別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

鳥は…

2006-05-30 | 別所沼だより
 別所に着くと すばらしい声が響きわたります。
 カッコウー カッコウ。 カッコウ カッコウー、 高らかに歌いあげています。  
「忍びたる郭公ホトトギスの、遠く、そら耳かとおぼゆばかり…」に非ず、すでに自信に満ちています。 己がうたに酔いしれる風情です。 季節のうつろいを見過ごしてきた蛙へのプレゼントでしょうか。

 森のカレーラスはヒマラヤ杉の梢で さかんに繰りかえしています。ちゃっかりオオヨシキリに子育てをまかせ、ひまな閑古鳥さん。 

        うき我をさびしがらせよかんこ鳥   芭蕉
 
        郭公や水の香みてる木くらがり    梅の門
 
        樹海なる郭公雉とこゑかさね     春藻 

 6月になりぬれば、音もせずなりぬる。すべて言ふもおろかなり…  ようやく、間に合いました。
 
高さ30mはありそうな樹のうえです 印を付けましたが見えるでしょうか

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散歩みち

2006-05-28 | 別所沼だより

   
 ひさしぶりの散歩道をいろどっていたのは箱根空木。

 白と赤が同時に咲くとおどろいた。 はじめて見た日、 rugbyも一緒であった。

 つぼみのときは白で、しだいに赤に変わっていく。 

 スイカズラ科 タニウツギ属、 海岸近くにはえる とあった。  空木と聞けば谷空木 (スイカズラ科・タニウツギ属)、梅花空木 (ユキノシタ科・バイカウツギ属)の花もうかぶ。 梅花空木は清楚で気品がただよふ白。 boa!さんのところで見ていた。 なまえは似ていてもそれぞれちがう、 千代紙にでもなりそうな箱根空木である。  

  雨上がりの遊歩道、 藤棚の向こうに大きな犬がいく。 若い犬が主人にあわせノンビリ歩いていく。 振り返って一枚。 

 毛並みを光らせ 尾をユラユラさせ追い越していった。    まぶしそうな視線を向けて…

だまって話した。 
 少し元気が出たよ。

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スライドショー

2006-05-15 | 向き合う

 5月11日に亡くなった母の通夜は、 5月14日。 奇しくも「母の日」になった。 白のトルコキキョウ、白百合のあいだに、紅紫に白い縁取りのカーネーションが目をひく。 感謝をこめ手向けた。
 今年のつるバラを見ることなく逝った母。棺のなかに読みかけの本や写真、ちょうど咲きはじめたウェスターランド、庭の赤や黄、白、紫の花もおさめる。 

 家族それぞれのメッセージも添えた。
「どんなときも 困難にあうたび勇気をあたえつづけてくれました 母は私の太陽でした」 「とても大きな心を持ったつよい人でした」 「いつも笑顔で優しく 学ぶことがたくさんありました」 「いつまでもおばあちゃんのあたたかさを忘れません」 「いろいろとお世話になりました 想い出がいっぱいです」 「どうぞ安らかにお眠りください」
 それらが ひ孫による似顔絵を囲むように並んでいる。

       -☆-

 介護の合間、いきいきとした写真をCDに入れていた。古いものはスキャナーで取りこむ。 病床の母に見せるためだった。 一枚一枚、結構手間をかけて。 旅先や、むかし暮らしたところ、父の写真など。 美容院へ行ったばかりをよく撮っていたから、素材はたくさんあった。

 「今日はいいね おしゃれもすてき」  何気ない表情がでるように心がけて撮っていた。 気分が華やいでいるとき、 好い雰囲気のあるときがチャンスである。
 構えた記念写真などいらない。 

       -☆-

 会場に設備がないといわれ諦めモードの蛙。 プロジェクターにノートパソコンさえあれば映せる 「ぜひやろうよ。 よく編集されてるし。 機器がなければレンタルしてでも…」 「お母さんが喜ぶような会にしようよ」 弟はますます乗り気だ。

 結局、家から液晶32型モニターを持ちこみ CDからiポットに蓄えたものを会場で流した。母をかこむ親戚、知人。 故人を偲びながら、若い日の自分たちにも出会うことになる。 あかるく愉しかった後半生が 鮮明に再現された。 

 母にふさわしい。 かならず喜んでもらえると、 技術屋の喪主がこだわったスライドショーはとても好評だった。 112枚の彼女は どれも陽気に輝いていた。

 亡きひとも 愉しんでくれただろうか 

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記録

2006-05-11 | 向き合う

 午前訪問看護あり  IVH 40→50/hへ 抗生剤点滴 痛み止めはいる 坐薬の併用
 血尿あり 導尿チューブ内に血栓 膀胱洗浄
 酸素濃縮器5リットルに変更 下肢・腹部に痛み 向きを変えるのも二人がかりだ

  明日の訪問入浴サービス 断りのtel

 午後、痛み止めが効きすぎている いびきをかいて目を開けたままだ 寝ているのは母じゃない 
 笑顔は写真の中 陽気でやさしい顔をした母 センスの良いおしゃれをし 楽しそうに笑っている パソコンのモニターをながめては ほっとする自分 目をそらすわたし 

