別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

デルフト物語り

2008-08-28 | アートな時間

  きのう フェルメール展 へ行った。 長雨がようやくあがって、 青空に 「デルフト風景」 のような雲が湧いている。   
  丹念に描かれた絵は こころを惹きつけてやまない。 光と翳の効果、 空間の処理、 慎重に考え抜かれた構図。 入れ子のように奥へ誘い、 衣裳の襞や翳の豊かさ。 なにより色彩の美しさに息を呑む。 時間がとまる。 静謐な絵に心安らぐ。
 真珠の耀き、 ヴァージナルやリュートも聴こえそうだ。 思いがけず小さな作品でおどろく。  描くように観て 勝手な想像をめぐらせる。

            -☆-

小路  「小路」 1658~1660年頃
  画家がふだん見慣れている何とない眺めを、 考え抜かれた構図や色彩で豊かなものがたりにしている。 

  右の建物が画面を分割しそうだが。   薄曇りの光の中、 手をついて遊ぶ子ども、 刺繍をする女性、 露地を片付けるもうひとりの女性。 
 細部まで見ていくと、 窓ガラスの格子にも夏の陽が散らばる、  煉瓦の描き込みもこまやか。 赤や黄色の味付け。
 
 見飽きない、 壁やアーチの白がリズムを生んで 露地をぬけ 空き地を抜けて 遠くの空へと運んだ。  フェルメール・ブルーは、 甃に、木戸に、 女性のエプロン、 木立や屋根のうえに。 隠し味のようにこぼれている。 雲間の遙かなるウルトラマリンブルーもあった。 縦約54㌢・横約44㌢
  
   「リュートを調弦する女」 1663~1665年頃
  押さえた色合いのなかにも、 無量の、 いぶし銀のような魅力がある。 好きな作品。 手前に椅子の飾りだろうか。 無造作に置かれたものと。 不思議な陰が均衡を破る。  翳は微妙にトーンを変えて。
 外光に浮かびあがる人物が調弦の合間、 ふと見せる横顔、 耳飾りのまろやかな光り、 その頬にも触れてみたいと思った。  縦約51㌢・横約45㌢

リュートを調弦する女   


 「ワイングラスを持つ娘」1659~1660年頃      「手紙を書く婦人と召使い」1670年頃 

ワイングラスを持つ娘 手紙を書く婦人と召使い  

 (左) 赤がここにも効果的、衣裳・ステンドグラス。ターバン。 耳飾り。 テーブルのオレンジ、 黄色。 縦約78㌢・横67㌢
 (右) 机にかけてある厚地の布  壁の絵  一方からの光り  複雑に分けられる画面  それぞれの質感  床の模様  丸めた手紙  印章?など 約72・約60㌢  

ヴァージナルの前に座る若い女


 「ヴァージナルの前に座る若い女
         1670年頃 

  真贋取りざたされたが、 椅子の背もたれのウルトラマリンブルー。 1670年前後に流行したらしい髪飾りも決め手となって◎
 
髪型も似ている
 「レースを編む女」 に 制作年が一致。 キャンバス地の縦糸横糸のムラまでよく似ている、 絵の幅もほぼ同じ と。 縦約25・横約20㌢

 

 

 

  マルタとマリアの家のキリスト 

  前後したが 2階がフェルメールコーナーで、 一番目に展示されている。 珍しく宗教画  

  「マルタとマリアの家のキリスト」 1655年頃

   縦約160㌢・横約142㌢
  フェルメールの作品中最大かつ 最も初期に描かれた

 やわらかな筆致に惹かれる。 マルタを中心に。
 かいがいしく働く… 女性の美徳とされた。
 
  

 
 「ディアナとニンフたち」1655~1656年頃

ディアナとニンフたち修復前  ← 修復前

 月と狩りの女神
  神話による  

  明るい背景(空)は別人により後世加筆されたもの という。 今回展示された修復後の作品↓。 
 洗浄の結果、 背景は暗くなっている。 全体の色も落ち着いている。

修復後     

 

 

  
 

       -☆- 

 まず フェルメールの絵ばかり並べてしまった
 光の天才画家とデルフトの巨匠たち  フェルメール展 
 
 ほかに レンブラントに天才と称され、フェルメールの師であったと伝わるカレル・ファブリティウスや、デルフトに特有の技法を確立させたピーテル・デ・ホーホなど展示 (チラシによる)
  
     フェルメールに影響を与えたデルフトの巨匠たちの作品

  さらに  すぴかさん(1) (2) 、 Takさん(1) (2) のページに 詳しく載っています。 

  図録は買わなかった。 実物の色は 胸に留め、   絵はがき 号外など参考に

 

