別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

昼の月

2007-02-26 | 別所沼だより

 


              冷たい空気のなかを歩いた   

             広重ブルーの空に  白く透き通った月がある 

     「あの月 大根みたいじゃない?  切り損なった薄切りの大根… 」    向田邦子

            上手いなあ  ほんとうに そっくり!      

         ゆくてに浮かんだ 昼の月   ペーパームーン

       

   (写真ではよく分からないので  あした 昼間の月を確かめてね)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黒と白のシンフォニー

2007-02-24 | アートな時間
  

    マネのベルト・モリゾを模写したのは4年まえ。 彼の微妙に変わるゆたかな黒の表現を真似する。 質感に苦心した。 ターバン風の帽子はオルセー美術館展で、喪のそれと知った。 
 原画の上品さにひかれる。  印刷には無い色を見て、 もう一度描こうと決めた。


    灰色と黒のアレンジメント第1番 画家の母の肖像  ホイッスラー
 

黒の色相や彩度にこだわっている。 バランスの良い空間と色と。 
 ここにはなかったが、対極の色を主題にした絵もある。 日本趣味も窺える 白のシンフォニー№2 ホイッスラー。

 好みのグウェン・ジョンを思う。 彼女はホイッスラーに学んでいた。 黒猫を抱いた若い女バスケットの桃など 手紙の絵もある。 独特の抑えた色づかいは ホイッスラーの教えに基づいている。 微妙な色の変化や調和をたいせつにした。

  黒にこめる画家の思い、鋭い感受性をもって描かれた絵にすっかりうなされている。 瀬戸黒も、志野の白も、 おなじ雨の日に鑑賞した。 
  他の作品はこちらで  №1   №2

    模写はこちら  表情も硬いですね  

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

誰が袖

2007-02-23 | アートな時間


  志野と織部-風流なるうつわ (出光美術館)を見に行く。  雨。 思った通りすいている。

  上写真       「重要文化財 鼠志野茶碗 銘 峯紅葉 桃山時代」
 この色、 風合い たまらなく好き。 亀甲の文様も絶妙の配置、 顔を近づけじっと見つめる。 縁のカーブも柔らかく箆で削ったあとが味わい深い。 門外漢にも美しい量感が分かる。

 少し先で 鑑定団でおなじみのN氏も鑑賞中。 あっと声をかけそうになるが、やめます。  

   案内により とくに器の形や文様に注目する。 
 四方形、 菱形、 扇面形、千鳥形。 州浜形などスケッチした。 
 模様には 亀甲、千鳥、網干アボシ、籠目、 草樹、車輪、橋、 結界を意味する門木や垣根 など。 

 楽しいのは 「吊し」と呼ぶ干し柿が下がったような、しめ飾りのような。 瓔珞ヨウラク、枝垂れ、揺らぎなど。 それらは着物の柄にもなっている。 絵巻や屏風のなかにも発見する。 
            -☆-

 下の写真  織部千鳥文誰ヶ袖形鉢  桃山時代   (絵はがきから)

   誰が袖 が気になって、 さっそく調べた。 やっぱりこの歌
 
  色よりも香こそあはれとおもほゆれ  たが袖ふれしやどの梅ぞも 
           古今・春上  

  室町時代、この歌をもとに名づけた匂い袋 「誰が袖」が流行ったそうだ。 
 片袖を忌むことから、二つを長い紐の両端につけ、 着物のなかを通して両方の袂に入れていた。 

 深いみどりの淵に 柳が揺れる 千鳥が遊ぶ水面  この誰が袖に惹かれます。
 匂い袋の形からうまれた 誰が袖形。 その風雅な趣。   

 大胆で自由な造形、 歪みや奇抜な意匠にあこがれた。 温度が決める黒織部や黄瀬戸などにふれ 刺激を受けた。  詳しいことは Takさんの頁へ、たくさんの 写真が見られます。 おなじことを書いてもこれほど違う…

    おなじ日 上野でベルト・モリゾにも会った

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

月の桂

2007-02-22 | 自然や花など


 先日 梅まつりに行った。 そこで開催中の陶器市も楽しみに。
 ここには紅梅、白梅、しだれ梅、野梅等約650本、 45品種もあるらしい。 馥郁たる香りに包まれた。 うす紅や白 ペールホワイト 青みがかった白など惹かれる。 それぞれに名札が附いている。 

