あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

中佐の片影・其三 『 日本の軍人は、否日本軍は是れだから強いのだぞ 』

2022年03月15日 13時55分51秒 | 相澤中佐の片影


相澤三郎中佐

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相澤中佐の片影
( 二 )  中佐の片影
其三  小田島皓橘 氏  ( 戰死者の兄 )

相澤中佐殿の件に就きて生等も甚だ吃驚罷在候。
如何なればああした直接行動に出でられ候や 判斷に苦しむものに御座候。
嘗つて弟戰死壯候節、
最初に秋田より 片道二時間余の行程を大吹雪を冒してお訪ね被下しは相澤中佐殿に候ひき。
物静かなる中にドッシリとした眞の武士とも申上ぐべき方と拝し候が、
果して後に新聞にて拝見仕るに武道の練達者との御事成程とうなづかれ申候。
相澤中佐殿と拙家何等の縁故も御座なく候に、
他の何人も未だ來らざる前、
大吹雪をついて二時間半の遠路をわざわざと
軍務御多望の折柄御來訪被下
し御芳志に感謝申上げ候に、
「 自分の時間が六時間近くありましたから 」
「 エライ方の御霊を拝し度くて 」 と御言葉僅かに申されて、
何んの御接待を致す暇もなく御出發被遊候。
後 小生 聯隊に御礼言上に參上せし時も
極く物静かにして礼を厚くして御迎へ被下、
 いたく恐縮仕候事御座候ひき。
其の後も一度、
弟の墓地新築せるを聞かせられ、又わざわざ墓參に御光來被下
武人の温情に小生等一同感激仕り、
郷党人も亦 「 日本の軍人は、否日本軍は是れだから強いのだぞ 」
と、郷軍分會員と共に称し申候ひし程に御座候。
かかる物靜な眞の武人とも申上ぐべき中佐殿が、何故ああした行動に出でられしか
・・・・中略・・・・
眞に事此処に至り見るに中佐殿としても決して無謀なること
( 事實無謀なるもその信念に於て ) とは考へられず、
生等の關知し得ぬ処の何事かに義憤を感ぜられて、
爲すべからざる行動を敢えて爲されねばならざりしか、
その眞情到底普通人の考へ及ぶ処に非ずと存ぜられ候。
出來申せしことは如何とも致方御座なく候も、
あの風格をお慕ひ申上ぐる生等として出來うべくんば
否是非々々寛大の御処置を望むものに御座候。


次頁 中佐の片影・其四 に 続く
二 ・二六事件秘録 ( 一 )  から


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