別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

譲れないもの

2011-02-28 | アートな時間

  あこがれの一村芸術に出会う旅はいよいよ大詰め
  建物もすてきな美術館だ。 館内は広く展示室を繋ぐ回廊をあるくとき 
明るいひかりは水面をチラチラと照らして、 まるで離れ小島にいるような感覚をもつ。 
潮の香りもとどきそうな 水上のコテージで緩やかなときを過ごしたい。


 簾越しの空や雲の、 絵のような調和をシックで素朴なデザインのベンチで、 いつまでも眺めていたい。   

展覧は時代ごとに 
第1章 東京時代(大正3年~昭和13年) 
 14歳の 「蛤図」   
第2章 千葉時代(昭和13年~昭和33年12月) 白い花(ヤマボウシ)  ずしの花(花ウド) 山村六月 翡翠図 秋日村路 千葉寺(春 杉並木 麦秋)  
第3章 奄美時代(昭和33年12月13日~昭和52年9月11日)

 
   ビロウとコンロンカ         海辺のアダン (いずれも絵葉書から

  どの作品も色彩は、 画集の写真より爽やかで落ちついている。 波の音がきこえ風がそよぎ動物の息づかいを感じる。 実際、 画家がすぐ隣にきてひかえめに、けれど信念を持って、 どうしても譲れないことなど教えてくれる。 
 精神的にも肉体的にも削ぎ落として…

 「飢餓が創作意欲をかきたてる…」
 

  それは見せるために描いたのではなく 
 私の良心を納得させる為にやったのですから…
 (田中一村)

 身も心も極限において描く。 ちょっと押せば倒れそうな家に住んで、 食事も衣服も 徹底したきびしさで… 自然と対話する、  画壇に背を向けて

  樹が話しかけてくるようだ                          

 ビロウがこんなにも美しくつよく しなやかなこと、 知らなかった。 実物より本物らしい作品を通して自然を観た。 カメラなら一瞬に写す、 絵はじっと観て感じて… 3年もかかった作品もある。 一村がこめる思いがひしひしと伝わってくる、 彼の魂や生き方までもかたちや色にして活き活きといまも残っている。 澄んだ色と のびやかな美しい線とで 

  アダンの木 

左)ビロウ ムサシアブミ ネズミモチ コンロンカ サンダンカ タマタケラン アサギマダラ(画像はいずれも部分)スキャンにより作品のイメージが薄れましたらごめんなさい

  つよい個性の、一村その人のような作品群、 とくに枇榔 グレーの繊細な階調に魅かれた。 鑑賞はゆっくりと、のこり時間のすべてを当てた。 奄美の郷など全体をみわたす余裕もなく。 奄美の黒ウサギのユニークな子育てなど、手つかずの自然と島唄など魅力がいっぱい。 いつか世界遺産になる前にもういちど訪ねようと思う。 
 
 資料 奄美パーク 田中一村記念美術館 パンフレット 絵葉書 
     NHK日曜美術館 黒潮の画譜 田中一村作品集

※ 記事を書きあげて展示室のモチーフは穀物倉の高倉ではないかと気づいた。

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水ぬるむ

2011-02-24 | 別所沼だより

きのうの別所 

  いったい 何があるの…   鳩に 鴨に ムクドリまで集まって  
  

 

  水ぬるむ…   のどかな沼

    並木を見ながら 知る人ぞ知る太田美術さんの前にでてきた
  こちらで作品にぴったりの額縁ができる
  心をこめて作られる額縁は作品をいっそうひきたてて…
  名画の第一番目の鑑賞者は… 
    以前うかがったお話も甦った   

  沼のほとりの林の奧の隠れ家のような工房からこころよい音がもれている  
  それらがひっそりとした樹間を縫っていく 
  絵と縁と交響する時間…  生まれるのは唯一無二の芸術だ 
  

      

   入口の展覧会情報も目を惹いた  
   
     

 

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沈丁花

2011-02-23 | こころ模様

    

   30年以上育ててきた沈丁花を枯らしてしまった。
 
  「いい匂いだね ボクこの匂いすきなんだ…」 
 
  膝小僧をまっ赤にさせて帰ってきたこどもが大きく息を吸った。 
  小学校2.3年のころのこと。

  運動が大好きで一日中駆けまわっていた彼に そんな繊細さがあったなんて…
 うれしい驚きだった。
 
  「すこしずつ 春になっていくでしょ  ぼく わかるんだよ…」 
  「風のにおいとかさ…」
 
 雨や雪、 日照りでも、 大風の日もきつい練習がつづいた。 土日もない。
 兎跳びのお仕置きなど 正視するに忍びなかったけれども。 厳しさゆえに自然の小さな変化を捉える目、 ありがたいことに心のゆとりも育っていたのだ。 

