地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

2008-01-29 20:54:52 | ペルシャ語

زمستات(ゼメスターン)

イランの冬は寒い。今年に入ってイラン全土を襲っている寒波は、既に30人近くもの人々を死に追いやっている。私が住むテヘランでは連日氷点下10℃の日々。イラン北部ではマイナス40℃近くにまで気温が下がった地域もある。連日の雪と、刺すような空気は身体に堪える。ただひたすら春が待ち遠しい。

さて、以前ギリシャ語の「冬」で、「デメテルとペルセポネ」の神話を扱っていた。そこで、私も今回ペルシャ語の「冬」を書く際、豊富に残る神話群の中から何かおもしろいエピソードを見つけ出し、綴りたいと思った。
冬が訪れる「理由付け」の神話ではなかったが、周囲の民族の神話とも関連するおもしろい噺が、ふと頭に浮かんできた。

古代ペルシャの民族的宗教であったゾロアスター教。その文献のひとつ「ウィーデーウダード」に、神話時代の王・イマに関する記述がある。このイマ王も、以前に書いたミトラ(ミスラ)同様、インド=イランに共通する人物で、インドではヤマといい、それが仏教に入ると閻魔(エンマ)大王になる。しかし、この話は長くなるので、これ以上のことは書かない。

イマ王は、ペルシャの黄金時代の理想的な王と考えられている。千年間地上を支配し、彼の統治中、世界に虚偽・病気・飢餓・死は存在しなかった。
しかし、「あらゆる人間と動物を死滅させる恐ろしい冬が三度に渡って襲ってくる」と、突然に創造主から告げられたイマ王は、「ワラ」と呼ばれる巨大な洞窟を作った。そしてその中にあらゆる家畜・植物・人間の種を入れ、厳しい冬の後、再び世界が繁栄できるようにした。

おや?どこかで似たような神話を聞いたことがないか。
そう。勿論、「ノアの方舟」である。
実は「ウィーデーウダード」が編纂されたのは、キリストと同じ時代。おそらく「ノアの方舟」と「ワラ」の物語は、同じセム系の洪水伝説に起源を持っていると思われる。
そしてイマ王が関係する「洞窟」という暗い場所は、インドのヤマ王(後には閻魔大王)が地下界と関係性を持つようになったこととも無縁ではない。

イランの冬は厳しいが、その後には新緑と花々で鮮やかにに彩られた春が待っている。
春の始まり(新年)に関係するのも、やはりイランの神話ではこのイマ王。
春になる頃、再び『地球散歩』で、イマ王の神話に言及したい。(m)

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ミカン

2008-01-24 16:16:56 | 沖縄方言

 クニブ

 南国沖縄には百種類以上のミカンがあるそうだ。シークワーサー、タンカン以外はオートー、クガニー、クニブ、カーブチーなど全く聞いたことのない名前が並んでいる。沖縄方言辞典でミカンを探すとクニブ(九年母)と出ているので、これが最もポピュラーな品種なのかもしれないが、わからない。一方、シークワーサーは近頃の健康ブームで、沖縄のヘルシーフードの一つとして本土の私達にも馴染みのある果物となった。産地は北部やんばる地方、自生のミカンである。そしてシーは「酸っぱい」、クワーサーは「食べさせる」という文字通りの言葉となっている。

  旅先でよく目にしたのが、やはりシークワーサー関連商品。ジュースや飴、アイスなどの菓子に果汁が使われている、いわゆる「ご当地もの」である。市場には果実や100%絞り果汁も沢山売られていた。それから定食屋のランチで揚げたグルクン(沖縄特産の魚)に添えられていたり、これまた特産のもずくのタレにふんだんに使われていたり・・と食卓でも大活躍である。熟す前で皮が緑色の時は酸味が強いので、柚やレモンのように使われるようだ。

 沖縄で一杯となると泡盛とオリオンビールが定番。他、はずせないと思ったのが「シークワーサーハイ」だ。明るい陽射しのような果汁の色に染まったグラスと添えられた蘭の花の色が何とも沖縄らしい。3月の旅でも太陽は燦々と降りそそぎ、ハイビスカスやブーゲンビリアが咲いて・・・どこかギリシャの島の春を思い出させるような匂いがあった。(さ)

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ミカン

2008-01-19 09:07:36 | ギリシャ語

 Μανταρινι (マンダリーニ)

