riba(リバ・クロアチア語)
3年前になる。「アドリア海の真珠」ドゥブロヴニクを訪れた。クロアチア南端のダルマチア海外沿いに位置するこの都市は、この国を代表する海洋都市であり、風光明媚な中世の町並みを抱え、現在日本人の間でも大人気の観光スポットである。
ドゥブロヴニクの持つ独特の存在感は、クロアチアの歴史においてこの都市が辿ってきた道のりをそのままに示すものであり、同様に食文化にもドゥブロヴニク独自の様式が反映しているように思う。
バルカン半島は中世から近代にかけ、その大部分がオスマン帝国の領土であった。バルカン半島の中では比較的アナトリアから遠い場所に位置するクロアチアとて、もちろん例外ではない。クロアチアの一般的な食事を見てみても、「オスマン的」なるものが多く見出され、エジプト・トルコ・イラン・ギリシャの「散歩」を常とする我々にとって、クロアチア料理の多くのメニューは大変に親しみ易いものだ。
となると、当然のように肉食を中心とした繊細なオスマン宮廷料理が現在のクロアチア料理のメインとなっていると思われるが、ドゥブロヴニクを始めダルマチア地方で食される料理に限って言えば、肉ではなく魚介類、これに尽きると感じた。それには、アドリア海に面しているという地理的な要因も勿論否めない。しかし、上に述べたように、この都市が辿ってきた「歴史」そのものも、食事のスタイルに影響していると、私は強く感じた。
そもそもドゥブロヴニクは、バルカン半島と地中海諸国、つまり大雑把に言ってスラヴ語圏とラテン語圏の国々の間の貿易の中継都市として栄えた歴史を持つ。中世に入り、ヴェネチア、ハンガリーと支配者を変えていくが、その都度この都市は、自由貿易の権利を勝ち取ってきた。オスマン帝国が強大化した際にも、巧みな外交努力により、帝国の直接の傘下に入ることを免れたのみならず、バルカン半島における商業活動の自由を勝ち得た歴史を持つ。「自由」という概念は、ドゥブロヴニクという都市をを表す言葉としてふさわしい。この事実は、食文化においてもある程度当てはまると私は思っている。(いささか大袈裟な言い回しではあるが)オスマン料理よりもこの地域独自の料理を、という姿勢。つまり魚介類を多く食す点だ。
魚の話からすっかり外れてしまってしまったところで、本題に戻ろう。
この地域で、アドリア海から上がった新鮮な魚介類は、シンプルに調理され食卓に並ぶ。海辺の強烈な陽光の下、グリルしたての魚にハーブやニンニクを混ぜ込んだ熱々のオリーブオイルをさっとかけて頂く。付け合せとしてレモンも添えられていて、もちろんレモンをぎゅっと搾ってから食べてもいい。素材が良ければ手の込んだ料理でなくともご馳走となる、その典型だ。主に食される魚はスズキや鯖、それから小魚類。蛸や烏賊、海老、貝類など魚介類も充実している。ギリシャの島で頂く魚料理にも通ずるものがある。
ドゥブロヴニクのレストランでは、真夏の太陽のように輝く笑顔にたくさん出逢えたことも印象的だった。給仕係の優しい笑顔は、旅人にとって最高のご馳走。海の幸と、碧い海に青い空が織り成す美しい風景、それに見目麗しい人々。ドゥブロヴニクは人生の幸がぎゅっと詰まった宝箱だ。(m)
*エジプトの魚はナイルの賜物 フィッシュ&チップスのイギリス エーゲ海の幸ギリシャ マグロはスペインから 日本の魚はやっぱり寿司! ポルトガルと言えば干し鱈料理 イランは当然キャビアかな?
なんだかクロアチアの観光案内文のようになってしまいました・・・
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