 

  
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ワイエス

2008-08-20 | アートな時間

             Andrew Wyeth  :  GERANIUMS 

       
           黙って …     心でみてみる  

 

              窓外に 海が見える

 

                赤は  たったこれだけ

 

 

 

     

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自画像

2008-07-22 | アートな時間

 

 この絵のまえで おもわずにっこりしてしまう。 素直さとユーモア、 いい味がでています。  
 女流画家  丸木スマさん。

   
  顔にソバカスがいっぱいあって 何とかしようと思ったがどうにもならない。 
  それで私はせめていっしょうけんめいに働いて、 その埋め合わせをしておりました。

  自分をすこしも美人だとは思わないが、 絵を描くようになって 少しは見られるようになったのではないかと思います。 もう死んでもよいと思っていた頃の顔と、 もう少し生きて、すきな絵を一枚でもたくさん描こうと思ってからの顔は、 自分でもわかるほど変わって、生き生きとしてきたのではないかと思います。 

 

  ほんとうに 美人より輝いている。 好きなことに没頭すると 表情も明るく いい顔になってくるのね。 
  自分でもわかるほどって  とてもすてきです。

 そのほかの作品は 別所沼だよりのここにあります。 ほとんどが大作、 会場では、 絵をひきたてるように素朴で洒落た額に納められ、 或いはセンス良く表装されている。 例えば、 中廻、柱は代赭、 一文字に質の良い縞柄、 淡い三色の太線で囲まれると、 さらに素晴らしく見えました。  図録も絵はがきも額がない写真で残念に思う。 晴れ着は作品の一部となって完成する。


    絵筆を執るすがたも  羨ましいくらい楽しげ
     百合の手まえに 赤い花を描いてますね。 黄色は何の花でしょうか

 

           後方の絵は 「内海の魚」と「庭先」

                             (画像: 丸木スマ展カタログから)

   画家のアトリエを覗くのは  実に楽しいと思います。

 

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華麗なる対決

2008-07-15 | アートな時間

   対決 巨匠たちの日本美術
  優れた芸術家をふたりずつ組み合わせ 作品の比較をする、 直接の影響関係がない場合でも、 対照の妙が見えてくる。 

  オモシロイ企画を素直にたのしもうと思ったが。 挑むような作品に圧倒され、 思いも熱く、 深くなってゆく。  

  対する巨匠が火花を散らすようで、 観るほうだって気が抜けない。 執念を感じるものやダイナミックな作品、 華麗な対決など。 
  この日、夜色楼台図はなかった。 猛暑に対決すべく、 心ゆくまで美の遍歴を試みる。  展示替えにあわせ通わなければ、 もったいない。 川音がきこえ 群鶏が騒ぐ、 3時間かけても まだ足りなかった。
 

  ・運慶 vs 快慶 (人に象る仏の性)  ・雪舟 vs 雪村 (画趣に秘める禅境) 
  ・永徳「檜図屏風」「梅に水禽図」 vs 等伯「萩芒図屏風」 「松林図屏風」 (墨と彩の気韻生動)  
  ・長次郎「黒楽茶碗 銘俊寛」「赤楽茶碗 銘無一物」
    vs 光悦「黒楽茶碗 銘時雨」 「赤楽茶碗 銘毘沙門堂」  (楽碗に競う わび数寄の美) 
  ・宗達「槙檜図屏風」「蔦の細道図屏風」「秋草図屏風」
    vs 光琳「竹梅図屏風」「白楽天図屏風」「流水図乱箱」  (画想無碍・画才無尽)  
  ・仁清 「色絵吉野山図茶壺」vs 乾山「色絵紅葉図透彫反鉢」 (彩雅陶から書画陶へ)
  ・円空 vs 木喰仏縁世に満ちみつ) 
  ・ 大雅「宜秋図」 vs 蕪村「課農便図」(詩は画の心・画は句の姿)
  :
  ・若冲「仙人掌群鶏図襖」 vs 蕭白「群仙図屏風」  (画人・画狂・画仙・画魔)  
  ・応挙「保津川図屏風」 vs 芦雪「海浜奇勝図屏風」 (写生の静・奇想の動)  
  ・歌麿「婦人相学十躰・浮気之相」 vs 写楽「市川鰕蔵の竹村定之進」 (憂き世を浮き世に化粧して)  ・鉄斎 vs 大観温故創新の双巨峰)  (写真 チラシから)