 掲げた写真は  「月の桂」。  川端康成 「白金の弓矢」も、 とくに見事である。
 桂の木を調べたことがあった。 新緑の頃 丸い若葉が涼やかだ。 枯葉はお醤油の匂いとあったけれど、まだ確かめられない。 花も見たことがない。

  中国では、桂は月にあるといわれる想像上の木だそうである。 
 …月の 桂


  カツラ科の落葉高木。高さ約30メートル。樹皮は灰色、 葉は卵心形。雌雄異株。春、葉に先立って紅色を帯びた細花を房状につける。 実は円柱形の袋果。 木は軽く軟らかで加工しやすく家具や彫刻などにむいているようだ。

 
  かつら-おとこ -をとこ (桂男) 
 月に住むという中国古代の伝説上の男。 また、月を擬人化した異名。 かつらお… 辞書から 美男子 のことと分かった。 月の桂を忘れずにいよう。



   右は 「豊後」。  まるで

  
  梅の花夢に語らく
  みやびたる花と我れ思ふ
  酒に浮かべこそ 
           大伴旅人


 の風情。 
 花びらをふるわせ小雨のなか凛と立ちつくす。 晴天下より 愁いをおびていて好もしい。
  月影の美男子と ほろ酔いの美女に出会った。


  全国大陶器市で織部の皿を求めた。 翌日、 同じものをデパートでみたら3倍の値が付いていた。 ウキ・ウキである。 

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

風光る

2007-02-17 | 別所沼だより

         日なたにはいつも春がゐるのだ――
         この前 会つた貧乏な永遠もそんなことをいつてゐたつけ
         爪でもきらうね あれは何といふ雲だろう 日なたにゐると
         僕の額に風がきらめいて春をおいて行く    立原道造


                   -☆-


   建築関係のおふたりが  開室を待ちかねたようにいらしった

   興味深く こまやかに眺め 触れ 測る  図面を描き

   ハウスの芳しい木の香を   感嘆し心から愛でている

   若き詩人の設計と工夫を慈しむように  2時間近くもお話は尽きない

   真剣なまなざしに心うたれる   ガイドも至福のときを過ごした

                             -☆-

  ハウス前に植えられたヒアシンスの蕾も5㎝程にのびていた。立派に咲いてほしい。 
 「何ヵ月もかけてやっとひとつの花を咲かせるヒアシンスは緩慢な花火だ」 
                             「四季」風信子(一)立原道造  
   
  春よ来い 早く来い   曇りがち、 外の寒さが身にしみた一日。 

                

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夜べの雨

2007-02-14 | 別所沼だより

          土岐善麿 訳

        春あけぼのの うすねむり
        まくらにかよう 鳥の声  
        風まじりなる 夜べの雨
        花ちりけんか 庭もせに  

 この やわらかな訳がすてきである。 流れるようなリズムがいい。
 雪も降らなかったのに もう春一番が吹いたそうだ。 このあたりでは、さほど実感もなかったけれど。
 昨年よりずいぶん早い。 さぞかし花も散ったことでしょう。 
 
       「春暁」  孟浩然

        春眠不覚暁
        処処聞啼鳥
        夜来風雨声
        花落知多少

 やはり、 夕方つよい風に混じる雨の音を聞いた。 でも、間もなくやんだ。
 ニュースでは 春の嵐がわるさをしているらしい。

     いつかまたポケットに手を春うれひ     万太郎


コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

繋がる楽しみ

2007-02-12 | アートな時間

即位直後の乾隆帝 4年程まえ。 中味より、 意匠が気に入って香港の空港で買ったジャスミンティー。 この肖像がずっと気になっていた。

 昨日 NHKTV 夢の美術館 世界の至宝 工芸100選を見る。(再放送らしい。 後半は12日)。 
 なかに「竹糸纏枝番蓮チクシテンシバンレン 多宝格圓盒タホウカクエンコ」が出てきた。 台北の故宮博物院で見逃したもの。 図録で確かめる。

 小さな、しかも精緻な玉を収める箱である。 25歳で即位した乾隆帝ケンリュウテイ、 10回に及ぶ遠征で敗れたことは一度もない。 100万点を超える文物を収集。 以下に NHKTVより引く