18:00  手指が冷たい  爪も白い 足をさする 温湿布をする 夕方から血尿
 心配になり 看護ステーションへtel相談 

18:30 訪問看護 チアノーゼ 心拍150  酸素吸入 鼻よりマスクに変更  体内酸素 測定不可

  
19:00ころ Dr往診あり 苦しそうな深い息をする 荒い呼吸を和らげる静脈注射 
 
  弟の携帯に連絡するが 移動中  mailを打つ 直ぐ連絡ください
20:00ころ 向かっていると電話有り そこから 2時間はかかる

 感情より看護の目  冷静に よく観察する  次第に呼吸が静かになる 息づかいが聞こえない 何度も近づいて腹部の動きを目で確かめる 胸が高くなったり低くなったり… 安堵する 

 息がある…  
  S君 今何処  早く!      

 尿というより鮮血がでている 
  なにがあっても落ち着くこと  きちんと処すこと 交代で蝦蟇も見まもる 小さな息がときどき止まったかに見える 間隔不定 

20:30 脈を取る 胸に手をあてる 鼓動がない 鼻に手をかざす 息を感じない
 看護ステーションへ連絡

 看護師により処置があり 医師も到着 21:38 確認した
ふれればまだ温かい やわらかい 細くなった足 看護師とともに 身を清め 旅仕度に着替える  ありがとう おかあさん   

22:40 弟到着

 いつもの明るい顔にうす化粧をし ほお紅を入れた 穏やかないい顔をしている
  おかあさん お疲れ様でした やっと痛みがなくなったね 
  
 こんなとき 悲しさよりも きちんとできたかだけ考えている 母が恥ずかしくないように… そのことだけ願った  自分が自分でないような 空虚な時間が過ぎる  訪問看護に出会い 自宅での看取りを可能にした 家族の支えにも感謝している 




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だーれ

2006-05-10 | 向き合う

 
 朝、問いかけに目をあける 「これ だぁーれ?」  「a… s… ko…」
 夢うつつなのだろう   なにが 欲しい?
  「美味しいお茶と…」 「…桃と…… 」   昼頃より 応答なし

 きのうは  「いっぱい世話になったね…  よくやってくれた…」 そう言った。 はっきり聞こえた。  それから 
あえぐように かすれる声で 「あのね… …。。。。。」 「。。。。」 よくわからない。

「何か仰ってますね」 看護師が言う。 耳を近づけてみても聞き取れなかった。 聞きとれないが口を動かし、 確かに喋っている。 

 口腔を、 湿ったガーゼで拭いた。 しばらく口から摂っていない。 まえに飲んだ顆粒状の薬が舌にはりついたままだ。
 ごめんね、 おかあさん  あーん して…  口をもぐもぐさせている 
お茶を飲むつもりだ   点滴だけで喉が渇いたのね  

 なにもあげられなくて ごめんね 
       とても とても 悲しかった

 

 

 

 

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みーっけ!

2006-05-07 | 犬のブロンコ・ダン
 
  アルバム整理をしていたら またまた見つけたよ 

   rugbyどうしてるかなあ…







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病室

2006-05-06 | 向き合う

 訪問看護有り ゆうべ咳き込んだ 痰が絡む  
 往診も有り 熱37度7分 肺炎を起こしかけている  あわただしく酸素濃縮器が運ばれる 毎分2リットル 後部フィルターを週1回洗うこと。 乾燥予防のため装置のカップに、精製水を上の水位まで入れておく。 酸素ボンベ…停電時切替 手動にて 簡単な説明をうける。

 ついで 吸引器使用の指導。 吸引圧をかけた状態で鼻孔よりカテーテルを挿入…… 圧をかけゆっくり回しながら吸引する。 看護師のまえでは出来たのだが、ひとりになるとうまくいかなかった。 粘膜に吸いつくこともあり出血しかねない。 やはりあわててしまう。

IVH 40/h 抗生剤も加わる
誤嚥下肺炎もあるので 口から飲ませないこと 
 にわか看護師蛙は、 緊張の連続。 消毒など怠りなく。 痛むときはオプソ10mlを飲ませる

 午後、エアーマットに交換 褥そう予防
 今日一日 家族以外で病室に入った人 業者を含め 延べ8名 

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露天風呂

2006-05-05 | 向き合う

 先週につづいて 2度目の訪問入浴。 元気のいいトリオはユーモアをかかさない。 看護師と介助のふたり うちひとりは男性。 
 スタッフのきびきびした連携で 苦痛もなく安心して入浴を愉しめる。

 「いつかこうなる… 見ておきなさい…」 母は帰ろうとする孫を、ひきとめた。
 おばあちゃんが恥ずかしいんじゃない と遠慮するが それは杞憂だと気づく。

 部屋には防水シートが敷かれ 2つになった深いボートのような浴槽を組み立てる。 車には大型の瞬間湯沸かし器があり 湯は玄関からホースを伝い、 部屋のボートに勢いよく流れこんだ。 と同時に 太い管を通して風呂場へ排水され、 あたらしい湯が追加される。 

