hızlı yemek (フズル・イェメッキ)
2年前の初夏のある日、碧とイスタンブルで待ち合わせた。イスタンブルが初めての碧との待ち合わせはどこがいいだろう?日本のガイドブックにも載っていて、なおかつ、万一道に迷い人に尋ねる際に、誰でも知っているような場所が理想的だ。迷うまでもなく私は、「タクシム広場にあるバーガーキングの前でね」と、碧に告げた。ここはかつてトルコ人との待ち合わせにも使った場所。そして、いつも人だかりがしているこの場所は、地元の人々の間でも有名な待ち合わせ場所に違いない。
当日、碧との待ち合わせは難なく実現した。そして同じ日の夜、日本での再会を約してハグし合い別れたのもやはりここ。私たちにとっては思い出深い場所。どこにでもある米国系のファーストフードチェーン店に、ノスタルジーのような感覚を抱くことになるとは当時思いもしなかったが、イスタンブルを彩るモスクの光景同様、今では私の中でセピア色の写真の記憶と化している。
さあ、しかし…。トルコで美味しいファーストフードを食べようと思ったら、さすがにバーガーキングではもったいない。ご存知のとおり、トルコは食の宝庫。グルメ天国。ファーストフードに至るまで、トルコの食は侮れない。ガラタ橋の袂で香ばしい匂いを放つ鯖サンドを始め、モチモチのパン、シミットを中心とした品揃えの(日本で言えばミスタードーナツのような)「シミット・サライ」など、美味しいファーストフードでイスタンブルの街は溢れかえっている。
さて、場所をイスタンブルから首都のアンカラへ移そう。
この街を訪れた際、驚かされた出来事があった。アンカラでは、軒先に「piknik(ピクニック)」という楽しげな表記を施された様々なファーストフード店が軒を連ねているではないか。トルコ人の話によると、「piknik」という名称の由来は謎だが、アンカラのサカリヤ地区にある老舗の居酒屋が「pikinik」と名乗ったのが最初で、以来この地区の多くの店が「~piknik」の名称を用いるようになった。多くは、サンドウィッチのような、それこそピクニックに持参するような軽食を出す店に、この名が冠されているように感じた。
次はトルコから我が国日本へトリップ。
「廻る肉」のピタパンサンド・ドネルケバブは、今となっては日本でも知らない人があまりいないと思われる、トルコ発の有名料理だ。肉に下味を付けてマリネする作業や、大きな肉塊にじっくり火を通していく作業の手間を考えると、ファーストフードと呼ぶには申し訳ないような、かなり手の込んだ料理と言えるのだが。
90年代末、このドネルケバブの屋台が東京に登場した時は狂喜した。その後、渋谷など若者が集まる街を中心に、瞬く間にドネルケバブの屋台は増えていった。当時、そういった屋台から漏れ聞こえてくる従業員の話す言葉を聴いて驚いた。彼らの多くがなんとペルシャ語を喋ってるではないか。ケバブ屋台が出始めた当初、トルコ人の「ふり」をした多くのイラン人が、この仕事に携わっていたのだと、私は思う。
先日、久しぶりに渋谷のセンター街を訪れ、その中心地に大きな看板を掲げたドネルケバブ店を発見した。トルコを代表するファーストフード・ドネルケバブが、一時のブームではなく、日本のファーストフード文化にすっかり根付いたのを見て、なんとも感慨深くなった。(m)
*通常はトルコでも「ファーストフード」と呼ぶそうですが、あえてトルコ語仕様にしました。イラン ギリシャ エジプト 沖縄 アメリカ オランダ エジプト(2) 中国…世界のファーストフードを試食した後は、応援クリックもお願い!