    

     

  蕪村 「鳶鴉図」 詩情豊かな雪。 凌ぐ鴉。  雪… 墨でもって弧を描き角で攻めていく塗り残し。 強風に煽られる白い雪片のいきいきとした描写。 鴉の背中に降る雪、 融ける雪。 暴風雨に立ち向かう鳶の、すがた、 鋭い眼光。  ひっそりと暮らす詩人の、 大作。 
 光悦・宗達 「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」 下絵を活かす 絶妙なるバランス

      展示一覧  ヴァーチャル美術館

   もう一度 かならず見に来よう    きょうの ユリノキ

   

 

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色と形

2008-07-05 | アートな時間

  七月一日 ブリヂストン美術館 岡 鹿之助展へ。

献花

 

  男装の麗人…  これは女性にたいして使う言葉だが、 若い日の写真をみてとっさに浮かんだ。  端正な面差し、 几帳面な絵肌、 細やかな文字の手紙。 
 どこからみても、 スマートな姿かたちの麗しい画家であった。 と、 気ままな感想。

  チューブから出したての絵の具は、 筆で画面をそっと叩くように置いてある。 キャンバスの荒い地肌が見える、 べた塗りしない。 鮮やか、 あまり白を使わず、 混色はしない。 隣の色を引きたてる。

  都会的な匂いのする作品は、 題材別に分けられ
・海 ・堀割 ・献花(花籠。 自分の思いを特定の人に捧げる意味合い) ・雪 ・燈台 ・発電所 ・群落と廃墟 ・城館と礼拝堂。  
 最終章 「融合」では、 前述八章のテーマを組み合わせ、 窓辺の花と遠くの街、 建物、 段丘など。 廃墟の前景にアマリリス、 窓やカーテン。 遊蝶花 も。
 古い街並み。 形象化する建物。 雲。 

    色が形に先行する…  
  自ら語るように、 冴えた色。 明度や彩度の対比。  宝石箱からこぼれ落ちる色彩の粒。 華やぐ点描。 リズム。
  パンジーがいくつも登場する 「三色菫」 「三色スミレ」 「三色すみれ」 「パンジー」。 落ち着いた色彩の「遊蝶花」など小品の数々。 ピサロ、 スーラー、 シニャックの点描とも異なる点描表現を、 みることができた。

   
 
 風景画を見て、 静かなものがたりを聞くような…   舞台に立つような感覚になる構成… など思う。 戻って略歴を読むと、 何となく繋がった。

  「劇評家の長男として生まれた」  劇場で たくさん観ていたに違いない。 実際、画家として舞台にかかわったこともあるらしい。

   HPで 主な作品が見られます。   なんと言っても  遊蝶花(下の写真左)。

  遊蝶花は… レミ・ドゥ・グルモンの詩から 
   シモオヌよ、そなたの髪の毛の森には…  一度読んだら忘れられない詩です。

  シモオヌよ…  
    春の庭には苧環、 遊蝶花、 
    唐水仙、 匂いの高い阿羅世伊止宇。  (訳 上田敏)  抜粋
 
      右写真も  タイトル 「遊蝶花」。    

    

  「魚」も 印象深い。

 

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詩的風景

2008-06-29 | アートな時間

   
 木をみると… 多様なみどりを考える。 トーンの違う緑、 種類毎に変わる樹形、 色彩、勢いなど。  必ず浮かぶのがコローの絵だった。  
  
  梢のそよぎ、 葉のむこうに透ける雲、 奔放な枝にも法則、 その先の、かたちや色の変化。 陽にかがやく一枚一枚。 大まかなフォルム。 幹のリズム。 空や雲の質感。 淡く古めいている、 静かなコローの作品が浮かんだ。

  圧倒する自然をまえに、 野外スケッチはいつも萎縮して、 捉えきれないできた。 今、 コローがそっと教える。 緊張を崩す線や 枝のリズムを変えること。 遠景こそ大事。  黒の使いかた。 

  静かでていねいに描かれた絵は詩的。 小品にみる広やかなせかい。 道や川が 幹が くねりながら奥へ高みへといざなう、 木の間の桃源。 

  コロー 光と追憶の変奏曲  国立西洋美術館  (詳細)

