『谷崎潤一郎犯罪小説集』

 すみません。ちょっと感想はさぼり気味です。久方ぶりに大谷崎です。

 『谷崎潤一郎犯罪小説集』を読みました。
 

 収められているのは、「柳湯の事件」「途上」「私」「白昼鬼語」、の4篇です。
 帯にもあるように、悪魔主義と呼ばれるあたりの作風が集められた一冊でした。私は「白昼鬼語」のみ、ちくま文庫『美食倶楽部』で読んだことがあるので再読でした。

 「白昼鬼語」も好きでしたけれど、今回のお気に入りは何と言っても「柳湯の事件」です! これ、幻想犯罪文学の白眉じゃん…と思ったのですがどうかしらん?
 「柳湯の事件」はとても短い作品です。私(小説家)が弁護士S博士の事務所に訪れて、二人で語り合っているところへ、“一目で異常な犯罪者に相違ない”と思わせる凄惨な様子をした青年が、飛び込んでくる。青年曰く、自分は人殺しの大罪を犯しているかも知れないけれど、“たびたび幻覚を見る癖のある人間”なので、どこまでが本当なのか分からない。ひいては是非とも先生に、僕の話を聞いて欲しい…。ということでここから、青年の身に起こった数日間の出来事について語られていくのです。が…。
 やー、そこからがすごく面白かったと言うか、気持ち悪かったと言うか。青年の話の中に出てくるのが、柳湯という湯屋。語り手の青年Kは自称絵かき(売れてないらしい)で、兎に角ぬらぬらしたものが大好き。ぬらぬらしたものを描くことだけはとても上手なので、友人たちからヌラヌラ派という呼び方をされている。うげげ…。 
 で、その柳湯は相当不潔な湯屋なのですが、薄穢いヌラヌラした湯に浸かるのも快感であったそうな。うげげ…。ところがその湯船の底には、もっとヌラヌラした物体がただよっていた。そのヌラヌラした物体とはいったい…? それがどうして殺人事件(?)へと繋がっていくのか…。
 私はヌラヌラしたものは苦手な方なので、読みながら背中のあたりがざわざわそそけてきそうでした。着想と言い、異様に真に迫る筆致と言い、流石です。

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