相澤三郎中佐
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相澤中佐の片影
( 二 ) 中佐の片影
其十 一青年 ( 福山市 )
あのやうな温厚な人がどうしてあんな重大なことを決行されたか。
これは私達青年にとりて重大な問題であります。
熱烈な皇魂の保持者、
天子様への忠誠をもつて終生の念願とせられて居た中佐殿が今回の義擧は、
余程重大な意義があるやうに思ひます。
否、斷言します。
重大なものが確にある。
重大なものがなくてあの温厚な人がどうして起たれやうか。
私達は三思三省すべき秋です。
「 天子様の御地位は安全ですか 」
「 お國は發展してゐますか 」
「 皇民は安心して生活してゐますか 」
私は相澤中佐殿が私に語られた言葉の二、三を發表します。
「 私が日夜憂へてゐるのはお國の事です 」
「 尊皇心程重大なものはない。尊皇心なきものは日本人ではない 」
「 永田さんは立派な現在の政府の官吏であるかも知れないが、大御心の解らない人だ 」
「 若い人は決して無謀な事をやってはいけない。
前途ある青年は、皇國を守る爲、 天子様の御爲めに生命を大切にして下さい 」
「 全世界の人々は皆天子様の赤子です。赤子お互ひに爭ふことはまちがいです 」
「 軍人の中に尊皇心の欠けてゐる人が居る。
又軍人精神の眞義の解らない人々が居るのが残念でたまらない 」
「 私達の行動は、皇道精神の命ずる処に從って動くのです。
大御心を奉じて行けばよいのです。
唯 天子様への御奉公あるのみです。
全身全霊を以て天子様に忠誠を盡くすのです 」
次頁 中佐の片影・其十一に 続く
二 ・二六事件秘録 ( 一 ) から