別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

かなしみの色は

2005-06-05 | アートな時間
 ノートには好きな歌が書いてある。吉井勇の歌だ。いつ、どこで会ったか記していない。どこかの抜き書き。

 ☆ 広重の海の色よりなお淡(ウス)き我がこのごろの悲しみの色

 どんな悲しみだろう、こころに沁みた。そのまま覚えた。
 何年かして、はじめて吉井勇歌集を読んだ。
  「昨日まで 秋と冬」のなかにある一首。 

 ☆ 広重の海の色よりややうすしわがこの頃のかなしみの色  

 メモした歌と歌集の歌は微妙に違っている。
  なお淡(ウス)き と ややうすし 

 東京国立博物館、広重の「阿波鳴門之風景」のまえで、この歌のことを思い出した。吉井の胸にきざまれたヒロシゲブルーはどこにあるだろう。この版画は渦潮を花に見立てているとあった。

 「なお淡き」に惹かれた。「ややうすし」より、こころを鮮やかに写している気がした。歌集が正しいとしても、なお淡きをとる。
 感覚だけでこれを選ぶ。

 企画展は見ず、本館のみ。蕪村の書状や池大雅の書(七言二句)を見て満足。ベルリンの至宝展は大混雑。
 茶道具の棗を入れる仕覆が好きだ。武相荘を訪ねしより。能「杜若」の展示も。四時間ゆっくり堪能した。ショップで小さな買い物。
 ユリノキ、泰山木の花盛りなり。山を下りてうさぎやに寄る。
-☆-
 ユリノキは半纏木、ルピナスさんに教わりました。半纏木なら近くの公園にもあります。急げ!カラスが多いから
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1 コメント

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Unknown (過去ログ)
2007-02-26 22:40:53
通う千鳥の・・・ (虚庵) 2005-06-07 10:42:22

広重にこのような版画があることは、ついぞ知りませんでした。虚庵夫人の生地が淡路島ですので、身近に感じられました。

淡路島は、春先「いかなご」が獲れますが、それにまつわる落書きと拙い歌を、以前に紹介しました;http://blog.goo.ne.jp/kyoan/d/20050406
ご紹介されている歌の世界とは、随分とかけ離れた俗界のことにてお恥ずかしい限りですが、ご笑覧下さい。


釘煮は大好き(ラグタイム) 2005-06-07 16:19:16

 食べたくなりました。デパートで良く買います。レストランのお味は、さぞやと羨みました。
 花の「阿波鳴戸之風景」のほかに、雪の「木曽路之山川」、月の「武陽金澤八勝夜景」とで「雪月花三部作」と称される広重晩年の風景画の代表作、だそうです。


鳴くこえに (ラグタイム) 2005-06-07 23:54:02

  食い気ばかり…



吉井勇の歌 (bonito) 2005-06-08 06:34:26

わたしも勇の歌はときどき墨彩画にも入れます。ところで企画展をキャンセルして、本館のみに集中するセンス、素敵ですね。!!!
 九州ではそんな機会も滅多にありませんが。
 「広重の海の色より」の歌への見解、ご自分の感性を大切になさるのがいいと思います。
ただし、メモされた歌が初案だろうとは思いますが。
「淡き」の連体形で「悲しみの色」の色
になだらかに係っていくか、「ややうすし」で一旦終止し、一呼吸おいて下の句をゆったりと表出するかの違いだと思います。

 たしかに「ややうすし」は少し俗っぽい
感じ、(大変失礼!)「なほ淡き」の方が音も字面もいいですよね。


共感! (ラグタイム) 2005-06-08 11:36:41

 bonitoさん
 さすがのご考察、ありがとうございます。自分の感性をたいせつに… うれしく受けとめました。
 絵も、批評家がいいと言うからではなく、自分の感覚で捉えたい。映画も文学もすべてにおいて


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