別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

光りのクロス

2006-12-17 | 別所沼だより

 
 今月のボランティアは Tさんとはじめてご一緒です。 和歌を詠み、古文書の解読もなさると言う。 好きなことを語るひとのまぶしさ。 今日もすてきな先輩にあった。  この寒さ、クリスマスも間近のこと、レッズの優勝パレードもある、来場者も少ないと予測してはじまる。

 一番乗りは、やはりパレードを見てきた母娘、 黒のロングコートに、赤いマフラー、 レッズカラーがとてもお似合いでした。 (緑ゆたかな浦和に住みたい! 暖かい部屋、窓からの眺め、開放感にあこがれる) 
 建築科の学生さん(建物の図面はありますか? 覆いのない戸袋など、細部を写していきました)
 沼のほとり文芸賞 俳句部門のH氏 ハウス来訪が楽しみな様子でした
 再会もあった。  追分にご一緒して旅の間中笑わせてくださった、ひょうきんなK・T氏。 落語が趣味で文章もすばらしい。(ひょうきんなと、書いてください、 ご本人の特別注文でした) 愉しい方です。

  クロスに当たる光は、反対側に明るいクロスを作り出すはず。 試したくていらしたそうだ。 さっそく確かめる。 南側の雨戸を閉めると、 午後の西よりの陽は東側窓の縁に十字のあかりを落としていた。
  本当! 思いがけない着想に感動します。 Kさんに乾杯!  新発見かも知れないと黒いバッグに映して確かめます。 

       

   これまでクロスは内から外を見るだけのもの。 小窓と思い、切り取られる風景を愛でていた。 ひとつの視点しかなかった。  蛙の頭はなんと堅い。 

 TVの 「ピラミッド秋分の日の奇跡」 も思い出させる。 春分の日と秋分の日にかぎって午後の陽がピラミッドの石積みに当たる。 その時できる影は幻想的だ。
  道造さんのクロスは何を意図したか、 単に ひかりの十字を楽しむつもりだったのか、 ある日、ある時、 決まった時刻に…  詩人の筋書きは……、 謎が生まれた。

 これまで、 ヒアシンスハウスの光りの奇跡について、気づいた人はあったろうか…  そういえば、 薄暗い部屋で、 板戸の節穴から射しこむ光を見ていたものだ。 光線のなかに浮遊する、 塵の幾多をダイヤモンドのように眺めた。 遙かな日もよみがえる。 
  来訪者12名。 曇りのち晴れ 気温12℃ 湿度74% ストーブをつけなくてもハウスは快い温かさ。 さまざまな出逢いもたのしい、あっという間の一日でした。   

 追記 沼のほとり文芸賞・ 吉里睦子さんのうたにもありました。

   晩秋の夕陽雨戸に射し込みて暗きハウスに十字架現わる    
 
 雨戸を閉ざし誰もいない日、 炎色したクロスだけが詩人を慰めているにちがいない。        

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何れか

2006-12-12 | 別所沼だより

   これだけ写真に撮って眺め、 全部メタセコイヤだと思っていた。 ところが、この中に 落羽松 ラクウショウ も有ると教えていただいた。  びっくり仰天!

 落羽松は根が気根キコンといって地表に出ている。 葉は互生(互い違いに出てくる)、 秋には実がなる。 そういえば確かに夏青い実を写しました。でも、おなじ種類だと思った。
 一方、メタセコイヤは葉のつきかたが対生(左右が対になる)。 今までどこを見ていたのか。 ようやく目をこらすが、彼らは赤い毛氈を広げ宴もたけなわ、知らん顔だ。      

      

 毎年、毛布を巻くように集められる枯れ落葉、これが腐葉土にでもなれば、どんなにかいいのに。 いままで美しい風景と思ったが、腐らないでたまる一方の厄介者らしい。 9日も沼底にたまった「へどろ」を、筏に乗ったショベルがせっせと浚っていた。   この色が好き…  美しい…  美しくない  どうしよう…   
  
 下の写真 いずれも2005年12月  左 気根が見える  右 水面に浮かぶものは枯葉

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沼の詩人

2006-12-09 | 別所沼だより


   冷たい雨が降っている。 車で、送ってくれないのをなじりながら、遊歩道を歩く。  ここ2回、 たのしみな講座が雨である。 街路樹の色ぐあいを確かめながら、息を弾ませ歩くのも冬の楽しみ… と、 まるでメビウスの輪のように、 気持ちはいつのまにか反転してくる。  

   ハウスガイド・ボランティア養成講座 第5回 
         「沼の畔の詩人 神保光太郎」     
              弓削緋紗子氏 (さいたま市文藝家協会副会長)

  講師は神保光太郎の教え子である。 男児の父親であった師は女の子もほしかったと、 娘のようにかわいがってくれた。 神保光太郎なしに ヒアシンスハウスはあり得ない。 立原道造が別所の神保邸を訪ねたことに始まった。

 なぜ、 沼の畔りか…
 「神保光太郎が最も活躍した昭和13年、「四季」34号に「道造の本」のなかで触れている。 

  道造は今度、僕の住む浦和の、僕の家の近くにある 
  小さな沼の畔りにコテージ風の家をつくる計画をしている。
   そのコテージの屋根に旗を立てるといふ。 

  その号の編輯後記には、津村信夫により、 神保光太郎がゲーテ晩年の秘書であったエッカーマンの 『ゲーテ対話の書』 上下翻訳の完成したことを記し、  9歳も若い詩人立原道造の来訪を快く歓迎したとある。 神保宅でお喋りな道造は嬉々として語り、 神保は「わが道造さん」 と慈しむ。

  神保は「夢想家道造もなかなかの実行家である」と期待し、 「僕は毎日散歩しながら道造の家が建ち、道造の旗が風に靡くであろう邊りを傾ぎ見てゐる」とある。」                                            (コテージの旗 弓削緋紗子)より引用   

           -☆-

   夏覚えたものに、灯台草トウダイグサ 科 猩猩草 ショウジョウソウがある。 葉も柄もみかん色。 それもきっちり中心だけ。   遊歩道は植物がいっぱいだ。 なかのこれは猩々木? つまりポインセチアだろうか。  路地植えは珍しいので、 ほかの植物か。 猩猩草にも似ているが、よく見れば葉の形がまったくちがう。 グリーンのおびただしい露がひかる、 その一つひとつに宇宙を映して、芯のあたりが紅紫である。 歩くと 珍しいものに出合う。 こどもが描いた絵のように、  律儀に引かれた葉脈も、おもしろい。

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