追ひもせずに 追はれもせずに 枯木のかげに
立つて 見つめてゐる まつ白い雪の
おもてに ながされた 私の影を――
(かなしく 青い形は 見えて来る)
私はきいてゐる さう! たしかに
私は きいてゐる その影の うたつてゐるのを……
それは涙ぐんだ鼻声に かへらない
昔の過ぎた夏花のしらべを うたふ
真冬のかたみに… 立原道造 抜粋
-☆-
別所に雪はなかった。 くもり。 終日雪下ろしの強風。 開室時の気温2度。 11時になっても来客無く。 釣り人はいつも元気。 群がり、 野鳥のように一列に並んだ。 こんな日は、 魚も水底で眠っているに違いない。
ジョギングに精を出すひとも絶え間なく。 水彩を描く人もいる。
ぼんやり、 風のうなり声を聞いた。 まえの枯草がちぎれて飛ばされる。 窓を開けるとメタセコイアの手裏剣まで入ってくる。 鳩やカモメ、鴨が騒いだ。
ご案内のプレートを覗きこんで、 歓喜しているのが遠くからわかった。 カップルがにこにこと近づいてくる。 金沢から一路ハウスめがけ… ずっとずっと 思い描いていらしたのだろう。 2時間近く滞在された。
ありがたく思う。
葛西から 部屋探しのおふたりは、 どんなところか、治安はどうか… 実地見聞にいらしたところ。 近くに沼が ハウスがある… 偶然を喜ばれた。
「ぜひここに お決めください」 俄に不動産屋となって 別所の宣伝に励んだ。
来客21名。 午後は晴れたが6度しかない。 風も凍る。
2006年 おなじ頃の別所沼 乱舞するカモメ