Water
アムステルダムを訪ねた。知人が赴任していて、旅の手伝いをしてくれるという。チューリップの季節ではないので、運河巡りと街歩き、ゴッホ、レンブラント、フェルメールを鑑賞・・そして郊外の風車を観光の予定。旅程を話すと、「それらは勿論だけど見せたいものがあるから、是非、車で案内させて」と嬉しい申し出があった。
朝早く出発し、まず郊外の風車へ。近くに木靴の工場もあって、オランダらしい風景ですね、と感激の面もちの私に「これから案内する大堤防はもっと素晴らしい。オランダ人の知恵の象徴だから。」と一押しの様子だ。
話によると、オランダの国土は大部分が低地で、四分の一が海面下にあるという。水害が多く水を管理する必要に迫られ、また飢饉で農地を増やす為には、他国の土地を奪うことを選ばず干拓で国土を広げてきたそうだ。現在は多くが観光用になってしまった風車も、当初は粉挽きの他、沼地や湖の水を運河へかい出す動力として、重要な役目を果たしてきた。運河の水を海に流すことで干拓したというわけだ。
のんびりと草を食む牛を車窓に眺めながら辿り着いたのが大堤防。1932年、水害対策として海上に建設された全長30 ㎞、幅90mの巨大な堤で、その出発点と終着点を結ぶ道路としても機能している。右がせき止められてできた湖、左が海。湖面よりも海面の方が7mも高い、などの説明を聞く。湖の周りに生まれた干拓地は1986年に新しい州として誕生したそうである。
海の中央をまっすぐに貫く道路をドライブしているようであるが、よく見ると左右で高低があり、青い水は海と湖・・・とても不思議な光景である。そして水の脅威にさらされてきた国土に暮らす人々の力強い歩みが実感できた。「すごいでしょう!」知人は案内してくれたどの場所よりも誇らしげな表情。
「世界は神が造ったが、オランダはオランダ人が造った」という言葉があるという。自らの知恵で国を育ててきた自負が感じられる。風車や運河は旅情を誘うだけではなく、「水とたたかってきた歴史」を物語っている。(さ)
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