 アテネ滞在中、週に1回の楽しみが近所に来る移動式青空市場だった。通りの両側にみずみずしく元気一杯の野菜や果物が並んでいる。春はお茶用にカモミールの花が売られ、初夏は若緑のブドウの葉・・と移り変わる季節ごとに珍しい野菜や果物との出会いがあった。

 オレンジはほぼ一年を通して流通している。ギリシャに住み始めたのが4月。市場で山積みになったオレンジの山が太陽のしずくのように輝いて見えた。それを毎朝、絞って飲むという贅沢な日課(ギリシャの人にしてみると普通のことである)が始まり、買い物にオレンジは必須アイテムとなった。キロ単位で買うから相当な重さである。加えてギリシャ料理の味付けの基本となるのが塩、オリーブオイル、レモンという組み合わせであることを知り、香り高いレモンも毎回欠かせなくなった。値段は驚くほど安い。嬉しくてどんどん買ってしまう。

 初めての秋も深まった頃、小さなオレンジが並んだ。日本のミカンを思い出させる小粒はマンダリンという冬期限定の果物だと友人から聞き、更に荷物が増えることに。オレンジも含めて生き生きした葉のついたものが多く、まさに「朝どり」という感じ。マンタリンは日本のミカンよりも甘くて味が濃い気がする。

 冬もまっさかりになると今度は果肉が赤いオレンジも加わり、柑橘類だけでも4種類。他にもあれこれと買い出しをした私の荷物は一杯。ギリシャの人達と同じように市場には車輪のついた専用の買い物カートを引いていくものの、帰りは容易に引いて帰れない。おまけにギリシャの道路は舗装はしてあっても何となくデコボコしているので、カートを引くとガタガタ・・・と音がする。どこからともなく、この音が聞こえてくると今日は市場の日だなと実感したものだ。

 オレンジ、マンダリン、赤いオレンジ、レモンを食べていたせいか、滞在中、風邪をひくことはなかった。薬局にビタミン剤を買いに行った日本人が「オレンジジュースを毎朝飲んで、蜂蜜(ギリシャの蜂蜜もオススメ)を食べれば薬なんていらないよ」と言い含められて買えずに帰ってきたというエピソードもある。そう、ギリシャの太陽と大地は沢山のビタミンを届けてくれている。(さ)

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2008-01-13 11:38:49 | 沖縄方言

茶(チャ)

 沖縄の自販機には珍しい飲み物がある。ゴーヤ茶はいかにもという感じであるが、「さんぴん茶(写真)」とは?とすぐに購入。どこかで飲んだことのある味・・・そう、ジャスミン茶である。ボトルデザインのシーサー(獅子)がまた沖縄らしく眺め回すと、確かにジャスミン茶であることが明記されている。ラフテー(豚の角煮)などこってりした料理を食べたあとにヒンヤリスッキリ、とても美味しい。スーパーや市場にはティーバックは勿論、大きな袋に入ったさんぴん茶の茶葉が沢山売られていて、沖縄では緑茶よりも市民権を得ていることがわかる。

 調べてみると、中国ではジャスミン茶のことを「茉莉花茶・モリファツァー」または「香片・シャンピェンチャ」と言い、後者が沖縄方言として残って「さんぴん茶」となったそうである。古くから中国と交易のあった土地柄、王朝時代には産地である福建省に使節の為の商館があったとか。勿論、現在も専ら輸入である。

 他、沖縄の茶として特筆すべきは琉球茶道の「ぶくぶく茶」というもの。煎った米と玄米を煮出した煎米湯とさんぴん茶をブレンドし、20㎝もある大きな茶筅で泡立てる。しっかり盛り上がった泡を別のカップに淹れた茶の上にのせた飲み物。本の写真を見るとカップの上の泡はかなり盛り上がっており、見た目は茶道の薄茶というよりもカプチーノに近い。かなりの量の泡が立ち、それが簡単に消えないのは沖縄の水が硬水だからだという。今回の旅では出会えなかったのが残念。次回には是非、ぶくぶくと泡を立てることから体験してみたい。どれもこれも異文化を感じて面白い「うちなー(沖縄)」に「めんそーれ(いらっしゃい)」!。(さ)

 参考文献 『神々の食』 池澤夏樹 新潮文庫

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2008-01-07 22:52:12 | 英語

 Rice(ライス)

