1月に読んだ本

2016年1月の読書メーター
読んだ本の数:21冊
読んだページ数:6137ページ
ナイス数:159ナイス

その姿の消し方その姿の消し方の感想
まず、この本の静かな佇まいがとても素敵だ。長い長い年月をかけた幻の詩人探索、その不思議な物語を読み終えた今ならば尚更に、手元に置いておけることが嬉しくなる。「詩人」ルーシェの跡を追う先で知り合えた人々が、少しずつ“ひろい意味での「家族の一員」”になっていくゆるやかで優しい時の流れ。過去の淵へこぼれ落ちて一度は消えてしまったように見えても、また誰かに掬い取られて言葉と思いは繋がっていく。細くその形を変えながらでも、いつまでも見届けることは出来なくても。
読了日:1月31日 著者:堀江敏幸
噂の娘 (講談社文庫)噂の娘 (講談社文庫)の感想
素晴らしい読み応え。『秘密の花園』を繰り返し読んだ頃の古びた記憶が不意に呼び起こされ、ゆさぶられ、一体“いつ”に連れて行かれるのだろう…と幾度も目眩した。主にキッチュな懐かしい昭和ならではの色使い(チュールのリボンにチロリアン・テープ!)が、其処彼処に溢れんばかりに描き込まれ、いつしかそれらは、うねうねととぐろを巻くような文章の効果と相俟って大きなマーブル模様をなしていく。包み込まれて切なく見蕩れた。“女の人がいっぱい出てくる”、商店街の美容院で過ごした少女の時間。
読了日:1月29日 著者:金井美恵子
吸血鬼吸血鬼
読了日:1月27日 著者:佐藤亜紀
ローベルト・ヴァルザー作品集 1 タンナー兄弟姉妹ローベルト・ヴァルザー作品集 1 タンナー兄弟姉妹
読了日:1月26日 著者:ローベルト・ヴァルザー
エクソフォニー――母語の外へ出る旅 (岩波現代文庫)エクソフォニー――母語の外へ出る旅 (岩波現代文庫)
読了日:1月24日 著者:多和田葉子
マルセル・シュオッブ全集マルセル・シュオッブ全集
読了日:1月22日 著者:マルセル・シュオッブ
溶ける街 透ける路溶ける街 透ける路の感想
再読。これまたあらためて旅の多さとその移動量に驚嘆しつつ、とてもよかった。多和田さんが訪れる町は様々だけれど、ブックフェアや朗読会、芸術祭、文学フェスティバル(その合間に書店や図書館、古本屋…)…と続くので、どこもかしこも本の町のように思えてきてしまう。そんな中で印象的だったのが、ダルムシュタットの「博物館の長い夜」と呼ばれる日。年一度、街中の美術館や博物館(その他文化施設)が夜中に開館していて、展覧会でもコンサートでも通し券で自由に入れる…とか。ヴュンスドルフの不思議なエピソードも好きだなぁ。
読了日:1月21日 著者:多和田葉子
白昼のスカイスクレエパア白昼のスカイスクレエパアの感想
うとり…これは素敵な本。少しずつねぶねぶ摘みたくても出来なくて、もう一つあともう一つ…と指先が頁を繰ってしまう。吸い寄せられるようだった。白くて眩しくてどこか淡く儚い。真水みたように冷やりと澄む孤独。“僕は夏の白昼の街を好いている。燃えたつような白昼の白いスカイスクレエパアを愛している。”
読了日:1月20日 著者:北園克衛
傘の死体とわたしの妻傘の死体とわたしの妻の感想
再読。
読了日:1月19日 著者:多和田葉子
カタコトのうわごとカタコトのうわごとの感想
再読。日本語での初期エッセイ集、あらためて面白かった。おおっ…と引き込まれて読んだのは、「文楽」的な面から富岡文学の特色をわかりやすく読み解く「舞台のある小説」や、『硝子生命論』の書評「人形の死体/身体/神道」、ツェランの詩と翻訳についての話「翻訳者の門」、「ハムレットマシーンからハムレットへ」…などなど。 あと、巻末の「二〇四五年」は、『献灯使』へと繋がっていくような近未来もので、とても好きだ。冒頭、“二〇四五年ともなれば、妻という妻は食パンで出来ている。
読了日:1月18日 著者:多和田葉子
アメリカ―非道の大陸アメリカ―非道の大陸の感想
再読。アメリカに生きるきつさ。報われず行き詰まっていく人たちの姿を、異邦の“あなた”の眼が静かに見つめている。何処にも属さず(属せず)、淡々と。