 乾隆帝は戦いに明け暮れるなか30代半ばで、 皇后と、 ふたりの王子を相次いで失う。 最愛の家族を亡くしたかなしみ、 小さな宝物への思いは一層深まっていく。
  高さ24㎝の筒の(多宝格は開閉式で閉じると円柱形、 逆に閉じると方柱計になる 右写真)外側表面は数百本の竹で覆われ、 精巧な細工がほどこされている。 いくつにも区切られた、わずか5㎝の棚は回転し、 お気に入りの玉を収められる。 乾隆帝はいつ、どこでもミニチュアを鑑賞し、 ときに沈みがちな心を満たしていた。 

  まさに乾隆帝はジャスミンティーのお方であった。 ようやく解ったうえに驚くのは、以前書いたコオロギ入れも おなじ皇帝のものと知ったからである。

  豪華で美しい衣装に惹かれ 帰国間際のドル精算に、 何気なく求めたジャスミンティーはコオロギ入れへ、  さらに竹糸纏枝番蓮多宝格圓盒チクシテンシバンレン タホウカクエンコへと、 次々につながる不思議。  わくわくしてくる。 拡大してご覧下さい  
   

  

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

さがすのはよさう

2007-02-09 | 別所沼だより

 
         さがすのはよさう
           天が小さな部屋を与へたから
           ほんのしばらく 光つて消える
           この空を眺めてゐよう そこから
           かなしい色をうつす僕の眼に……      立原道造

  
             -☆-


   つぶやきの中に  つよい励ましを感じながら  何も浮かばない…
   続けていればこそ  シッポのような言葉も  湧いていたと
   過去ログのなかに元気をさがす
      はにかみながら  いちずな自分

 
  (2005.3.8) 新座市野火止の平林寺へ行く。思いつきの一人旅をした。芽吹きには早く、冬枯れの梢は色彩に乏しい。そして平日、この季節は人もほとんどいない。


 松平信綱公墓所の白梅にやさしく迎えられる。 いい香り! 花の雄蘂をじっとみつめる。


 『記念すべき日である。彼は梅の花を見た。梅の花の雄蘂を見た。
……
 梅の花の雄蘂を見るのは生れて初めてだった。 彼等は一本一本が白金の弓のやうに身を反っていた  雄蘂の弓が新月のやうに青空へ矢を放つた
                 (川端康成全集 第21巻「梅の雄蘂」新潮社版)

 

  風もなくぽかぽか陽気、松籟の代わりにおびただしいカラスで心細くなった。気をとりなおし
 国木田独歩の武蔵野を開く。
 落葉林の美しさはツルゲーネフの「あひびき」からも引用されている。こまやかにそれをなぞる、体感する。 すばらしい時間。

   
遠い物音がくぐもり聞こえる。  小鳥の高い声がひびいた。  
  独りだからいい!    きょうは。    

   
            -☆-


   ちかくの梅はもう満開だ。  季節の先取りに追いつけない 
  
 ゆっくり さがす。  凛々と 梅のおしべ…  
    

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

春の音

2007-02-02 | 別所沼だより

               浅き春に寄せて          立原道造

              今は 二月  たつたそれだけ
              あたりには  もう春がきこえてゐる
              だけれども  たつたそれだけ
              昔むかしの  約束はもうのこらない

              今は 二月  たつた一度だけ
              夢のなかに  ささやいて ひとはゐない
              だけれども  たつた一度だけ
              そのひとは  私のために ほほゑんだ

              さう!  花は またひらくであらう
              さうして鳥は  かはらずに啼いて
              人びとは春のなかに笑みかはすであらう

              今は 二月 雪の面オモにつづいた
              私の みだれた足跡…… それだけ
              たつたそれだけ―― 私には……

                                                         

      -☆-

 春の足音が聞こえる 足踏みしながら ゆっくりゆっくり近づいてくるようだ

 ことしはまだ  雪が降らない 

 別所の写真をたくさん写したけれど 雪景色はこれ一枚 (2006.2.7)

 

    天からの手紙 届くだろうか   沼蛙は カメラ片手に楽しく待っている 

                                           -☆-

   「立原道造のヒアシンスハウス」   暮らしの手帖  26号  2 ・ 3月号に
  詩人の夢みた週末小屋  小さくて愛らしい佇まい… と紹介されています 18p~23p

       

コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする