別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

画文交歓

2008-06-04 | アートな時間

    誌上のユートピア  つづき。
  「絵画の領分 芳賀 徹」 から、 さまざまに繋がっていく。 大著を先ず読むべきだった。 前にも読んだけれど、ほとんど忘れていた。
  実際に観たばかりなので、 感動も新たに実感が湧く。 更に、 よく見えてくる。 

  「漾虚集ヨウキョシュウ」 漱石の短編集、 

  「漱石・五葉の協同工房のアール・ヌーヴォー好みを、「癖ヘキ」といってもいいほど露骨に、尖鋭に示した…  収録の七編、  … それぞれ独立の小室ギャラリへの扉と窓のよう…   ( 絵画の領分 漱石のブックデザイン)」

  これはもう 「へき」 と言われるほど凝った装丁で 値段も高かったという。 
 
  
「不折、五葉二氏の好意によって此集も幸に余の思ふ様な体裁に出来上がつたのは、余の深く得とする所である (漱石)」  と 作家も大満足!

  
 
 
  写真は 図録よりお借りしました。 藍の布表紙、タイトルは篆書で。 (右から) 倫敦塔 ・ カーライル博物館 ・ 琴のそら音 ・ 幻影の盾 ・ 一夜 ・ 薤露行カイロコウ ・ 趣味の遺伝。 
  七編それぞれに橋口五葉による扉絵と題名入りの小さな絵が入っている。 実物をもういちど見たい。 挿画 中村不折。 扉や目次の意匠にこめられた作意など、 芳賀先生のお話は尽きません。

 (漾…  水面がかすかに揺れる、ゆれ動く、漂う、浮かぶ などの意)
  写真右上の エクスリブリスは 「蔵書票」。 日本では大切な本に蔵書印を押すが、 ヨーロッパでは版画家に頼んで、自分の名前入りの紙片を作ってもらう。 これも立派な美術品です。 蔵書票の美術館を見つけました。  作品の一部がこちらで拝見できます。
  漱石の装丁  過去記事

              -☆-

  展示品、 どれもが魅了する。 一冊一冊、 小さなせかいに深淵なドラマ。 雨夜のたのしみに。 アーティストたちが ひたすら注いだ情熱を、 辿るのもおもしろい。
  「明星」1904年11月 誌面:藤島武二((装飾用)) モノクロ。  
  

   みだれ髪   巻頭の辞
 
  この書の体裁は悉(コトゴト)く 藤島武二先生の意匠になれり 表紙画みだれ髪の輪郭は 恋愛の矢のハートを射たるにて  矢の根より吹き出でたる花は 詩を意味せるなり  
                           与謝野晶子
 

 展示には無かったのですが。 
  以前に撮した写真です、カバーがかかって見にくいですね。 
   

   

   つづきは  浅井と雪佳。  例によって  画像に助けて貰います。
 

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9 コメント

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画文交歓 (すぴか)
2008-06-06 22:47:03
画文交歓なんて素敵なひびき!

「絵画の領分」すばらしいですね。
あとから後から湧き出てくるかんじ、私も
もっと読み込まなくては。
いままた図書館から借りている本、なんと
「画文共鳴」岩波書店2008/1木股知史著
副題「みだれ髪」から「月に吠える」へ
こういう方面の研究者がいっぱいいらっしゃる
のですね。ますます面白くなりそう。
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画文甘心 ()
2008-06-07 00:12:45
すぴかさん ありがとうございます。「絵画の領分」は、次々に泉のごとく湧いてきて、鑑賞も深まりました。
 絵画と文学が交感して、更に素晴らしいものができたこと。夢中で、お使いの帰りに、今日も観てきました。

 「画文共鳴」ありがとうございます。いま、図書館に予約しました。 おもしろそうですね。
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エクスリブリス (boa !)
2008-06-07 20:53:17
また新しい知識をいただきました。以前、サンパウロの美術館の高床式の建物の下、吹き抜けの場所で毎日曜日に開く骨董市で、見かけて、何にするものか知らないけれど、きれいなエッチングだことと手に取った記憶があります。
今ごろ、氷解です。ガレが幻と消えた骨董市です。ポスターも大量売られていました。感謝とお礼を申し上げます。いくつになっても知ることは嬉しいものです。

五葉の装丁は漱石ならずとも、感動しますよ。文豪の大満足の微笑みも想像できます。あのお札の見慣れた顔をすこしほころばせて、頷くのが目に浮かびます。

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小さな芸術 ()
2008-06-07 22:01:15
boa!さん こんばんは

 毛皮のそばのプレートにはなんと書かれていたのでしょう。気になります。

 エクスリブリス、 わたしも蚤の市で手にした記憶、小さな紙片が束になっていたのは と、今頃気づきます。自分のために調べました。氷解…知るってほんとうに楽しい。 ワクワクしますね。
 蔵書票、表紙… どれも一級の芸術作品ですね。
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死に至る履歴 (boa !)
2008-06-08 16:59:25
あまりお上品ではありませんので、朧にしたままでしたが、再訪ください。明記しておきます。
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有難うございました! (sora)
2008-06-11 22:49:22
探していただいたような、有難みを感じております。
調べても確としたものが見当たらず、朧なことで独りよがりだったかも?…。
でも、その事実はあるようなことが、何処にも書いてあるのに…?何故か、見当たらず、そのうちに忘れていました。
何故なのかはっきりしないで、不思議な気がしていました。
今回は不折、五葉の足跡?がはっきりしました。蛙さん、有難うございました。お礼を述べるのも変かな?と思いながらも、そんな風に言わずには居られないような気持ちです。
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書家 ()
2008-06-12 10:39:50
soraさん いらっしゃいませ

 お祖父様の墓誌に刻まれた中村不折の文と文字。洋画家であり書家でもあると、soraさんのお便りで知りました。こちらこそありがとうございます。ひとつを知って、さらに深まり拡がっていくのを、とても愉しく喜んでいます。
          -☆-
 きょうは強い雨が降っていますね。お元気出して下さいね。 雨障り、雨つつみして… 奥ゆかしくて、いい言葉でしょう?

 雨障アマツツみ常せす君は久かたの昨夜キソの雨に懲りにけむかも   大伴女郎   巻四・519                          
 久かたの雨も降らぬか雨つつみ君に副タグひてこの日暮らさむ    四・520

 籠り居の日々、せめて、やわらかな発想をしたいですね。どうぞsoraさんもお母様もおたいせつに。
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重ねて有難う! (sora)
2008-06-12 18:26:50
温かい蛙さんのコメントを読ませて頂きました。
何か分からぬ暖かさが胸をつき、目頭が熱くなりました。
和歌のご紹介がたくさんの含みを感じ取ることができまして、それが刺激してくれたのかなぁ?
久しぶりのこのような気持ち! 
…自分の意識の中に広がっていきました。
ありがとうございました。
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正誤交歓 ()
2008-06-12 23:09:42
soraさん ごめんなさい
 万葉歌の「雨障み常せす君は久かたの昨夜キソの雨に懲りにけむかも」のうち
「昨夜の雨に」は、「昨夜の夜の雨に」が正しく「夜」が抜けていました。そのうえ、「昨夜」は「キソ」ではなく「キゾ」と読みます。トンチンカンでした。
 今日の日記に正解を載せました。おわびします。
 
 こちらこそ、 いろいろありがとうございます。
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