地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

2008-10-28 00:16:00 | ペルシャ語

ماه(マーフ)

繊細な「円環」を描き続けるタイル模様。その唐草の円舞が無限に連なり、天高く聳えるモスクの巨大なドームを覆っている。どこまでも青い中天に威風堂々と浮かび上がるペルシャン・ブルーの絢爛さに心奪われる。夜になる。月夜の光の下で見上げるペルシャのモスクは淡い金色に揺らめいて、たちまちに夢幻の世界を現出させる。見上げた丸天井の描線はゆらゆらと揺らめき、日本で見るより強烈な月光と混じり合い、手のひらに零れ落ちてくる。イランで眺める月夜の光景は、多くの時を経た今でも中世の千夜一夜の世界へ「夢見人」を誘ってくれる。

イスラームの国の中には、三日月(新月)の文様を国旗に採用している国がある。これは、オスマン・トルコが「発展」のシンボルとして新月を用いたことに由来する。以上のことから、イスラームで「月」と言えばクレッセントのイメージが強い。しかし、イランではどちらかというと満月が好まれる印象を受ける。様々な隠喩を駆使し、流れるような、しかし円環する旋律を生み出すペルシャ詩において、「満月」は美しい女性の顔(輪郭)を表現する上でしばしば用いられる。「月の顔(かんばせ)」と言えば、ペルシャの典型的な美女の喩えだ。女性の美を表現するペルシャ語の語彙の豊富さ・瀟洒な表現にはいつも驚かされるが、日頃褒められ慣れていない日本女性にとっては、ペルシャ詩の美の世界は時に読んでいて気恥ずかしい。

詩と同様に豊穣な世界を繰り広げるペルシャ神話。ここに、月に関する神話は見当たらないだろうか。世界の多くの神話において、月は重要な役割を担っているのだから。
ところが、太陽が王権のシンボルとして重要性を担っていたのに対し、月にまつわるまとまった噺は、私が知る限りペルシャ神話の中に見あたらない。
かつてゾロアスター教の儀式に用いられた幻覚性を持つ「ハオマ」という植物がある。ハオマは神格化され「不死」を表す神として祀られた。ペルシャ神話とルーツを同じくするインド神話(バラモン教)にも、この植物は「ソーマ」という名前で登場する。ソーマは後のヒンドゥー教で月の神となった。月が満ちては欠け再生し続ける様は、「不死」を容易に連想させたことだろう。しかし、ペルシャ神話においてハオマと月が結びつき、「永劫」となる機会は訪れなかった。

ペルシャの月。神話の世界で栄光の瞬間を持つことはなかったものの、月がモスクと共に織り成す光景は無条件に美しい。あたかもペルシャ詩に現れる「月のかんばせ」の美女のごとく。太陽の強烈な光線の中で眺めるモスクが威風堂々としたペルシャの王ならば、月夜のそれは、まさしく月光のダイヤを纏った艶やかな王妃の姿であろう。(m)

*ギリシャ語の「月」の記事で、ギリシャ神話の神々の世界へトリップ!
ペルシャ詩の世界はこちらから。ペルシャ神話の世界はこちらこちらから。

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砂糖

2008-10-24 15:46:20 | 沖縄方言

サーター(砂糖)

 沖縄の甘味といえば黒砂糖。豚肉同様、この食材が長寿国沖縄の土台になっていることはよく知られている。白砂糖と比べるとカルシウムが240倍、鉄分が47倍、カリウムが1100倍、体に良いこと間違いなし。

 豚の角煮(ラフテー)などの料理に使われることは勿論、伝統的な揚げ菓子(サーターアンダーギー)やクレープ(チンビン)は生地に練り込まれた黒砂糖の風味が素朴で美味しい。ポピュラーなお土産「ちんすこう」も最近は味にバラエティーがあり、紅芋、パイナップル、海塩などと並んで人気なのが黒砂糖。ブルーシールアイスクリームのさとうきびフレーバーもはずせない。

 また、うちなーんちゅ(沖縄の人)にとって「さんぴん茶(ジャスミンティー)と黒砂糖」はティータイムの定番で、黒砂糖そのものがお茶うけとして愛されているそうだ。イランの人が角砂糖を口に含んで紅茶を飲むのに似ているようで面白い。

 那覇の市場を歩いている時に見つけたのが、写真のように板状の塊を砕いて売っている小さな店。商品は奥の壁にぶら下がっているバナナと、店頭に据えた台にのっている黒砂糖の塊のみで注文を出すとお兄さんが木槌で砕いてビニール袋に入れてくれる。いかにも庶民のマーケットという雰囲気だ。

 すっかり沖縄が気に入った私は、買ったそばから黒砂糖を口に放り込むと自販機で「さんぴん茶」を購入して「うちなーんちゅ」のティータイムを真似てみた。この組み合わせ、美味しい!ということで、さんぴんの茶葉も忘れずに購入。本土に戻った後も、時々「さんぴん茶と黒砂糖」で沖縄の旅を懐かしんでいる。(さ)

 参考文献 『オキナワなんでも事典』 池澤夏樹 編 新潮文庫                                               

 いつもありがとう・ニフェーデービル! 「地球散歩」を読む時は、お気に入りの飲み物と共に。お茶うけの「砂糖」はギリシャ語日本語ポルトガル語 、英語といろいろ準備しております。リラックス・ティータイムの後は、クリックをお忘れなく!
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砂糖

2008-10-20 00:26:03 | ペルシャ語

شکر (シェキャル)

