相澤三郎中佐
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相澤中佐の片影
(三 ) 中佐最近の書信
九月二十七日 ( 宣子殿宛 )
随分雨が降り續きました。
折角の御彼岸も沈黙でしたらう。
然し皆元氣そうでうれしく思ひます。
おとーさんの所では運動も出來、御菓子や牡丹餅の甘いのを頂きまして、
雨は降つても有難い祭日でありました。
御蔭で至極元氣です。
今日より天気も續きませう。
皆愉快に學校に通ふことが目の前に見へている。
顧れば本年は大変雨が多かつた。
大部水害で困つて居る人も多かつたと思ふ。
此の冬は此度天氣が續いて乾燥し、殊に鷺の宮はほこりが立つだらう。
咽喉を痛めない様に今から注意することが必要です。
「 うがひ 」 もよいですよ。
黒川先生に和尚さんの薬を言ふてやりました。
仙台の屋敷のことは別に記憶が確かでないから鈴木氏と安藤氏とに私から出した手紙がありました。
問ひ合はして取りよせて相談されるのもよいと思ひますが、
若し問ひ合せても不明な時には松山の意見等を參酌して昨日おかあさんの御考への通りでよいと思ふ。
おかあさんにも、靜子ちゃんにも、正彦にも、道子ちゃんにもよろしく。
さようなら。
父より
宣子殿
學校はどーですか。
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