瑛九 「春」 油彩
生誕100年記念 瑛九展
夢に託して- うらわ美術館
宇宙に向けて- 埼玉県立近代美術館
多岐にわたる足跡を 8つのトピックに分類 2館同時開催
(以下に パンフレットから ご案内します)
Topic 1 文筆家・杉田秀夫から瑛九へ―――― うらわ美術館
・本名 杉田秀夫(1911-1960) 10代の頃から美術評論や写真評論、 物語を発表
印画紙を使用したフォト・デッサン集「眠りの理由」を機に 瑛九(Q Ei)の名が生まれた
Topic 2 エスペラントと共に―――――――― 埼玉県立近代美術館
世界の人々がおなじ言葉を話せば争いも起こらないと
人類共通語「エスペラント語」を広める活動
Topic 3 絵筆に託して―――――――――― うらわ美術館
生涯にわたって油彩画を描く。 様々な実験をくり返しながら到達する点描までの
変遷をたどる。 影響を受けた他作家など
Topic 4 日本回帰―――――――――――― うらわ美術館
ある時期 制作に行き詰まって東洋的思想に関心を持つ。 芭蕉、良寛にひかれ
墨絵を描き 俳句を詠んだ
Topic 5 思想と組織 ――――――――――― 埼玉県立近代美術館
権威主義に抵抗し、自由と独立の精神で制作することを目指す。
宮崎での美術団体「ふるさと社」 「自由美術家協会」、 自ら主催する 「デモクラート美術家協会」 設立に関わる。
Topic 6 転位するイメージ――――――――― 埼玉県立近代美術館
フォト・デッサン コラージュ 吹きつけ作品など
使われた材料や道具の展示
瑛九 「過去」 エッチング
Topic 7 啓蒙と普及――――――――――― うらわ美術館
美術教育
版画の講習会を開き 子どもたちに絵を教えたり
多くの人に美術を広めようと活動
Topic 8 点へ・・・―――――――――――― 埼玉県立近代美術館
瑛九の最後の冒険が築き上げた独自の世界。 晩年の3年間に見られる
点描の変遷過程を紹介
-☆-
(鑑賞メモ)
瑛九の作品について 勝手なイメージをつくっていた。 よく見ないで、前衛的 挑戦的だ、 難解だと決めていた。 でも 今なら分かるような気がした。 趣味で絵を描きつづけ、 創造の愉しさ 難しさを知り、 変化にとんだ表現や発想に心が動く。 自由な価値観をたいせつに思うこのごろだ。 疾風のように駆けぬけた49年を見直した。
・友人、 兄、 婦人宛のエスペラント書簡 心がかよう同志たち。
パリやストックホルム、イタリイ、チェッコ、イギリス、アメリカのレン中と意見のコウカンをすることは田舎生活の唯一のなぐさめです…
・初期の油彩にこころが安らぐ 真似たい表現もある。 ・「りんご」油彩 ・宮崎郊外(油彩1943) ・窓をあける(1949) ・タバコを吸う女(油彩1935) タッチや色づかいに共鳴する ・海(油彩1950)など
ピカソの影響やフォーヴィズム キュービズムなど。 色鮮やかな抽象画、 今もモダン、新しい。 渦巻く点描の迫力、 奥深い、 そのなかにやさしさを湛えている。 宇宙へ誘われる。 色彩の調和など学んだ。 作品はおもしろくて ゆたかな気分。 強烈さばかりではない。 イメージが全く変わった。
藝術とは 意識して思考の究極のかなたにある現實を感得することである 瑛九
11月5日 追記
色々試して新たな作品が生まれた。 エッチング作品 「過去」が フォト・デッサンのもとになり全くあたらしいバージョンを生み出す。 おなじ型紙が油彩や吹きつけ、 コラージュに使われたり、 ジャンルを行ったり来たり、 表現の境界はなく限りなく発展してゆく。
網目が点に変化し、 大きな円は花びらになり やがて点々になり ……になり さながら水族館で見たゴンズイの群れのように かたまり 崩れ 散り散りになった。 嵐が来て
押し流され 求心力にひかれて渦巻き 吹き荒れるさまを、 透明な椅子に腰掛けていつまでも眺めてきた。 大作は圧倒する力で 見る人を取り囲む。 まんまと 瑛九の罠にはまった。 愉しかった。