地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

2006-06-29 16:34:10 | オランダ語

Water 

  アムステルダムを訪ねた。知人が赴任していて、旅の手伝いをしてくれるという。チューリップの季節ではないので、運河巡りと街歩き、ゴッホ、レンブラント、フェルメールを鑑賞・・そして郊外の風車を観光の予定。旅程を話すと、「それらは勿論だけど見せたいものがあるから、是非、車で案内させて」と嬉しい申し出があった。

 朝早く出発し、まず郊外の風車へ。近くに木靴の工場もあって、オランダらしい風景ですね、と感激の面もちの私に「これから案内する大堤防はもっと素晴らしい。オランダ人の知恵の象徴だから。」と一押しの様子だ。

 話によると、オランダの国土は大部分が低地で、四分の一が海面下にあるという。水害が多く水を管理する必要に迫られ、また飢饉で農地を増やす為には、他国の土地を奪うことを選ばず干拓で国土を広げてきたそうだ。現在は多くが観光用になってしまった風車も、当初は粉挽きの他、沼地や湖の水を運河へかい出す動力として、重要な役目を果たしてきた。運河の水を海に流すことで干拓したというわけだ。

 のんびりと草を食む牛を車窓に眺めながら辿り着いたのが大堤防。1932年、水害対策として海上に建設された全長30 ㎞、幅90mの巨大な堤で、その出発点と終着点を結ぶ道路としても機能している。右がせき止められてできた湖、左が海。湖面よりも海面の方が7mも高い、などの説明を聞く。湖の周りに生まれた干拓地は1986年に新しい州として誕生したそうである。

 海の中央をまっすぐに貫く道路をドライブしているようであるが、よく見ると左右で高低があり、青い水は海と湖・・・とても不思議な光景である。そして水の脅威にさらされてきた国土に暮らす人々の力強い歩みが実感できた。「すごいでしょう!」知人は案内してくれたどの場所よりも誇らしげな表情。

 「世界は神が造ったが、オランダはオランダ人が造った」という言葉があるという。自らの知恵で国を育ててきた自負が感じられる。風車や運河は旅情を誘うだけではなく、「水とたたかってきた歴史」を物語っている。(さ)

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2006-06-20 09:16:45 | ポルトガル語
Peixes(ペイシェシュ)
 
 ポルトガルを代表する魚はタラ。これは塩漬けになっている干しタラで、365日違う料理を食べられるだけのレシピがある、いや1000を越える調理法があるなどと言われる国民食である。
 街の食料品店の店先に大粒の塩がゴロゴロとついたタラ(写真)が山積みになっているのを見かけることも多く、レストランではメニューのbacalhoada(バカリョアーダ・タラ料理)という見出しの下にはサラダからグラタンやコロッケ,リゾット、スープなど様々な料理名が並ぶ。オリーブオイル、サフランやハーブなどを使っても、ポルトガル料理全般が日本人の口に合う素朴な味わいだ。

 旅の途中、最も手軽に楽しめるのはタラのコロッケであろう。マッシュしたジャガイモに塩出ししたタラを混ぜ込んで揚げたものが街のスタンドや食堂のショーケースに並べられ何とも食欲をそそる。石畳の坂道を走る黄色いケーブルカー、壁のアズレージョ(装飾タイル)などを眺めながらコロッケをほおばれば、ポルトガルならではのそぞろ歩きとなる。

 ポルトガルは約500年前から遠洋でのタラ漁を行っていたそうである。タラは捕獲の容易な魚であるが、日持ちが悪い。古くはウ"ァイキングたちが長い航海の間、干し物にして蓄えた。その後はスペインのピレネー山脈に住むバスク人達が更に日持ちを良くするために塩して加工し、交易品としても用いたそうだ。ポルトガル人も同じように塩蔵で持ち帰ったのであろう。
 食材として広まった塩タラは、16世紀半ばに全ヨーロッパで消費される魚の6割を占めるようになり、北海の漁業権を巡っての「ハンザ同盟」や新たな漁域の発見に伴う「コッド・ラッシュ」なる言葉が世界史に登場する。
 
 彼らがそれほどまでにこの魚に惚れ込んだのは、栄養素にある。脂肪分が少なく、魚には珍しくタンパク質の含有率も高い。これを干物にすると体重の大部分を占める水分が蒸発、濃縮されて80%の高タンパクになるという。保存の為に絞った人間の知恵が豊かな食材を生み出したようだ。
 安くて高タンパク。畑の肉といわれる日本の豆腐同様、国民食として広く愛されてきたことがわかると、異国のタラ料理に親しみがわき、更に美味しく魅力的に感じられた。(さ)

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2006-06-12 22:55:42 | スペイン語

 Pescado(ペスカード)

 地中海と北大西洋に浮かんで…いるわけではないが、島国のようなスペイン。そして、川が多い。フランス寄りは寒く、アフリカ寄りは暑い。なんだか日本に似ている地理的条件である。日本人がスペインを好む理由が、ここにあるといっても過言ではないだろう。そして、日本人は魚が大好きである。魚が食べられる、それも自分たちになじみのある魚。