  ヴィル=ダヴレーのカバスュ邸  ボーヴェ近くのヴォワザンリュー付近の村の入り口 

モルトフォンテーヌの想い出 青い服の婦人 エデ     

  筆致をなぞり、 描くように観る。 暗部のさまざまな色。 あたたかな黒味、 ピーチブラック?  (画像にカーソルをのせると作品名が出ます

 1章 初期の作品とイタリア
 2章 フランス各地の田園風景とアトリエでの制作(ヴィル=ダヴレーのカバスュ邸) (ボーヴェ近くのヴォワザンリュー付近の村の入り口)
 3章 フレーミングと空間、パノラマ風景と遠近法的風景  
 4章 樹木のカーテン、舞台の幕 (傾いだ木)
 5章 ミューズとニンフたち、そして音楽 (エデ、 青い服の婦人)(マンドリンを手に夢想する女)  
 6章 「想い出(スヴニール)と変奏」    思い出を大作に 煙るような風景。
 クリシェ・ヴェール   コローのガラス版画 10点。 線描画を観るよう。  


  コローから影響を受けた画家たちに、 ところどころで出会うのも新鮮。
  セザンヌ、モネ、シスレー、モンドリアン、ピサロ、ルノワール、 ゴーガン、アンドレ・ロート、アンドレ・ドラン、ブラック、ピカソ、マティス。 

         真珠の女 
  
  「真珠の女」  拡大画像  
    真珠… 木の葉の髪飾り(ベール?)が、 額に落とした影を見誤ったもの という。

  
 

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Utopia of Images

2008-06-05 | アートな時間
 神坂雪佳    百々世草から  原画

  ◎ 京都の浅井忠神坂雪佳  
  アール・ヌーヴォーに感化され、 図案の革新を夢見た浅井。 独特の機知に富む 近代の琳派を生んだ雪佳。 出版という視点からみたとき、 ふたりはみごとな競演を奏でていた。 

   ・京都 ・木版 ・芸艸堂(ウンソウドウ) が ふたりを繋ぐ
 
 浅井 忠   「黙語図案集」 「黙語日本画集」 「木魚遺響」  神坂雪佳  「滑稽図案」 ヌー坊主式:落選、びっくり! 鼻車、 よく嗅ぎ分ける   「海路」 モダンな波紋  渦巻き   「百々世草」 (狛児) 蝸牛に見入る小犬  ほのぼの、ユーモア、のどかな絵。 「春の田圃」 「樵夫」 構図の面白さ  「蓬莱山図」 遙かな距離感。 仙境。  

 

   

                

  「とうか会」 1907年9月10日 芸艸堂  
  (画像上)第壱図:浅井 忠  (下)第弐図:神坂雪佳   図録から 

誌上のユートピア… 小さな空間に、惜しみなく注がれる創意工夫。 色彩にも心がおどった。  
    ブラボー!  
  まだまだ尽きないけれど、 これにて おしまい。 

     

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画文交歓

2008-06-04 | アートな時間

    誌上のユートピア  つづき。
  「絵画の領分 芳賀 徹」 から、 さまざまに繋がっていく。 大著を先ず読むべきだった。 前にも読んだけれど、ほとんど忘れていた。
  実際に観たばかりなので、 感動も新たに実感が湧く。 更に、 よく見えてくる。 

  「漾虚集ヨウキョシュウ」 漱石の短編集、 

  「漱石・五葉の協同工房のアール・ヌーヴォー好みを、「癖ヘキ」といってもいいほど露骨に、尖鋭に示した…  収録の七編、  … それぞれ独立の小室ギャラリへの扉と窓のよう…   ( 絵画の領分 漱石のブックデザイン)」

  これはもう 「へき」 と言われるほど凝った装丁で 値段も高かったという。 
 
  
「不折、五葉二氏の好意によって此集も幸に余の思ふ様な体裁に出来上がつたのは、余の深く得とする所である (漱石)」  と 作家も大満足!

  
 
 
  写真は 図録よりお借りしました。 藍の布表紙、タイトルは篆書で。 (右から) 倫敦塔 ・ カーライル博物館 ・ 琴のそら音 ・ 幻影の盾 ・ 一夜 ・ 薤露行カイロコウ ・ 趣味の遺伝。 
  七編それぞれに橋口五葉による扉絵と題名入りの小さな絵が入っている。 実物をもういちど見たい。 挿画 中村不折。 扉や目次の意匠にこめられた作意など、 芳賀先生のお話は尽きません。

 (漾…  水面がかすかに揺れる、ゆれ動く、漂う、浮かぶ などの意)
  写真右上の エクスリブリスは 「蔵書票」。 日本では大切な本に蔵書印を押すが、 ヨーロッパでは版画家に頼んで、自分の名前入りの紙片を作ってもらう。 これも立派な美術品です。 蔵書票の美術館を見つけました。  作品の一部がこちらで拝見できます。
  漱石の装丁  過去記事