 看護師が健康チェックをし、 点滴など付けたまま、 2枚のバスタオルでサンドイッチになった患者は、 3人がかりで湯船に仕掛けてあるネット上に運ばれ、 そのまま横たわる。 ネットは温水面すれすれに上下でき、 頭部や足許を傾けたり、 ジャッキを使って角度の微調整をする。

 「ああ、気持ちがいい…」 シャワーにない心地よさ。 お風呂の習慣は どんなときも無くせない。 「よかった よかった!」と唱和がつづく。 明るい声掛け、ジョークをなんども聞いた。 
 「喜んでいただけて良かったです。 そう言っていただくのが一番うれしいですよ  きょうは、お庭の花を眺めながら 露天風呂ですね…」   プロは手際がいい。 
 聞けば 起業は26年前、 県下初の認可をうけたらしい。 よりよいケア、無駄のない動き、研究され尽くしている。 家族も 納得して安心する。

 お湯につかるのは洗髪をふくめ正味10分あまり。 入浴前後に血圧や体温をはかり 着替えや爪切り 髪の手入れ、 かたづけまで入れると滞在は1時間ほどになる。

 男性から「お試しに いかがですか?」 と誘われ困惑気味の甥も、すっきりした祖母のようすをとても喜んでいる。 帰ったらみんなに報告してね

 家で介護する意義は大きい。 第一 病人が安心する。 子や孫にも人の終末を、介護を実感させたい。 そこから命の重さや尊さを感じとって欲しい。
 蛙と弟、 蝦蟇のせつなるねがいだ。

 

 

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リズム

2006-05-03 | 向き合う

 介護は間断なくつづく。
 連休の前後はもちろん、休診日も限りを尽くし対応してくれている。ありがたいことに。
 結果として、毎日往診や訪問看護がある。消毒や洗浄、加えて抗生剤の点滴。 術後の状況観察など。 彼女の部屋は、まさに最高の病室となっている。そのうえ家族が常にみつめているのだ。

 訪問時刻は 目安に過ぎない。 道路事情や外来とのかねあいなどある、大幅にずれこむ。 一日中待つことのみ、という日もある。 業者がマットレスの交換にと、それぞれが、いつ見えるか分からないので、他のことが手に付かない。
 おわれば医師を追いかけるようにしてクリニックへ。処方箋を取り6時30分閉店の指定薬局に間に合うように奔る。これは蝦蟇におねがいする。

 輸液のみ1週間ずつまとめて届けられる。 液体が 1・1リットルはいった袋はB4判くらいの大きさ。それが7個である。かならず冷蔵する。この大事な命のもとは、冷蔵庫の野菜室をかなり占領している。

 1日は こうしてはじまる
 6:00 輸液パックを冷蔵庫より出しておく 常温に戻すため
 8:00 水分のバランス 飲み物+点滴=排泄量 記録し 毎日測る 
 8:30 吸い飲みでお茶を飲ませ 栄養剤をすすめるが、この甘い味には飽きて受け付けない。以前は400mlも飲んでくれた。 ゼリーにしてブルベリージャムを添えると、やっと60g食べた。
 10:00~11:00 輸液パック交換 手指を消毒して慎重にやる。手順も慣れてきた
 12:00 好きなものを食べられるだけ 
 15:00 痛み止めを飲ませる
 
 9種類のクスリと鎮痛剤 オブラートに包み飲みやすくしてみた 
  エトセトラ… 寝るまでつづく 小さなしごと 

  10:00~11:00 毎週 火・金曜 訪問看護 
  15:00~18:00 往診 水曜 外来終了後 15:00~18:00の間
  16:00~17:00 毎週 金曜 訪問入浴サービス
 
 食事介助 水分補給 排泄処理 洗濯など。買い物はおおかた蝦蟇に頼むことにして。
昨日は管に気泡がたまってアラームが鳴った。 こうして蛙はまったく家のなかだ。

 たまたま庭へでると 雲の行進や、陽の翳りを追う。 すると心にうかぶ音楽が伴奏をつける。ガーシュインのサマータイムだ。見上げる一角が いつのまにパノラマとなる。 空想映画はつきない、いつまでも飽きずに見入る。 
 それすら眺めることができないひとに、つぶさに報告してみせている。

        -☆-

 5月3日 快晴、なんとすばらしい日射し。 ベッドを少し上げ、ヒンヤリした室内から初夏の陽当たりを見つめている。かつて、そこに立って感じた 暑いくらいの陽の匂いを想像している。薔薇の蕾をかぞえてた。 「紅ばかりだね…」 小さな声がぽつんと言う。
 花の満開を ぜひ一緒に眺めようね。 たくさん花瓶に挿して 目のまえのテーブルで見せてあげるからね。

 閑かだ。何も聞こえない、真空地帯に住むようだ。緑だけが照り返す部屋。まどろみながら、なにを想うのか。 とても知りたい、なにかしゃべってよ。
 自宅介護で一喜一憂した。じぶんの心のなかしか見てなかった。 黙してなお大きな存在が立ちはだかる、人生を教える。

 自分のリズムをつかみたい。取り戻したい。 こんなときにも考える  
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