別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

2008-03-31 | 別所沼だより

    さくら 櫻…

     花のしたに人があつまる  

       華やかさと  はかなさをみせる櫻 
  
                 

   

  花のもと 花大根の彩り   黄色いタンポポや菜の花も咲いている。

  蛙の目の高さでみる  ヒアシンスハウス 
  ナズナが耳元で揺れて   幽かに  ペンペン・・・ と鳴った。

 


  週末は さぞ賑わったのだろう   雨上がりの公園は静まりかえっていた
    
    花のように淡い雲と…   鵜や鴨と  蛙と …     

          花吹雪を追い  心ときめいて



       
       あえかなる花    薄墨のいろ    

           天辺に水あるごときさくらかな     麦草

        さくらは 仰ぎ見るほうが 断然 好き
                 大いなる櫻をめぐる 佳き日である。
 

   桜ばないのちいっぱいに咲くからに生命をかけてわが眺めたり     岡本かの子

   「タゴシ タゴシ… 」  太郎を呼ぶ声がする。
 
  お母さんの美しい特性は何といってもあの純情な童心だ。 … この純情な童女に含まれている生命の豊富 情味の豊富 また気品や調子の高さは稀にみるものだ 
    (父より太郎へ 「母の手紙」 岡本太郎)

  生命(イノチ)、 情味、 気品や調子の高さ…  桜そのものである。


 

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風信子忌

2008-03-29 | 別所沼だより

 
  
毎年 風信子忌は3月の最終土曜と決めている。  今年、 命日の3月29日にぴったり合ったのは、 珍しいことである。 昨年の風信子忌 歌の秘密 

  谷中多寶院にて 墓前祭のあと

  上野池之端  水月ホテル鴎外荘に移る。

   ・式辞
   ・挨拶
   ・第2回立原道造賞受賞者挨拶  桑野洋紀
    日経アーキテクチュアコンペ 立原道造賞 
    (20歳代の若手建築家を対象とする最高賞として創設された)  関連記事

   
・詩朗読  佐岐えりぬ(詩人・故中村真一郎夫人)
     
「村ぐらし」 「詩は」 「風のうたつた歌  その1~3 : 一日 草はしやべるだけ」

   ・講演 「道造讃 (みちぞうさん)」   立原えりか(作家)

 
 ファンだったので立原とつけたが、 詩人にはなれなかった。 中2のとき立原の詩「のちのおもひに」に出会う。 この世にこんな美しい作品があることをはじめて知った。 きれい過ぎる、 手が届かないね と思った。  憧れるほどに、 彼の美しすぎることばは痛い思いだけを残す。 詩集、研究書などを読んだが、 あるときから道造を忘れようとし、 封印してきた… 
  「
運動会のときに いつも一周遅れで走っていた」 という立原の詩におなじ思いを見つける。 童話の新人賞受賞。 結婚、 綺麗なだけではすまされない、 現実…  封印するきっかけなど語った。

              -☆-

  封印したのに、なぜ立原を名乗るのか…  厳しい質問もあり、 熱烈なファンの前で 気の毒なくらいの作家さんでした。  
司会者は、 幸福の背後にある悲しみを描く…  道造あっての 「立原えりか」 さんの作風である と結ばれた。
  「立原」 をペンネームに選んだ、 岩場に咲く、 厳しさのなかで花開く ヒース 「えりか」さんの童話を 私はまだ読んだことがない。 これから読もうと思う。

   講演内容は  青い小麦さんにくわしくありましたので、ご紹介します。 

 
   ・懇親会  献杯  会食

 

       郵便函は荒物店の軒にゐた
       手紙をいれに 真昼の日傘をさして
       別荘のお嬢さんが来ると 彼は無精者らしく口をひらき
       お嬢さんは急にかなしくなり ひつそりした街道を帰つて行く

             …     中略 

       村中でたつたひとつの水車小屋は
       その青い葡萄棚の下に鶏の家族をあそばせた
       うたひながら ゆるやかに
       或るときは山羊の啼き声にも節をあはせ
       まはつてばかりゐ
る水車を
       僕はたびたび見に行つた ないしよで   
…                                           