              -☆-

  展示品、 どれもが魅了する。 一冊一冊、 小さなせかいに深淵なドラマ。 雨夜のたのしみに。 アーティストたちが ひたすら注いだ情熱を、 辿るのもおもしろい。
  「明星」1904年11月 誌面:藤島武二((装飾用)) モノクロ。  
  

   みだれ髪   巻頭の辞
 
  この書の体裁は悉(コトゴト)く 藤島武二先生の意匠になれり 表紙画みだれ髪の輪郭は 恋愛の矢のハートを射たるにて  矢の根より吹き出でたる花は 詩を意味せるなり  
                           与謝野晶子
 

 展示には無かったのですが。 
  以前に撮した写真です、カバーがかかって見にくいですね。 
   

   

   つづきは  浅井と雪佳。  例によって  画像に助けて貰います。
 

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誌上のユートピア

2008-06-01 | アートな時間

   誌上のユートピア  -近代日本の絵画と美術雑誌 1889-1915- 
                                    うらわ美術館

藤島武二・造花 外周り「ココリコ」アドルフ・コサールのデザイン  誌面そのものが美術作品  まばゆいほどの作品を観て、 納得である。
  表紙にこめる濃密な描写。 木版など。 デザインのモダンさ。  画家が精魂込めてつくる贅沢な表紙、 裏表紙、箱まで。 
 とても素晴らしいものばかり、 ため息混じりでショーケースに張り付いた。
  同時代の絵画も展示され、 誌面のグラフィック的な発想が、油彩画にもよい影響を及ぼしたことがわかる。

  細緻な挿画、 近くばかり見たあとで、ときどき大きな油彩画に戻る。 眼を休めることになった。 

 ピアズリーの「サロメ」、 ウイリアム・モリスの美しい本も。 豊かなひとときに大満足。 もう一度来よう。

  風刺雑誌「ココリコ」、 アルフォンス・ミュシャの石版など 限りなく…

               -☆-

 (パンフレットより) 19世紀末のヨーロッパでは、印刷技術のめざましい発展を背景に、『パン』や『ユーゲント』、『ヴェル・サクルム』など、誌面そのものが「美術作品」と呼ぶにふさわしい美術雑誌が次々と刊行されました。日本でもこのような動きに刺激され、また連動するように、20世紀にかけて多くの美術雑誌が生まれています。

 明治浪漫主義の文学と美術を代表する 明星
 創作版画運動の端緒を切り開いた 方寸ホウスン
 抽象的な表現の追及がみられる 月映ツクハエ  
 
白馬会創立10周年記念の機関誌 光風 
   
 文藝界 ホトトギス など展示

  美術雑誌は美術と文学の交流の場としてまた自由な実験の場として大きく花開き、新たな表現の獲得にも繋がった。

  青木繁、 藤島武二、 恩地孝四郎ら すぐれた芸術家たちは、 印刷芸術の華やかな誌面と交感しながら、どのように「ユートピア(理想郷)」を求め、実現していったか。 

  「方寸」第3巻第2号表紙 (芝居の馬)石版、「平旦」第2号表紙(やなぎのかげ)、絵はがきなど。 彼の 平福百穂 で喜ぶ。

  
   
    チラシ拡大

  絵画にくらべ小さな口絵、 狭い誌面に注がれた情熱と労力は大きなキャンバスに劣らない。 それ以上なのだ。 細やかな神経による手仕事。 
  それは 子供服の縫製にかける手間に似て。  成人用とおなじ工程、 小さいだけで、 労力はさほど変わらない。 小さいから軽い、楽だとはならない。

  京都の浅井忠神坂雪佳  西欧で学んだデッサンを基に図案の革新を夢見た浅井。 独特の機知に富む冴えた近代の琳派を生んだ雪佳、 出版にスポットをあててみると、ふたりはみごとな競演を奏でた。 

 小出楢重から原田良吉宛  絵はがき。  アート・ディレクターとしての北原白秋。
 夏目漱石 橋口五葉 中村不折装幀 もある。 

  展覧が いかに すばらしかったか。 内容豊かであったか、 引用するのみ。

     3回に分けて   まとまらないメモです。

 