 「おかあさん 知ってる?」 
 「あのね…  きょうのおつきさまは すっごく大きかったよ」

  季節のささやかな息吹や、 木枯らしに震えるほの白い月を教えて貰った。

      -☆-

  今は 忘れてしまったのだろうか

   仕事 しごと 仕事におわれ  出張ばかりで休みもない
  異国でも  春のあしおと聞こえるかしら   どんな鳥がないてるか  
   気づいてほしい。

   きのう 沈丁花を買ったよ。  可愛らしい鉢植えだ。 
   無邪気なほほえみをくれるので あのころの子供のことを思いだした。 
    

 

 

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春の気配

2011-02-20 | こころ模様

 日が長くなってきたと思う
 4時すぎまで遊んでも  時間はたっぷり残されている
  雪国の方が待ちこがれる春をさがそう  
 
 風は冷たいけれど  やはり春の気配がしている 
  
   春めきてものの果てなる空の色    蛇笏


    コニファーの畑では  好きな色がまどろんでいる
    とおく霞むように雲がある


  小さな春が口ずさむ     あかい茎が四角いこと…  座布団の多きこと

 

  畦のホトケノザ   薺ナズナもペンペンと調子をあわせる 
  水路をのんびりと流れる春のくも 

 

 春の土   萌えだす緑    蕗の匂い

 

  おもたき枇杷を抱く… 頃に  ほんとうの春が顔をだす

 

 

 

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春の雪

2011-02-19 | こころ模様

  このあたりは 淡雪ばかり  それでも歓喜して  (県立近代美術館 2月15日)
  雪だるまのてっぺんに白い鳥が留まっていた 

       天金の書をかがやかす春の雪       朱鳥

  雪に反射するひかり   そのひと条は天金を照らし… 
    鮮やかな印象が 心を衝いた 
 
 

  春のひかりが 斑雪(ハダレ)に影を落とし 

 

 

 淡雪を あたたかく溶かしていく
  芋虫 ゴロゴロ・・ 

   さて お立ち会い…    白と言えば クロなので   

  

   冬が穿く沓かとみれば  嘴太き…    やっかいな黒さん
 
  おもては 濡羽  墨色  漆黒で   中味は緋色
   黒といっても
     青味に赤味  茶目っ気もまじる   ビニール袋も屋根の上

   

 

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近場の梅見

2011-02-16 | 自然や花など

  遊歩道の紅梅  蕊が長い

 

    紅梅と蝋梅が競いあう場所

 

  

   ならんで薄紅梅が枝垂れている

   

  

  小学校の横道で  白梅 薄紅梅 紅梅 蝋梅の四重唱がきこえます 

         -☆-

  
  別所沼公園

  

 

   見沼自然公園

 

 

 

 

 

 

 

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見沼自然公園

2011-02-14 | 向き合う

 ふたりで義母を訪ねたあと  冬枯れの公園を歩きたくなった
  寄り道をして 気持ちを整えよう
 冬の雑木林…  多彩な色は使わなくても 枯れ色の濃淡や 色調の微妙なちがいに心を奪われる。  静かにいのちはつづいている。
  

 

  ここで あかね色のマンサクに初めて遇った。 金縷梅マンサクと書くだけあって黄花が多い。  「縷」ルを調べると  麻糸、絹糸など糸の総称。 糸 とある。 
  公園に何本もあるなかのただ一株だけ朱い。  家のは濃いピンクだし。  
  暮れなづむ園内で赤は寂びて辰砂色にみえる。 古雅な趣のあるいろ、 やきものに映えるそのいろにおなじだった。  

     まんさくやかへりみて誰も居らぬ路    春一

   寒い公園に人影はない。   

   金の糸にふさわしい

 

  
  和毛をひからせていた猫柳

    

    仔猫の肌が透けている    きょうは特にいとおしい

   猫好きな義妹と  弟にも見せてあげたい  

 

       手術もうまくゆきますように……

 

 

 

 

 

 

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月に梅図

2011-02-13 | 自然や花など

  薄く切った大根のような昼の月…     

 

 



  

 いつものお宅の河津桜が 綻びはじめました

 

 

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私の影

2011-02-12 | 別所沼だより

     淋しさの底ぬけて降るみぞれかな    丈草   

 こんな日にも いらっしゃるだろうか  
    

 曇り 時々霙  粉雪・・・・・・のち雨   室温0℃  電気ストーブをつけて4℃
 
   さすがに釣り人はない  走るひとは絶えまなく

 屋根にきこえる霙の  かそけき物音  白い影

        

      追ひもせずに 追はれもせずに 枯木のかげに
      立つて 見つめてゐる まつ白い雪の
      おもてに ながされた 私の影を――
      (かなしく 青い形は 見えて来る)

      私はきいてゐる さう! たしかに
      私は きいてゐる その影の うたつてゐるのを……
      それは涙ぐんだ鼻声に かへらない
      昔の過ぎた夏花のしらべを うたふ

      《あれは頬白 あれは鶸 あれは 樅の樹 あれは
      私……私は鶸 私は 樅の樹……》 こたへもなしに
      私と影とは 眺めあふ いつかもそれはさうだつたやうに

