別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

奏でる絵

2010-08-20 | アートな時間

  8月18日
 日本画でも 洋画でもない。 古風な感じの  風化したような 寂びて心にすっとなじむ色彩…
 小さな頭部 太い首 たくましい腕… 足もとは見えず それだけで雄弁すぎるからと 手の詳細も描かない。 静かな絵から 音楽が聞こえます。



送る夜  1983
 

  問題は脚です。 脚を描いてしまうと たとえば歩いているとか 組んで坐っているとか 要するに何をしているかがはっきり分かってしまう…

  手は十分表現豊かだから どんな風にやっても 全体の中で強くなりすぎる…   有元利夫(1946~1985)

 
  38歳の若さで世を去った有元利夫の展覧会を 東京都庭園美術館で開催中です。 岩絵具や箔を用いた独特の画風 いちど見たら忘れられない。  
 作品は、たいていひとりの女性、 複数にならないのは

  関係が出てくる   関係はもういらない気がする…

   

  

花降る森  1979
    

 


ロンド  1982
 
 心地よい音楽を聞くように 自然にすっと心にとけ入ってくる。 版画のほか彫刻、陶芸など。 画像は絵葉書(1986 「キャンバスに描かれた室内楽 有元利夫展」)から。 縮小などで雰囲気が変わってしまわないか 心配です。 

  猛暑と喧騒をのがれ アールデコにふれる。 バロック音楽を聴く。 日本庭園で女郎花が咲いている。 

  詳細は 没後25年 有元利夫展  天空の音楽

  HPで ほかの作品を拡大して観られます 

   

          

 

 

 

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祈りの日

2010-08-15 | 別所沼だより

  それは或る昼だつた。 暑く灼けた日であつた。空には何か見知らないめづらしいもの心を誘ふものがあつた。 私はいつものやうに水辺の草に身を横たへて高い空に眼をやつてゐた

  私を蔽オホふ影をつくつてゐる樹木の葉たちのこまかいそよぎにもかたまりかけては消えてゆく雲の営みにも心はとまらなかった…
           
              「不思議な川辺で」   立原道造


             -☆-

トンボが見えますかガイドの日 
  思いだしたように吹く風を感じながらお客さまを待った。 朝から襲う猛暑。

 まずはトンボがやってきてガラス戸の縁にとまる。 銀色の翅を小刻みにふるわせて熱気を振り払うようにした。 
 小さな命に不快感などないのかしらと思えるほど元気。  ミーンミーンがきこえ、 ジー ジーやオーシーツクツクも混じる。 盛大でにぎやかな合唱を耳に、沼や梢はどぎつい光りにさらされて、 ぼーっとしている。  

 走り終えたばかりの男性が近づいて 流れる汗も拭わずに聞いてくださる。 川越から何度もいらしたというかたなど午前は男性が三人。 

 日ざかりに女性がつづく。
 立原道造を卒論に選んだ学生さん 一時間ほど熱心に見ていかれた。 資料は見つかったでしょうか
 追分までご一緒したKさんのなつかしい笑顔にも会えた。 あの日、 同人誌の集いに飛びこんで 村はずれの歌 や 美しい村 に遊んだ。 絵日記に残したおかげで記憶も鮮明だ。 

 沼をながめ かすかな風を感じ それでも36℃。 団扇が手離せない。 旗は とうとう翻らなかった。 
  来訪者 五名

             -☆-

木かげをゆく親子

  祈りの日、 酷暑に灼ける日は こころも熱い日
   いつまでも忘れません。 

  さう、 かの時代のおびただしき死のひとつでありしよ 父も
                            金子貞夫

 日本人や中国人をはじめ、多くのひとが戦争で命を奪われた。それを思えば、 父はその一人に過ぎなかったのかも知れない。 でも、家族にとってはかけがえのない命だった。 
        「響け 戦争遺児の歌  朝日新聞」
  

  

 

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自由研究

2010-08-07 | 夢見鳥

     カラスアゲハ

  この蝶は カメラを向けると
   こちらをチラと見たのです

  自慢の美しい翔を どうぞ写して…

   堂々として

   ひとがいるなんて ぜんぜん気にならないようで  

 

   

 いかがです  
 この姿勢では 顔(頭部)は横向きになるはずですが 上の写真と比べてみても こちらを向いているのは明らかです

            -☆-

  庭の レモンやキンカンの木にアゲハの幼虫がたくさんいる

     

 でも ここまで成長するのはまれで 天敵が多い

 きのうも たいへんなショックを受けた。 目の前で カマキリが幼虫をムシャムシャ…  振り払っても振り払っても その映像ばかりが現れる。

 夕方 腰のくびれた蜂もやってきて葉裏や枝のすき間を飛びまわり、 丹念にチェック。 見ていると1㎝から3㎝くらいまで育った白黒のフンのような幼虫を抱きかかえ素早くさらっていく。 それを何遍もくり返した。 野鳥から逃れたはずなのに、 蜂は執拗でなすすべもない。 
 成虫になれるのはほんの一握り  厳しいな 
 

      

       仮面ライダー 登場! といいたいが
   
     虫たちの旺盛さに 身をひきしめる蛙です


   立秋の紺落ち付くや伊予絣     漱石
   草花を画(エガ)く日課や秋に入る   子規
   美しきもののさみしさよ秋来り    鷹女



  立秋は名ばかりで 酷しい残暑がつづく
   猛烈、 凄惨な日常で 
    句から 平穏さと涼味をいただきます

 

         

 

 

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空蝉

2010-08-01 | 別所沼だより


  けふは たのしい日曜日。 やつと昨晩、 僕は帰つて来た、 長い留守から、 忘れてしまつた僕のなかへ。 日曜日。 だから、 僕は君に手紙をかかうとおもふのだよ。
 それは沢山の見知らない土地だつた。 また大ぜいの人たちだつた。 さうして、 戦争でさへあつた  ……

 旅といふのは、 信濃へ行つたことではないんだ。 わかつてくれるね  ……   

    

   

   
  
…… だがいま、 かうも思つてゐる―― まだ僕は帰つて来てはゐないのぢやないかしら。 夢を見てゐるのぢやないかしら、 眼をさめたら、 沼のほとりにさびしげに立つてゐるのぢやないかしら、と …
        
      立原道造 (昭和十年十月十三日  生田 勉宛)

  

 
 
 ツトム君―― なんども呼びかけながら親しい友人に宛てた
  長文の手紙。 苦しいとさえ感じながら 詩人はさまよった という。 
 たましいの旅路は 終わりがない。

       -☆-

 なにも知らない蝉しぐれが 勢いを増して降っていた。 
 沼は 酷暑でどろりとしている。
    
   空蝉を見る妻の瞳(メ)のうるむなり   岳陽
   空蝉の一太刀浴びし背中かな     朱鳥

  
  壮烈な 蝉の一生を思う。  

  きょうから 八月。
  熱中症に気をつけて どうぞお元気でお過ごしください

 

 

 

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