁ヲ告グ。
「 ヴエルサイユ 」 ニ於ケル調印ハ獨逸ヲ目的トシテ聯合シタル列鞏ガ、
更ニ英國ヲ第二ノ獨逸トシテ新タナル聯合軍ヲ組織スベキ天与ノ一大轉機。
日本ハ英獨其ノ他ヲ糾合シテ世界大戰ノ眞個結論ヲ英國ニ對シテ求ムベシト云フコト是レナリ。
講和會議ハ印度洋ノ波濤ヲ 「 テーブル 」 トスベシ。
米國ノ恐怖タル日本移民。日本ノ脅威タル比利賓ノ米領。
對支投資ニ於ケル日米ノ紛爭。
一見兩立スベカラザルカノ如キ此等ガ、其實如何ニ日米兩國ヲ同盟的提携ニ導クベキ
天ノ計ラヒナルカノ如キ妙諦ハ今是レヲ云フノ 「 時 」 ニ非ズ。
一ニ只此ノ根本的改造後ニ出現スベキ偉器ニ待ツ者ナリ。
天皇ニ指揮セラレタル全日本國民ノ超法律的運動ヲ以テ
先ヅ今ノ政治的經済的特權階級ヲ切開シテ棄ツルヲ急トスル所以ノ者、
内憂ヲ痛ミ外患ニ悩マシムル凡テノ禍因只コノ一大腫物ニ發スルヲ以テナリ。
日本ハ今ヤ皆無カ全部カノ斷崖ニ立テリ。
國家改造ノ急迫ハ維新革命ニモ優レリ。
只天龍ハコノ切開手術ニ於テ日本ノ健康體ナルコトニ在リトス。
次頁 (13) 結言 に続く