Prayer (プレイヤー)
ダートムーアには、先史時代の遺跡がたくさんある。ここもそのうちの一つ。本当に、全く何もない草原に、唐突に一本の木が生えている。印象深い姿で、何かを訴えかけるよう。目印か何か?
この木の麓には、石による囲い、小さなサークルができている。言い伝えでは、ここは女性が集まり、ダンスをして、祈りを捧げる所だったらしい。今でも、10月の満月の夜に、いわゆる自然崇拝宗教系の女性が集まって何かの祈りをささげるそうだ。
過去に思いを馳せながら、ガイドさんの話をぼんやり聞いていたら、遠くから日本語で「こんにちは!」と聞こえてくる。何?こんなに、誰もいない所で、しかも日本語?
やってきたのは、イギリスに住むファミリーだった。女性が日本人で、男性は日本に住んだことがあるらしく、日本語が達者。よくよく話すと、女性とガイドさんの故郷が一致し、私と男性の東京で住んでいた場所がものすごく近いことが分かった。いろんな話で盛り上がり、最後には住所交換。まるで、ここで会うことを約束していたかのような出会いに驚きながら…笑顔でその場を離れた。
振り返ると、最初にあった時のように、誰もいない所にポツンと木が立っている。
何かがクロスする場所。そんな、不思議な力を思わせる出来事だった。[y]