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薬師寺の美

2008-04-22 | アートな時間

  薬師寺の歴史と美に会える…  空前絶後といっても過言ではない質の高さを誇り、 かつて見たことのない「薬師寺」を… と謳う。 入場30分待ち。
  
    国宝 薬師寺展

  平城遷都1300年を記念して。  日本仏教彫刻の最高傑作のひとつとして知られる 金堂の日光・月光菩薩立像(国宝)   聖観音菩薩立像(国宝) 慈恩大師像(国宝)  吉祥天像(国宝)など  休ヶ岡八幡三神坐像(国宝)…神像の名品  狛犬  板絵神像など 薬師寺の貴重な文化財が集まった。

  ・ 東塔水煙(模造)  
   すゐえん の あまつ をとめ が ころもで の ひま にも すめる あき の そら かな    
                                             會津八一

   笛を吹き 衣を翻し花を撒く天人 塔の上の透かし彫り 水煙(火炎のような飛雲)  

  ・ 聖観音菩薩立像(国宝)  悲運の皇子を模したとも。 
    ふだんは厨子に納められ背面まで窺えない。 直立 左右対称

  家にあれば笥ケに盛る飯イヒを草枕 旅にしあれば椎の葉に盛る 有間皇子 万2-142 

  わずか19歳の非業の死。  肩にかかる髪がくねる  腰の垂飾  背面の美しさも 切なく… 

  聖観音菩薩立像     …合掌

 

  ・ 日光・月光菩薩立像  像は3mを越す。 光背がはずされ、 すばらしい側面や背面を見ることができる。  やわらかな皮膚感  肉づき  細緻な毛筋、 みごとなプロポーション 脚にまつわる天衣   腿から膝、脛へ 輪郭がみえる。 裙子(クンス僧衣の一。腰から下を覆う、ひだの多い裳のようなもの。もすそ)のリズム。 日光菩薩 背面  月光菩薩背面

 月光菩薩立像    日光菩薩立像

  菩薩像三体は、あらゆる角度から拝観できる。 会場は高低差があり  移動しながら橋を渡るとき 目の高さにお顔がある。  立ち止まってゆっくり眺め、 手を合わせた。 今度は下に降りて仰ぎ見る。 大きい、 継ぎ目がない、 一度に鋳造された技術の高さ。  壁に凭れ 心ゆくまで鑑賞できた。

 パンフレットをご覧ください      裏面  
    展示品一覧   みどころ 

              -☆-   

  うつくしい薬師寺の塔を  さまざまに愛でる

   ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なるひとひらの雲     佐々木信綱

    東塔水煙を  フェノロサは  凍れる音楽…  と賞する      

              -☆-  

  たっぷり2時間  外光がまぶしい。  きょうも ユリノキにご挨拶。

  お話ししたいことは  まだまだあるけれど TV番組をご案内します。
  
  ※ ・NHKスペシャル「日光・月光菩薩 はじめての二人旅~薬師寺 1300年の祈り~」  
        4月28日(月)22:00~22:49 NHK総合
     ・国宝 薬師寺展記念歌会-心のまほろば 薬師寺を詠む-
        5月17日(土)16:00~16:40 NHK教育

     ・迷宮美術館「出張!国宝 薬師寺展」  5月19日(月)19:00~19:43 NHKBS-hi     
                               5月25日(日)14:15~14:58 NHK総合

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豪華・繊細

2008-04-03 | アートな時間

  侘びのせかいから   ルーヴル美術館展 フランス宮廷の美 へ

  4月2日 前売り券があると誘われ。  6日終了。
 

  <覚え書き>

 ・コンソール(装飾用テーブル) ・燭台(山羊、鷲、松かさ、アガパンサス)・カリヨン(鏡)付き置時計
 ・グリフォンの(鷲の頭、ライオンの体。伝説の怪物)装飾のある薪台。 
 ・肖像入り嗅ぎ煙草入れ、 装飾の繊細な細工。 ・王妃の間の肘掛け椅子
 ☆  書き板ケース (名刺くらい 薄いライターのよう メモ書き用の下敷き、台?)  初めてみる。
  ・懐中時計  ・銀の耀き ワインクーラー  ポタオイユ(肉の煮込み料理など入れる)と飾り盆  
 ☆脚付きの壺… 貫入いり (ブーシェ「ポンパドゥール婦人の肖像」の書棚の上に見える) 
 ・タピスリー「ドン・キホーテの物語」 連作 コブラン織り。
 ・羊毛の分厚い屏風5曲。 辞書くらいの厚み、温かそうな屏風。鳥と葉と獣の図柄。各曲191×71㎝
 ☆カメオの装飾を施した銀製のお盆! 銀 鍍金 エマイユ、貝殻の上にカメオ       

 