      影は きいてゐる 私の心に うたふのを
      ひとすぢの 古い小川のさやぎのやうに
      溢れる泪の うたふのを…… 雪のおもてに――

   II 真冬のかたみに  Heinrich Vogeler gewidmet  (立原道造)

 

  ニオイスミレ

   
  坊やがつくった雪だるま

  
 来訪3名 
 建築家もいらした。 道造全集を全巻そろえている、 詩も好き。 堪能されて どこもかしこも絶妙の設計! ディテールのよさ。 緑灰色の窓枠による切り取り。 内開きのドア、道造のこだわり。
 帰ったらまた詩集を開きましょう…  お話は尽きなかった。

            

  家からここまで 徒歩にて40分。  途中、 かすかな薫りにその影をさがした。 沈丁花は蕾のうちから匂うのだろうか。 倒れた水仙もあった。
  午後 降り籠められて灯りをつけた。 詩人の部屋がいっそう懐かしい色になる。 
 ひとり… 雪の光跡を追うだけでもしあわせだ。 帰りも歩く。  一日は短い。
  きょうだけで 15103歩と出ている  

 

 

 

 

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冬が着る

2011-02-09 | こころ模様

  つかのま 白い条を引くように みぞれが降った

   淡雪の 円かなしずく     

 

 

  庭のチョコレートケーキに 粉砂糖をふりかけて   
   ジャーマンアイリスの芽が首をすくめる
    春寒し… 

   春が立って後の寒さを 「春寒料峭シュンカンリョウショウ」 と言うのだって
   春の風が肌寒いさま   峭はきびしいの意。 

                  -☆-

  歩きながら晶子の歌が 耳にささやく

  きのう  万葉講座で清川先生が引いてくださった 

     冬が穿く沓クツかと見れば嘴ハシ太き からすなりけり落葉の林…

   歌は午後の晴れ間をぬうように 頭のなかをくりかえし流れた

  教室では思い出せなかったけれど 「しあわせの栞」 清川 妙著 (主婦と生活社)の 第3章 暮らしのプロムナードで知っていた。 夥しい付箋の林を分けいるといつもこころが踊る。  徒然草の近刊も楽しみになる。

 

   公園のまあるい木の実が コロコロと  
     すかさず拾って持ち帰った

 

      


 鈴懸の実  
    別名 プラタナス 釦の木   幹は迷彩柄で

 

 丈夫な糸に繋がれてボタンと落ちてきた  やっぱり釦

   冬が着る…   コートの大きな釦でしょう 
     4㎝もある大玉の 
       

 

 

 

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春のかたち

2011-02-05 | こころ模様

 気になっていた銀座の デビアスビル   

 伊東屋をでてマロニエ通りに入ると見えてきた
  シュールなかたちの建物全体がプラチナの輝き  
   硬質ないきものが 美しい曲線をひるがえす   

    光に反射すると 真珠のようになめらかな色になった
    


 

  揺れる波のような動感   万朶の雫…
  盛り上がりうねり   そこを風が歌いながら昇ってゆく
 
     かぎろいの春にしなれば…

   陽炎のかたちして


 
       

 

 

 

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きさらぎ

2011-02-02 | こころ模様


    眠れねば香きく風の二月かな        水巴 

   二月の雲象カタチかへざる寂しさよ     多佳子


                     -☆-

    
  晴ればかりつづいたが めずらしく曇った。 昼頃は淡い光が雲間を透かしてみえていたが、 4時過ぎて鈍色の空から白いものが落ちてきそうなくらい冷えてきた。
  このあたり、 1か月以上 雨も雪も降っていない。 乾ききった大地や鳥のさえずりに春の予感はするけれど、 ほんとうの寒さはいつもこれからなのだ。

  去年は 二月二日が初雪。  二月一三、 一八日。  三月十日 霙。 そして最もおそい雪が四月一七日に降った。 どれも淡雪で大騒ぎすることもなかった。
  豪雪に見舞われる方たちの ご苦労はいかばかり…     

                     -☆-

    銀行の窓の下なる舗石シキイシの霜にこぼれし青インクかな    啄木

   霜を染める青インク…  はっきりした藍の 冷たい匂いがするようだ。 

  職場のペン先はスプーン形をしたのや Gペンと呼ぶのもあったと思いだす。 
  先端にインクをつけて 慣れない手つきで帳簿をつけた。 
   机を並べた友はもういない。 

  それからボールペンが流行った、 でも手紙用は万年筆を求め、 インクの色や匂いになじんだ。  油彩の匂いとインクの匂い。 どちらも好き。 インクの匂いに気持ちがあらたまる。 ボールペンの殴り書きをやめて、 きちんと書こうと思う。 
 溶き油の匂いがすれば背筋がピンと伸びて こころ踊るいろで全部埋めたいと願う。 
 

  冬の薔薇

     霜に遇い色の濃い冬薔薇   葉も花も深い色になった。  
  いつのまに  はや二月  春待つこころに待ったをかけて 

 

 

  

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