9月19日

 ザッカリー・メイスン/矢倉尚子訳『オデュッセイアの失われた書』を再読した
 
 大変好みな作品。『オデュッセイア』に基づく44通りの変奏で、叙事詩の世界に封じられたオデュッセウスやアキレウスたちが、幾つものバリエーションの中で思いもよらぬ姿を見せる。口承され、流動していく物語さながらだ。
 あきらめて再婚したペネロペイア、アキレウスのゴーレムを作った魔術師オデュッセウス、出奔するヘレネ、好敵手を求めて天国へ行くアキレウス。などなど 。
 「サナトリウム」や「あるゲームの記録」には、こんな変奏もありなのかと吃驚した。そして死の影が濃くなり、オデュッセウスが衰えていく終盤の展開に感嘆した。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 9月18日 9月20日 »