              拡大写真 

 ・髪型 大きいのが流行り。 マリー・アントワネットの最新のスタイルは高さ1m位ありそう、 リボンや羽根で飾っているらしい。 ・モードの風刺画。 おつきの者が  刺又サスマタという防具によく似た道具で(U字型に長い柄がつく)結い上げた斜塔のような髪を捧げ持つすがた。 何処へでも付き添う?  結髪を、まるで植木の刈り込みのように梯子をかけて剪定するようすの絵画など。 誇張や風刺も面白おかしく… 

 ・アラベスク模様~ ロカイユ様式   ・縁取りのモチ-フ
  装身具や調度品に贅を尽くす。 華麗な宮廷美術に目を見張り感嘆もするが、 やはり  シンプルが好き。 

  侘び寂びが 好みです

            -☆-

  昼食の後、 谷中に廻りお花見がてら 徳川慶喜の墓所へお参り。

        葺石円墳状の墳墓

   

  厚紙に、 手製の油ゑのぐで描いた小さな風景画のこと。  

 

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小村雪岱

2008-03-04 | アートな時間

  常設展がおもしろい  小村雪岱 コムラ・セッタイの江戸モダン

  キャプションに 1918年(大7) 開設間もない資生堂意匠部に入社。 資生堂デザインの基礎を作った 1923年退社 とある。
  子供のころ雪岱のなまえを知った。 おとなが町の化粧品屋さんで貰ってくる冊子を楽しみにしていた。 モダンな「花椿」。 いま思えば、 レトロな銀座の匂いと、 流行の最先端が載っていた。
  確かでなかった記憶が、 雪岱の展示に結びついてほんとうに良かった。

    

  この MATCH LABELS のなかに 雪岱のデザインもあるのかしら

  ・白と黒の美学- 挿絵の世界
  はじめはビアズリー風や西洋的な挿絵が、 次第に浮世絵や日本画の静謐なものにかわっていく。 ミレイのオフィーリア風(川口松太郎作 「女師匠」大正15年)もある。 墨 木版など   

  ・月夜の三馬  ・おせん 1941年頃 没後の後摺り
  ・西郷隆盛 (挿絵原画)
 
  代表的日本人  内村鑑三  岩波書店 によると  西郷は…
  人を訪ねていっても、中の方へ声をかけようとはせず、その入り口に立ったままで、だれかが偶然出てきて、自分を見つけてくれるまで待っているのでした  西郷の生活は地味で簡素でありましたが、その思想は、聖者か哲学者の思想でありました…    

  雪岱の洗練された絵は、 犬を生涯の友とするほど、 たいへん寂しがりやだった西郷の、 純粋な意志に迫るものだった。 連載最後の絵が 絶筆となる。

  ・情細やかな意匠- 舞台装置の世界 
  大菩薩峠 源氏物語 一本刀土俵入りなど  背景は役者の邪魔をしてはならず  袖に入った時は 細部まで情趣ある景色を見せなければならない と。 舞台装置ながら、 繊細な写実で観客は臨場感もたっぷりだった。 なまこ壁のリアルさ。 蝶がとまっている。 まるで現場に立っているような感じがするほど。 役者の特徴や照明効果まで配慮された。 1/50縮尺の原画は彩色されていますがモノクロで。  拡大

       一本刀土俵入り
 序幕第一場 取手の宿・我孫子屋の前

         
         序幕第二場 利根の渡し

 
       大詰第一場 布施の川べり  


          大詰第二場 お蔦の家

 

 
 ・雪岱調の源泉-古典絵画と鏡花文学への憧憬 
  見立寒山拾得  ふつうは隠者がふたり ここでは 女性ふたり 落ち葉に筆で詩でも書いているのだろうか 

  鏡花と雪岱   雪岱の作品を使った現代の出版物   

                 
 

       

    ・青柳  ・落葉  ・雪兎模様着物 帯など
  
おせん挿絵 見立寒山拾得・原画は彩色

   ○「視覚への挑戦-近代から現代へ」
 新しい表現への道を切り開いたピカソ、デルヴォー、モホリ=ナジ、マン・レイ、マルセル・デュシャンらの作品をはじめ、近代から現代へと続く「視覚への挑戦」の諸相を紹介します。  (美術館の案内より)
  
  デュシャンの回転すると立体になる作品 興味が湧く  

 

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早春の息吹

2008-02-21 | アートな時間

  

