別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

白と光と

2006-10-25 | 別所沼だより


     20世紀の名住宅物語 第2回「埋め込まれた記憶~ル・コルビュジエ サヴォア邸~」 

   フランス・パリ郊外  森の中の白い建物は 宇宙船のようである。パリの自宅は厚い石の壁に小さな窓、 日中でもうす暗い、 息苦しさを感じていた。
 週末はポワシー村の別荘へ。   まぶしい光がふんだんに取り入れられた。

 ル・コルビュジエが75年前につくったサヴォア邸。  円筒形のガラスの壁を半周すると、車に乗ったまま家の中に入れる。    
     

    


 キッチンはとても使いやすくできている。流しの脇に、 洗い物をおくだけですぐ乾くよう、水きりの格子がはめてあった。  緑とともに… ため息が出る。  いすに座っていると、 ここが家の外なのか内なのか、 わからなくなるに違いない。  コルビュジェが追求したのは、 光によって演出される空間、人は次々と変化する陰翳を目の当たりにし、それを呼吸する。


  ドアを開けるとうつくしい螺旋階段、 あるいはスロープをすすむ。 一歩一歩、 歩くたびに景色が変わる。 のぼるうちに、開けていく視界が魅力だ。
 (その造形自体が視覚的に実に誘惑的な動きを内に秘めている。


  コルビュジエは住宅は住むための機械である と。 光と緑、 曲線、 造形の美しさ、 まさに住む人が愉しむための住まいに惹かれた。 ル・コルビュジエがこだわった螺旋階段、 渦巻き・ 中心から外側へ拡張しつづける展示室、 スタートより 無限の広がりは 上野・ 国立西洋美術館に。


  彼はドアがつくり出す空間の意外性に着目。 ドアを開けたときの驚き! ドアが導くシュルレアリスムの世界へ、 と、 誘う。
  「住むための機械」 には 愉しさがふんだんに盛り込まれる。 視覚的リズム、 建物は五感に訴えてくる。 

 
  参考・引用 「再発見/ル・コルビュジエの絵画と建築」 林美佐 彰国社 より
  写真 NHKTVから
 

    検索すると 建築家の詳しいサイトがありました。

 

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落水荘

2006-10-24 | 別所沼だより
 羊歯のかたわらでホトトギスが寂しげな花をつけている。 今日も一日、寒いくらい降った。

  斯くの如く秋の時雨に濡れ申す    虚子
  秋時雨ズボンも細く濡れ果てし     汀女

 さながらの外出だった。 時雨とともに暮れる秋。 夜は楽しみにしていた番組を見る。

  20世紀の名住宅物語 
  第1回「浮世絵の啓示~フランク・ロイド・ライト 落水荘~」 
 1937年竣工。 70年まえ、浮世絵を6000点以上も収集したフランク・ロイド・ライトもジャポニズムに魅せられた。 のちに帝国ホテルの設計もする。 
 「滝を眺めるのではなく、滝とともに暮らす」 滝の上にエドガー・J・カウフマン家の別荘を建てる。 奇抜な発想にびっくりだ。
 明るいアプローチから、ほの暗い玄関を抜ける。 一階のリビングに入った途端、目の前が開け果てしなく広がる。 豊かなみどりや明るいひかりに、客は思わず息をのむ。

 ことさら天井を低くしたのは、その圧迫感から 視線を外に向かわせることを意図した。 広々とした居間、 開放感のある窓、 その周りはぜんぶ森だ。

 自然と住まいが渾然とするデザイン。 「自然はただ眺めるものではない。 自然とともに暮らすことだ」 
 こころよく響く。
 渓谷の岩盤は、リビングの床のいちぶとしてあるがままに組み込まれ。 室内にちりばめた日本趣味もさり気なく。 もてなしの「ザブトン」 と呼ばれるクッション。 暖炉のそばに自在鈎を模したオブジェ、 塗りの大きなやかんが下がっている。 回転させると暖炉の真上にきた。 しかし、使ったのはたった一度だけ。 漆器がはげるから… 