                        「村ぐらし」  立原道造 抜粋


  朗読を聴いていると  詩は映像となって 心にひびいてくる
    真昼の日傘をさして…  陽は 大きな日傘になった
    山羊の啼き声にも節をあはせ … 山羊の啼き声に 節をあわせる水車

                               
鴎外荘蔵の間   舞姫の間(風信子荘とおなじ歪んだ硝子)

 

 

 

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僕は

2008-03-15 | 別所沼だより

 
      僕は 背が高い  頭の上にすぐ空がある
      そのせゐか  夕方が早い!         立原道造

  
  男の子ふたりの質問は 「いちばん好きな詩をおしえて…」 だった。 それで小学生に読んで聞かせる。  雰囲気はつかんだかな。  瑞々しい心に伝わっただろうか。 道造さんは  ほっそりとして とても背が高かったのよ…

  長身痩躯、 いかにも都会育ちの瀟洒な好青年であった。 萩原朔太郎さんが最初に彼の訪問を受けたとき、 芥川龍之介の息子が来たとまちがえたとのことであった (神保光太郎)

  少年は、 ヒアシンスハウスのスタンプを押し、 メモ用紙に「僕は」 の詩を一生懸命に写した。 立、原、道までは漢字で書けるよ。 帰りにきちんとお礼を言って出る。 
  9歳とは、 こんなにもしっかりしている。

                -☆- 

  朝から晴れる。  初夏のような日差しに30名近く訪れた。 とくに子供たちが多く、 喜ばしい。 絵画教室の先生と生徒たちなど。   
     

  窓辺で ヒアシンスも香る。  鵜は3羽になり、 翡翠の姿はない。  カモメが数羽。  白い鳥と、 黒い鵜が並ぶ浮島も、 風に吹かれて 少しずつ移動している。

  空き地の隅を花大根が占め、 以前は散らばっていたオオイヌノフグリが、 一面にコバルトを広げている。 
  空の瑠璃色が降ったのだろうか。 一段と濃くなって、 僕の別名 「星の瞳」。

      犬ふぐり星のまたたく如くなり     虚子

        

   
  午後。 絵を描く先輩が、 古い写真を持ってきた。
  43年前の別所沼である。 岸辺に行儀良くならんだ木はメタセコイアであろう。 若木は高台の家を見上げている。
  昭和40年4月10日 子供を乗せて、 楽しげにボートを漕いでみせる彼女も、 溌剌として若い。

  

  
  現在は、 公園の奥は児童広場だが、 そのあたりが牧場だったらしい。 神保光太郎 の詩に 「牧場にて」 がある。 馬もいたのだ。

  北浦和公園に移った美術館も、 この頃は別所にあった。 今は、 公園管理事務所が建っている。 ハウス前は砂利が敷かれ、 駐車場であった。

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別所に鵜がいる

2008-03-09 | 別所沼だより

  鵜だ! 遠くのシルエットだけで確信した。  大きめの黒い影、 首や嘴の感じ、背中のライン。 繁殖期には、 足の付け根に白い斑紋、 間違いない。

  浮島に 鵜が居る。 少し離れて 翡翠が2羽、 素早いダイビングも見て取れる。

  

  川鵜と翡翠  鴨が近づく    遠すぎて ぼんやりとしか写らない。 
  通い詰めて5年  初めて遇った。

 
仰ぐこと多くなり春の空となる     秋を
 
 
さざ波がひかる  春の沼で
 
羽繕いする 大きな鵜  
 
小さな翡翠が 見つめている
 
ここなら安心  誰も来ないね…
 
 
 
  
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河津桜

2008-03-08 | 自然や花など

  南伊豆まで見にいったのは ずいぶん前になる。 あのころの仲間3人。  花は小さくて、 白っぽかったように思う。 屋台の、 煙と匂いに巻かれ気勢をそがれた。  人出の多さも驚きだった。