 今朝も 織部の掛花は揺るぎない量感をもって、 濃緑が明るい日射しに映えていました。 頂き物は卓上で、 地面に生える竹を思わせました。 勢いよく萌え出るみどりに、 根元の土まで匂います。
 いのちみなぎる竹… 
 大らかに才知を伸ばして 天を目ざすようにみえる。  強い線が拍子をとってアクセントをつけている。 迫力のある作品は 堂々とした孟宗の姿です。  
 
 
         光る地面に竹が生え…   
         かたき地面に竹が生え…  
         凍れる節節りんりんと…  
                   朔太郎の詩も思い出されます。
 
 
     

     
           光る地面に竹が生え、
     青竹が生え、
     地下には竹の根が生え、
     根がしだいにほそらみ、
     根の先より繊毛が生え、
     かすかにけぶる繊毛が生え、
     かすかにふるえ。

     かたき地面に竹が生え、 
      地上にするどく竹が生え、
     まつしぐらに竹が生え、
     凍れる節節りんりんと、
     青空のもとに竹が生え、
     竹、竹、竹が生え。

          萩原朔太郎   竹

 
   詩も、 陶芸も脚韻をふんで快く、 力強くひびいてきた。 緑の濃淡とその形も、 彫刻か絵のように変化して飽きません。 宝のような織部を、 こんどはたのしみに描きます。

 さわさわと揺れる竹の葉、 そよぎも懐かしい。 遠い空を思いながら、 うれしさがこみあげます。 
  赤い侘助に よく合いました。 
  
 

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丸の内

2008-02-15 | アートな時間

  出光美術館  王朝の恋 ―描かれた伊勢物語―  ぎりぎりで間に合った。 電車の中で文庫を読んだ。  様々な恋を、 書画や工芸にしている。  楽しみたい。
  昨夏の 「水と生きる」 展にも、 八橋蒔絵硯箱、 八橋蒔絵櫛、 伊勢物語図色紙貼交屏風などあった。 

                     -☆-

   blogでは  ひとつだけ…

 男が女のところに一夜きりで通わなくなった。あるとき、女が手を洗おうとして、盥の水に自分の姿が映っているのを見て

  我ばかりもの思ふ人は又もあらじと思へば水の下にもありけり

 (自分ほど物思いに沈む人はいないと思ったら ここにも沈んでいるわ) と詠み、

 それを立ち聞きした男は                 伊勢物語図色紙 水鏡 伝 俵屋宗達

 水口ミナクチに我や見ゆらむかはづさへ水の下にて諸声モロゴエになく

  (そこに沈んでいるのは私ですよ) と返した。 
  蛙でさえ水の下で声を合わせて鳴くものを、 私もあなたと声を合わせて 悲しみに鳴いているのですよ と。

  女の嘆きに 応和しようとする男。  ユーモアと 風雅を感じたり  (第二七段 水鏡)

                                                                        伊勢物語図色紙 水鏡 伝 俵屋宗達  (図録より)  もう一枚の 大きな画像

  織りこまれる和歌もすてき。  響きあう返し、 捻りがいい。  会話もこのように進んだら 愉しいでしょうね。  エピソードをじっくり読みかえす機会にもなった。
  能のせかいも誘われる。

  
             -☆-

  職場が近かったせいで、 丸の内は懐かしい場所。 東京會舘でティータイム。 猪熊弦一郎のモザイク壁画はモダンな赤。  写真: 『都市・窓』 部分

   

  
 

  必ず立ち寄った 東京中央郵便局。 以前は 地階に切手専門の部屋があって古いものなど何でも揃った。 小さなアートは短いものがたりを生む。 選んだ切手を封筒や葉書に貼って、 笑顔を想像した。きょうは、 湯島天神の切手を買って 掌の花見をする。 大きい画像

     

  東京駅と昼の月     光りあふれる春も  風が寒い  つめた~い  

 

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春の夜

2008-02-08 | アートな時間

春の夜のやみはあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる  凡河内躬恒     


   あっ 梅が咲いてる  
    香りをたづねれば   
        暗くても わかりますね 

  

 清少納言は 秋の夕暮れ…
  一方 
 見わたせば山もとかすむ水無瀬川
      夕べは秋となにおもひけん 

             と讃美されるお方もあって

     どちらの情趣も すてきです

 
春の夜のそこ行くは誰そ行くは誰そ                      子規

      銜えた羽根を落とすまい

 耳も背中も 尾の先まで緊張して      忍び足で 抜けていく                                        

                                 小茂田青樹 オモダセイジュ  「春の夜」  1930

   

   梅見弁当に添えられた花を 持ち帰った 
   コップに挿して…    ほのかにかをる  宵の春  

 

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