 人種の坩堝(るつぼ)アメリカ。アメリカの米料理も、いろんな国の料理が混ざって生まれた混ぜご飯?
 ジャンバラヤjambalayaは、日本でもなじみの米料理だが、この料理の歴史は面白い。スペイン人が持ち込んだパエリヤに起源があるとされる。
 しかし、ジャンバラヤが属しているのはケイジャン料理。ケイジャン料理には、聖なる三位一体と言われる、玉ねぎ、ピーマン、セロリが基本材料として使われている。この基本材料は、フランス料理のミルボワが起源という。
 この基本材料と、ケイジャン料理のメイン食材の米が融合したものがジャンバラヤとなった。
 もう一つ、アメリカ生まれの米料理で、日本に逆輸入されたものは、カリフォルニアロール (California Roll) がある。
 1963年ごろ、ロサンゼルスのリトル東京のスシ・バー、東京会館の板前、真下一郎の作と言われている。1970年代になると、アメリカで寿司ブームが起こる。カリフォルニア・ロールはアメリカ全土で作られるようになり、日本に逆輸入された。
 日本では、カリフォルニアの巻物で、加州巻き(かしゅうまき)とも呼ぶ。
 日本人が驚いたのは、海苔を内側に巻いていること。外国人には、黒い海苔が不気味に見えたようで、寿司職人たちは苦労した後、海苔を内側にすることで、寿司を食べてもらうことに成功したという。
 発祥の店東京会館のレシピは、蟹の足、アボガド、きゅうり、白ゴマを、日本のように海苔を外に巻いたものである。
 日本でいうところのカリフォルニアロールの具は、蟹の足か、蟹カマ(蟹風味のかまぼこ)にアボガドが入り、マヨネーズ風味であることが多い。
 しかし、アメリカで広まったカリフォルニア・ロールは、海苔は巻かれないこともあり、生の魚に抵抗がある場合は、アボガド、きゅうりのみで、白ゴマがまぶしてある。寿司入門、寿司初体験の人に食べさせるという。
 現在では、寿司好きのアメリカ人が多いせいか、私がアメリカのスーパーで見たカリフォルニア・ロールには、必ずマグロが入っていた。セントラルパークのお散歩に、サンドイッチを作って通っていたが、物は試しで一度買ってみた。なかなか乙な味であった。[a]

今日は七草粥の日。今年もお米を食べて、頑張りましょう!
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クリスマス

2008-01-01 17:03:12 | アラビア語(エジプト)

ميلاد (ミーラード)

 知ったかぶりして、エジプト人の友達に「イード・ミーラード!(降誕祭)」と言ったら、怪訝そうな顔をしている。
 「ああ、クリスマスね。イード・ミーラードなんて言わないよ。クリスマスでいいじゃない」と言われてしまった。
文字的にはペルシャ語と同じ。
 エジプトにはファラオの血を引く、正当なエジプト人と自負しているコプト教徒がいる。彼らは、原始キリスト教の信徒である。
 クレオパトラの死後、古代エジプトが終焉を迎る。その後、紀元前2世紀ごろに起こったエジプト独自の東方教会の一派である。
 エジプトはイスラームの国であるが、信仰の自由は認められているので、コプト教徒とイスラーム教徒は共存している。たまに衝突はあるものの、お互いの宗教を認め、仲良くしている。イスラーム教徒の祭りである「犠牲祭」や「ラマダーン(断食月)には、コプト教徒はイスラーム教徒の友人に電話して「おめでとう」を言ったり、反対にクリスマスには、イスラーム教徒がコプト教徒の友人に「おめでとう」の挨拶をしたりするそうだ。
 イスラーム教徒の友達に言わせると、「ミーラードの意味わかってる?誕生だよ。キリストの誕生を祝うというのはちょっと抵抗があるから、クリスマスでいいんだよ」と言っていた。
 日本でもクリスマスは一人歩きしているが、エジプトでもその感じは否めない。
 イスラエルの問題など考えると、非常にふしぎな感じがするが、「それはそれ、これはこれ」なんだそうだ。
 また、イスラーム教において、イエス・キリストは預言者の一人である。そのため、イスラームにおける預言者の誕生日を素直に祝おうとする人々もいる。
 コプト教徒は、ロシア正教会などと同じで、ユリウス暦の12月25日に当たる1月7日にクリスマスのお祝いをしている。

ヨーロッパはまだまだクリスマスシーズンです! 
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