  数年まえ、 近くのお宅で河津桜をみつけた。 以来、 拝見してきたが、 ここしばらくは行かれなかった。  久々に気づいてみると、 樹はかなりな大きさになっている。

  通るひとも、 釣られて見あげる。 
  「写真 撮らせてください…」 独り言ともつかず、 輪の中に入った。 塀に寄って表にはみ出したところを写す。 晴れ渡った青空に、 花が映える、 濃い紅色の天蓋のようである。 花灯りに照らされて、 見知らぬ同士が笑顔になった。
 

   「ありがとうございました… 」  声は お宅の中まで届いたかしら。 
     ヒヨドリが 首をかしげている。 

   

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小村雪岱

2008-03-04 | アートな時間

  常設展がおもしろい  小村雪岱 コムラ・セッタイの江戸モダン

  キャプションに 1918年(大7) 開設間もない資生堂意匠部に入社。 資生堂デザインの基礎を作った 1923年退社 とある。
  子供のころ雪岱のなまえを知った。 おとなが町の化粧品屋さんで貰ってくる冊子を楽しみにしていた。 モダンな「花椿」。 いま思えば、 レトロな銀座の匂いと、 流行の最先端が載っていた。
  確かでなかった記憶が、 雪岱の展示に結びついてほんとうに良かった。

    

  この MATCH LABELS のなかに 雪岱のデザインもあるのかしら

  ・白と黒の美学- 挿絵の世界
  はじめはビアズリー風や西洋的な挿絵が、 次第に浮世絵や日本画の静謐なものにかわっていく。 ミレイのオフィーリア風(川口松太郎作 「女師匠」大正15年)もある。 墨 木版など   

  ・月夜の三馬  ・おせん 1941年頃 没後の後摺り
  ・西郷隆盛 (挿絵原画)
 
  代表的日本人  内村鑑三  岩波書店 によると  西郷は…
  人を訪ねていっても、中の方へ声をかけようとはせず、その入り口に立ったままで、だれかが偶然出てきて、自分を見つけてくれるまで待っているのでした  西郷の生活は地味で簡素でありましたが、その思想は、聖者か哲学者の思想でありました…    

  雪岱の洗練された絵は、 犬を生涯の友とするほど、 たいへん寂しがりやだった西郷の、 純粋な意志に迫るものだった。 連載最後の絵が 絶筆となる。

  ・情細やかな意匠- 舞台装置の世界 
  大菩薩峠 源氏物語 一本刀土俵入りなど  背景は役者の邪魔をしてはならず  袖に入った時は 細部まで情趣ある景色を見せなければならない と。 舞台装置ながら、 繊細な写実で観客は臨場感もたっぷりだった。 なまこ壁のリアルさ。 蝶がとまっている。 まるで現場に立っているような感じがするほど。 役者の特徴や照明効果まで配慮された。 1/50縮尺の原画は彩色されていますがモノクロで。  拡大

       一本刀土俵入り
 序幕第一場 取手の宿・我孫子屋の前

         
         序幕第二場 利根の渡し

 
       大詰第一場 布施の川べり  


          大詰第二場 お蔦の家

 

 
 ・雪岱調の源泉-古典絵画と鏡花文学への憧憬 
  見立寒山拾得  ふつうは隠者がふたり ここでは 女性ふたり 落ち葉に筆で詩でも書いているのだろうか 

  鏡花と雪岱   雪岱の作品を使った現代の出版物   

                 
 

       

    ・青柳  ・落葉  ・雪兎模様着物 帯など
  
おせん挿絵 見立寒山拾得・原画は彩色

   ○「視覚への挑戦-近代から現代へ」
 新しい表現への道を切り開いたピカソ、デルヴォー、モホリ=ナジ、マン・レイ、マルセル・デュシャンらの作品をはじめ、近代から現代へと続く「視覚への挑戦」の諸相を紹介します。  (美術館の案内より)
  
  デュシャンの回転すると立体になる作品 興味が湧く  

 

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