 食品の産地表示が義務づけられたとき、多くの人が衝撃を受けたのは、蛸がモロッコ産であることを知った時。これが、ちょっと上のスペイン産なら、誰も気にしなかったことだろう。モロッコは日本人にとって、まだまだ未知の国。しかしスペインとは、何百年のお付き合いだ。そのスペイン産の魚貝類を私たちは口にしているが、スペイン産ゆえに、以外に記憶していない。
 マグロ、かつお、ウニ…

   スペインに行って日本食を食べるなら、寿司にして間違いない。
 スペイン人は魚を生で食べる習慣が元々ない民族だ。しかし、寿司や刺身を出す店は年々増え続けている。これと関係あるのかどうかわからないが、バルで寿司風 ピンチョスを見ることがある。バルセロナのバルでは、絶対に食べて帰らないと気がすまない一品である。
 ピンチョスとは、切ったフランスパンの上にハムやオムレツなど、いろんなものがのっているつまみだ。これが、寿司屋のカウンターにあるガラスケースそっくりな中に入っているのだ。これはどう見ても、スペイン風寿司と言わねばなるまい。

 アンダルシアには、海の中の闘牛と呼ばれるマグロ漁がある。アルマフドラバ漁と呼ばれる、2キロに及ぶ大きな仕掛け網を使った漁である。大漁の時は、網に数百尾もかかるという。あの巨体が百尾も網の中で暴れまわる姿は想像を絶する。
 漁師は、二手に分かれる。この暴れるマグロの質を確かめつつ、網を破ろうものなら、すぐに補修するために潜水するのだ。水上では、網の上に飛び込んだ漁師が、手鉤を振り下ろし、マグロと格闘するのだ。
 こうして、格闘の末船に引き上げられたマグロは、一路日本へ。スペイン市場の倍以上の値で買い取られる。なんと、日本人は全世界のマグロの漁獲高の半分以上を食べているそうだ。

 高級魚アンコウから、庶民の味(とはいえ昨今は漁獲高が悪く、高級)鰯、川魚なら鱒にいたるまで、おなじみの魚が勢ぞろいのスペイン。スペインのどこかに、日本人は自分の故郷を発見できるに違いない。[a]

※アルマフドラバ漁…『GEO』1994年12月号参照 

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2006-06-05 12:09:10 | オランダ語
boek 本

 アムステルダムを訪ねることになって本棚から出したのは『うんがにおちたうし』という絵本だった。旅の前にはガイドブックの他、その土地が舞台やテーマとなった小説やエッセイ、映画に触れるようにしている。行ってみたい場所や見てみたいものなどの選択肢を広げる良い手引きとなるからだ。アムステルダムの観光案内所でこの本の英語版(写真)が販売されているのを見たときは嬉しかった。

 『うんがにおちたうし』は、タイトルのとおり運河に落ちた牛の小さな冒険を描いた作品。毎日、同じ場所でミルクを出すために草を食べ続ける雌牛のヘンドリカは、そんな生活に飽き飽き。もっと他のものが見たいと願っているところ運河に落ちる。オランダ郊外は起伏のない広大な土地に運河が道のように広がり、農地との高低がないので「運河に落ちる」というシチュエーションもおおいにありうる。流れてきた木箱にうまいこと乗ったヘンドリカは、街まで見物旅行を楽しむ。
 街の水門の近くで子供達にひもで引っ張り上げられた後は、それを引きちぎって自分の足で街を探検。チーズ市に来ていた飼い主のおじさんに会うまで、ショーウィンドーをのぞいたり、自転車の匂いをかいだり、果てには市場の人がかぶる麦わら帽子を食べたり・・。牛がいる!と大騒ぎの人達に見らはれるのが嬉しくて、思わず「もー」とないている。自分の牛に街で会った飼い主の驚きようも大変なものだった。

 子供がわくわくするストーリー。更に魅力的なのは、描かれたオランダの風景や風物が忠実で美しいこと。牛の背景は、農場のある平坦な牧歌的風景を通り過ぎ、小さな村、ついに運河沿いに広がる街まで・・そして郊外には風車やブリキのミルク缶、街には独特の屋根様式を持った色とりどりの家、名物ハーリング(にしん)の店、チーズ市などオランダならではの添景もあり、ページをめくりながら運河の旅を追体験できる。
 中でも印象的なのはチーズ市だ。オランダ名産の赤くて丸いエダム、黄色い円盤形のゴーダが広場のあちこちに積み上げられ、運ばれている様子はとても珍しく楽しい。この市は現在もアルクマールという場所で4月から9までの金曜日に開催されている。

 絵本は子供だけのものではない。未来を担う子供の心に良いものを・・というポリシーで作られた本は十分に大人が読むに値する。『うんがにおちたうし』の絵を描いたピーター・スパイアーはNYで挿絵作家として活躍中だが、生まれはオランダで国立美術学校を出ている。おそらく懐かしい故郷の風景を愛情たっぷりに描いたのだろう。オランダの旅にお勧めの一冊だ。(さ)

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