 夫人の部屋には広重の「堀切の花菖蒲」が飾られていた。
 また、ガラスしたの階段から つまり家の中から水辺に降りられる。 蛙庵には願ってもないことだ。
ガラスしたは階段
      
 


 





 自然と一体になる住まい…  人間もまた自然の一部  
浮世絵に習う夢の住まいを愉しんだ。    写真は TVから

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予期せぬお客

2006-10-21 | 別所沼だより

 メタセコイアの衣更えがはじまっていた。 色づいたのや、葉が落ちてしまったのもある。 と言うよりは、アメリカシロヒトリにやられたのか。 道、ベンチ、幹、あらゆる所に蠢く虫。 ぱらぱら降ってくる始末だ。 身震いしながら通る。
 雨戸を開けると、予期せぬ客が待っている。 桟のかげで蛹になったり、数匹かたまって隠れているのもある。 最初から掃き出したり落としたり大わらわだ。 
されど、爽やかな晴れ。 ボランティアも3度目で、ガラス戸の特殊な鍵あけにも慣れてきた。 吹き抜ける風もきもち良く、来場者でにぎわいそうだ。
 きょうもふたり。 ご一緒したのは、 まだ小さなお子さんがいらっしゃるという若い奥さん。 ご主人に預けてガイドに向かわれる、その向学心に感動する。 子育てに振り回されていた我が身を思うと、アクティブなこの方に拍手を贈った。 
 ノートに建築の方から申し送りがしてある。「朝来ましたら 窓台と柱をから拭きして下さい。10年後には すごく光って美しいものになります」 10年、20年後。 ハウスはどのように変わっていくのだろう。 楽しみである。 

 吟行のグループ20名ほど見かけ期待をした。これから何カ所も巡るそうで、そのうちの3名が見学。 どうぞ良い句ができますように!
 ・堀辰雄や立原道造にあこがれ続け堀さんと懇意にしている、ご本人は病につき代理で見学。 おだいじに。 パンフレットを差し上げた。
 ・記念館は何度も見ている、そちらでヒアシンスハウスを知った。 感無量!
 ・毎日ここを通っていたが、初めて気づいた。2年前に出来ましたとご説明する。 
・休憩所?の質問あり。   

 見学者22名。 かち合うので応対に追われる。 
 メタセコイアの葉が水面を覆っている。 腐らないで底に堆積しているらしい、重機が入って採るのだろうか。 湖沼浄化試験、護岸工事の柵は当分はずれそうもない。 
   
             -☆-

  2006年11月3日 (金・祝) 10:30~18:00
  「ヒアシンス夢まつりⅡ」(竣工2周年記念事業) ヒアシンスハウス前庭、観覧無料
1 「和紙に描くおはなしワークショップ」
2 ごあいさつ 「ヒアシンスハウス竣工2周年―市民文化のシンボルとして」
  北原立木 (ヒアシンスハウスの会代表)
3 「水引草は風に立つ-オカリナ演奏と立原の詩のひととき」
4 「すると庭が騙されて小さな薔薇の花をつける」 (立原道造「暦」より)
5 ダンス・パフォーマンス「夢を踊るⅡ」(仮称)
6 フィナーレ:「交流・懇親パーティー」     詳細はこちら


 立原道造全集 全5卷 筑摩書房 A5変形判・上製・貼函入・平均680頁 
   2006年11月8日発売   第一巻 
   2007年3月22日発売   第二巻   
    以降、中三ヶ月あけて刊行              
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反する魅力

2006-10-17 | アートな時間
         鏑木清方 「曲亭馬琴」 

 繊細、精緻な表現のなかに、ほのぼのとしたものを感じる。柔らかな明かり、しずかな陰翳をまとい、なつかしい雰囲気と詩情を演出している。

 晩年、失明した滝沢馬琴。 長男の嫁おみちに八犬伝の口述筆記をさせている。文字に疎い彼女に、仮名遣いから教えた。馬琴は絵図を示し説明する。一心に聞くおみち、その横顔を照らしだす穏やかな明かり。 馬琴の表情、手の皺。凄み。

