ずっと気になっていた。 道造のパステルという詩。
パステルの鮮やかな色、やわらかく優しく哀しいまでに色褪せない絵に惹かれる。
パステル画を描いたことはない、しかし描くところを見たことがある。
まず用紙がちがう。凹凸があり、紙の表面が強くなっている。クレヨンみたいな顔料の粉を固めたもので描く。チョークのようにもろく、粉っぽく崩れる。それを指でていねいに紙の目に押しつけ、刷り込むように伸ばしていた。混色はできないので濃淡や色調など微妙にちがう色が、何十色も必要になる。それで、緑だけでも200種類も持っていたのだ。
パステルは摩擦によって剥離しやすいので、フィクサチーフという定着スプレーを掛ける。用紙には一枚づつパラフィン紙がセットされ、絵を保護するようになっている。
作品は 淡くやわらかな風合いで光沢があり魅力的である。
道造はとくにパステルを好んだらしい。そのほとんどが中学時代の絵。色合いも、こころもやわらかく美しい。
パステルは やはらかし/うれしかり ほのかなる 手ざはりは/うれしかり パステルの 色あひは。
パステルを手のなかに遊ばせ、かおったり、なぞったり巻紙の色名をたしかめている、しあわせなひとを思った。
写真は 立原道造記念館パンフレットを撮影
無題 「飛行船」 1929-31年頃