読了日:1月17日 著者:多和田葉子
聖域の雀 (現代教養文庫―ミステリ・ボックス)聖域の雀 (現代教養文庫―ミステリ・ボックス)
読了日:1月16日 著者:エリスピーターズ
海に落とした名前海に落とした名前の感想
再読。いやはや…覚えていた以上に4篇とも面白かった! とりわけ今回とても好きだった「時差」は、東京・ベルリン・ニューヨークを舞台に3人の男たちを描く話で、彼らのすれ違いっぷりが切なくも滑稽でつい笑ってしまった。3人の追われつつ追う三角関係はベクトルがぐるっと回り(つまり3人とも過去に関係が…)、恋愛のもどかしさや温度差と時差そのものがリンクして延々ぐるぐる回っている様が読み手にはわかる…という。そして、やはり表題作に唸った。“名前”を失う話にはぐらぐらする。拠り所としてきたことの脆さを知らされる、その眩暈
読了日:1月15日 著者:多和田葉子
メダリオン (東欧の想像力)メダリオン (東欧の想像力)
読了日:1月14日 著者:ゾフィアナウコフスカ
紋切型辞典 (岩波文庫)紋切型辞典 (岩波文庫)
読了日:1月13日 著者:フローベール
けだものと超けだもの (白水Uブックス)けだものと超けだもの (白水Uブックス)
読了日:1月12日 著者:サキ
奥の部屋: ロバート・エイクマン短篇集 (ちくま文庫)奥の部屋: ロバート・エイクマン短篇集 (ちくま文庫)の感想
確かに怖い話…だが、怖さよりも何とも言えない気持ちの悪さに魅入られ捕り込まれていく7篇。自分ではない誰かのおぞましい妄想なのに、その中に強引に引きずり入れられ、いつのまにかそこの住人にされているのに気付いて「そんなのいやだここから出してくれ…」と呻きそうになる。そういう怖さ…ていうか気持ち悪さでぞわぞわっ。でも、「学友」のサリーや「何と冷たい小さな君の手よ」のネーラが閉ざされていた場所のことを、知りたいとも思う。他、「髪を束ねて」と表題作が好き。(私だけを守ってくれる強固な境界線なんてないんだ…きっと)
読了日:1月11日 著者:ロバートエイクマン
マダム・エドワルダ/目玉の話 (光文社古典新訳文庫)マダム・エドワルダ/目玉の話 (光文社古典新訳文庫)感想
「眼球譚」があまりにも名タイトルなので驚いていた「目玉の話」だが、読んでいるうちに馴染んでくる。解説を読んで得心した。
読了日:1月8日 著者:バタイユ
自分ひとりの部屋 (平凡社ライブラリー)自分ひとりの部屋 (平凡社ライブラリー)
読了日:1月7日 著者:ヴァージニアウルフ
日時計日時計の感想
流石の魔女、とても面白かった。身内による殺人を仄めかす不穏な冒頭、夫を亡くしたばかりの妻とその娘の会話の内容は更に異様(『あたしが突き落としてあげようか?』)で、ぐっと引き込まれた。そこから何がどうしてこんな話になるの…と驚嘆するほど、その展開の持って行き方にも凄みと“根の暗いユーモア”を感じる。訳者あとがきにもあるように全体のバランスは悪いが、それさえも妙味で、例えば私は終盤のパーティの場面など可笑しくて好きだ。あと、ファンシーとグロリアの造形がまさにジャクスンの少女たちなので、そんなところもツボだった
読了日:1月6日 著者:シャーリイ・ジャクスン
ブラウン神父の不信 (創元推理文庫)ブラウン神父の不信 (創元推理文庫)の感想
再読。しみじみとブラウン神父が好きだ…。因縁の復讐譚「天の矢」では、相手の立場によって言質を翻す人々の誤謬を諌め、その場に居合わせずに真相を解く「犬のお告げ」では、犬についての迷信に拘泥する青年を諭す。そんなとき、ブラウン神父の言葉の一つ一つを素直に読めば、一見逆説めいた話にもするりと得心がいく。その気持ちよさ。他、今回のお気に入りは「翼ある剣」と「ダーナウェイ家の呪い」。黒に対抗する白魔術への言及、廃墟を舞台に伝説の詩や肖像画の謎…といった怪奇な雰囲気もツボだった。(めも カーの『白い僧院の殺人』)
読了日:1月4日 著者:G.K.チェスタトン

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