 目をこらすと、行燈のへりに思いがけない読者がいた。 細い足、髭もそよろにつかまっている。竈馬の透けるからだ。 蝸牛の文鎮、墨の文字 奥で遊ぶこども。あやとり。 藍の着物、柄。鼈甲の簪、結い上げた髪。丸髷。
その毛より、さらに細いワイヤーのピンが跳ね上がっている。 細かい! どきどきする。
 畳のめくれまで丁寧に描いてある。 うしろに、すり潰すための道具「やげん」も見える。 大きい画像

 朱い灰皿、行燈の油いれ、文箱の内側、絞りの三尺(帯)、袂の鹿の子、さび朱が座敷の奥へ誘っていく。 稚児まげのかざりにも。 色を探すだけでも楽しい。

 文学的な絵だ。新派の舞台に入ってしまったかのような臨場感。 さながら観る者も、おなじ座敷で、息をつめ読本作者の話を聞く。 
 清方は「思いが深いぶん語りすぎた、絵画のなかに文学がはいりすぎた」 しかし後悔はしていない、むしろ語り終えて満足している、と言っている。


   
 おなじ日、 モディリアーニ、ブラック、ピカソに魅せられた。 簡潔、シュールな世界。 何か分からない部分がある、そこが良い。
 色の対比をたのしみ、想像し遊ぶ。 自由になれる。 
 
 相反するものを観た。 どちらもいいし好きである。

  ジョルジュ・ブラック 「家と木」
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都市という書物

2006-10-14 | 別所沼だより
  ハウスガイド・ボランティア養成講座 第3回
「風信子都市論 ヒアシンスハウスを巡る浦和の都市論」
 ~道造の時代(1937)の浦和の街を読む~  
             (講師 山中知彦氏 建築家)

 都市という書物の読み方、これだけで惹かれた。なんと! 都市を書物と見なした。 単語は建物、川、道。文脈としての都市。 時間、空間、人間。いつの時代、どんな環境・雰囲気のところに、どういう人たちが生活していたか。文体として都市を見直す。
 最初から面白そう、興味もわく。

 都市は書物、講師の専門的な話もとくに面白い。都市モデルスタディ。
1時間、講義のあと、街に出て2時間歩いた。
 浦和宿。狭い間口、細長い町家。今歩くこの道は、江戸時代からある。古地図に重ねても、変わっていない。 
 毎月六回にぎわった浦和宿二・七の市場跡(十返舎一九「代シロものを 積み重ねしは商人アキウドの おもてうらわの宿のにぎわい)
 浦和宿本陣跡。 御殿山、今は公園、以前裁判所があったところ。 

 鹿島台に住んでいた画家と 沼のほとりの新鋭、鬼才!(四方田草炎、須田剋太など)
 ひょっとしたら道造は、 神保光太郎の存在と、別所は不思議なところ、
何か分からないが エネルギーを秘めた人たち。新しい芸術を目指すひとも集まっている。 これも、別所に惹かれた理由ではないか。

 「都市の歴史、その記憶、そこから今の自分も認識できる。 (知ること)人生の豊かさが違います… 」 講師の言葉が印象にのこる。 
  快い疲労感に、知る楽しみ。 

 5時、別所に戻った。 あたたかい灯りがついている。 良かった!
 昔々、この辺りはね、漆黒の闇、葦が生い茂り、きこえるのは風の音。妖気さえ漂うところ…   
 浦和の歴史 より詳しいサイトはこちら
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おめでとう

2006-10-09 | 犬のブロンコ・ダン

 帰宅するかぞくを、かならず庭石のうえで迎える彼女は、家族の、とくに義妹に愛されているマーヤ。 いつも傍らにいる。
 真っ白な毛並み、ブルーの瞳も若々しいでしょう。 ことし100歳になるマーヤが、歯槽膿漏の治療で、全身麻酔のため1日だけ入院したらしい。

 院長より、当院で最長老の患者であること。ここまで元気にこられたのは、環境もよくストレスが無かったからでしょう。 今後も大事に育ててくださいと祝福をうけた。
 実際のところは、7年前に蚤除去の処置をしたくらいで、健康診断などのCareをしてこなかった。今回はじめて3種混合をしてもらう。 血液検査も正常、高齢にしては奇跡的に良い数値で年より若い。 
 
 社団法人 日本動物病院福祉協会より表彰状をいただいたのだそうだ。
 「あなたのマーヤちゃんは 永年にわたりよき伴侶 また家族の一員として生活してこられました 本協会の推進するHuman Animal Bond(人と動物の絆)の範としてここに表彰します」
 Hさんの喜びと、マーヤの美貌と… 100歳のお祝いと… 家族の幸せと… いろいろ欲張って、記念に写真のUPをします。
 おめでとう! マーヤ ☆☆☆☆☆・・・…    by rugby
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秋思

2006-10-04 | 自然や花など
    
   松脂マツヤニのにほひのごとく新らしくなげく心に秋はきたりぬ
   クリスチナ・ロセチが頭巾かぶせまし秋のはじめの母の横顔
   食堂の黄なる硝子をさしのぞく山羊ヤギの眼のごと秋はなつかし
             
                     北原白秋 桐の花より

            -☆-
 
糸ススキの群れ フジバカマ ヒガンバナ コスモス… 郷愁を誘う。
  爽やか、でもどこか寂しげな秋を 胸の奥にしまっている。 
 干し草のあまい香り  ヤギの乳  竹藪の夕陽  流しのふやけた米粒 
 モズの声 くずれた柿の実  栗の毬イガ    


           -☆-
     
      花の教  クリスティナ・ロセッティ
                    上田敏訳 海潮音より
   
    心をとめて窺へば花自オノヅカ ら教あり。
    朝露の野薔薇のいへる、
    「艶なりや、われらの姿、
    刺トゲに生ふる色香とも知れ。」
    麥生ムギフのひまに罌粟のいふ、
    「せめては紅きはしも見よ、
    そばめられたる身なれども、
    驗ゲンある露の藥水を
    盛りさゝげたる盃ぞ。」
    この時、百合は追風に、
    「見よ、人、われは言葉なく
    法を説くなり。」
    みづからなせる葉陰より、
    聲もかすかに菫草、
    「人はあだなる香をきけど、
    われらの示す教暁ヲシヘサトらじ。」

 花それぞれの主張を楽しく思う。 目をこらして見てみよう

※クリスチナ・ロセッティ  イギリスの女流抒情詩人
  あの画家で詩人の ダンテ・ガブリエル・ロセッティの妹!
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花の郷から

2006-10-01 | 自然や花など

           

  花の江の郷で あざやかなガマズミの実が迎えた。  紅葉まで人影もまばら  ゆっくり散策したい。 

                 

   フジバカマに白花もあること    初めて知った 

   彼岸花の道  はるかな黄色は 女郎花のむれ   



  をみなへし 秋の野風ノカゼにうちなびき 心ひとつをたれによすらむ 古今集    

           

 ススキ、コスモス、吾亦紅、フシグロセンノウ、スイフヨウ、ツユクサ、シオンのあわい紫 昔なじみが新鮮にうつる。 百日草の花の裏がわ アサマフウロの紅いスジ、 刺繍糸でかがっている。

     

 左 後ろでチラチラする黄色い花は キバナアキギリ  手前は 田村草だろうか
 右 秋明菊 ・ 秋冥菊 

 

 ガマの穂にインディアンレッド。 睡蓮がたった一つ咲いている。  大きなウシガエルとちいさな雨蛙。 

 ぬれた黄みどりの色、 秋の風。 いつもお忙しいあなたにおとどけします 看護のあの方にも… 

 … 遠くの君たちへも  聞かせたい  とどけたい 秋の詩ウタです。  

  栃木県 花之江の郷 詳しくはこちら  

     
  
   ↑この花は百日草と聞きましたが 調べると違うようです。 どうぞ教えて下さい

 

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