甘味を加えるための調味料、砂糖。イランでの主な用途は、渋めの紅茶を甘く飲みやすくするため、である。但し、イラン流紅茶の作法は、紅茶に砂糖を入れるのではなく、角砂糖を舌の上に置き、少しずつ口の中に紅茶を流し込み、砂糖を溶かしながら飲んで行くというものである。
冒頭に、ペルシャ語では砂糖を「シェキャル」と言うと書いたが、正確には「シェキャル」は粉砂糖のことであり、角砂糖のことは「ガンド」と言う。ガンドは日本で使用する角砂糖と比べて固く、口の中で一気に溶けてしまうことがないので、一杯の紅茶と一粒のガンドで、ゆっくりとティータイムを楽しむことができる。
但し、一日に何度も角砂糖を口の中に含むため、イラン人には虫歯に悩む人が少なくない。

他に、イランで頻繁に使用される砂糖には「ナバート」というものがある。これは、氷砂糖に形状が似たもので、サフランで黄色く色づけされているものが多い。サフランをそのまま砂糖に溶かしこんで固めたものや、サフラン以外にも、胡麻やピスタチオなど様々なものが加えられているナバートがあり、見かけも美しく、イランの代表的なお土産のひとつとなっている。ちなみに写真右側のナバートは贈答用。
ナバートには嗜好品としての役割以外にも、薬効があるとされている。
それは、お腹を壊した時に良いとされる民間療法の一種だ。たっぷりのナバートを湯煎し、濃い目の紅茶とバラ水(あるいはミント水)を加えて病人に飲ませる。その味は、「これでもか」という程甘ったるいが、ナバート入りの紅茶(紅茶入りナバート?)を飲むと、不思議なことにピタリと下痢が止まるようだ。確かマグレブでもお腹を壊した際、たっぷりの砂糖入りミントティーを飲んだ記憶があるが、果たして砂糖には整腸効果があるのだろうか?

ところで、「シェキャル(shekar)」というペルシャ語から、sugarという英単語を連想する方もおられることだろう。「シェキャル」はアラビア語では「スッカル」、さらにアラブから砂糖が伝わったスペインでは「アスカル」だ。いずれもシュガーと似ている。語学オタクの私としてはシュガーの語源が非常に気になるところだが、古代ペルシャ語と姉妹言語であるサンスクリット語のsarkara(サトウキビ)が、語源だと以前学んだことを思い出した。ということは、砂糖は古代にインドからペルシャへ伝わって行き、ペルシャから後にアラブ、スペインへ?調味料の歴史も、これまた奥が深いのであった。(m)

イランの紅茶の作法はこちらの記事で。あま~い砂糖は上記のアラビア語、スペイン語以外にも、ギリシャ語日本語ポルトガル語 、英語でもご賞味頂けますよ!
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2008-10-16 10:02:41 | ギリシャ語

Καστανα(カスタナ)

 秋の味覚で忘れてはならないのが栗。ある時、冬のパリを旅行した人から「焼き栗を食べながらシャンゼリゼを散歩した」と聞いてから「焼き栗」に憧れを抱くようになった。世界中の色々なものが食べられる日本でも、さすがに焼き栗の屋台はない。

 アテネに住むようになって初めての秋、近くの駅に焼き栗屋台を見つけて食べた時の喜び・・ホクホク感と甘さが焼いた香ばしさと共に口いっぱいに広がった。その後、アテネの中心地でも発見。パルテノン神殿が眺められる場所を散歩しながら焼き栗をほおばれば、パリのシャンゼリゼにも負けない素敵な時間となった。

 間もなく市場にも栗が並び始め、シーズン到来。ギリシャは内陸部に山岳地帯を多く抱き、山の実りも豊かだ。日本より少し遅めに並んだ栗が冬の間ずっと手に入るのは、冬の憩い時間に欠かせない暖炉で焼き栗をするためである。冷え込みが厳しくなった晩秋に友人宅で早速ご馳走になり、専用のフライパンが市場で買えることも判明、すぐに購入した。暖炉のある暮らしにも憧れがあったので、長い冬の夜に自宅の暖炉でゆっくり火をおこして栗を焼くという至福の時を過ごした。

 焼くに限ると思っていたギリシャの栗、茹でてみてビックリ。皮が日本のものより柔らかく、冷めてもちょっとナイフをいれれば手で簡単にとれて、しかも甘皮までクルリとむける。その上、しっとりして甘みが強く感じられるではないか。焼き栗と甲乙つけがたい美味しさで、滞在中は焼いて、茹でて・・と相当量の栗を食べたに違いない。欲張って栗のケーキやマロングラッセ、アイスも買ってはみるのだが、結局は自然の味に勝るものなし。狩猟の女神アルテミスやニンフ(妖精)が出てきそうなギリシャの山の香りが漂ってくるようだ。(さ)

いつもありがとう!Ευχαριστω!   暖炉で焼き栗・・・ゆったりのギリシャ時間、楽しんでいただけたらクリックよろしくね!人気blogランキングへ

 

 


ブドウ

2008-10-12 21:29:42 | 英語

  grape(グレープ)

 ブドウの季節、記事も連続して出てきたので、この秋は葡萄を食べながらネタにつきる事はないであろう。
 そのまま食べても美味しいが、日本ではヨーロッパブドウとアメリカブドウの両方を楽しむ事ができる。繊細な舌を持つ日本人としては、やはり用途によって産地を選びたいものである。産地と言うよりは、品種によって向き不向きがあるので、一概には言えないが、「地球散歩」なので、産地別食し方をお届けする。
 ブドウの瑞々しさ、そして「香り」を楽しむのであればヨーロッパブドウである。そのまま生で食べたいブドウで、マスカットが根強い人気なのもうなずけるであろう。
 また粒が均等で、誰もがイメージする、逆三角の美しい姿をしているのもヨーロッパブドウの特徴である。
 
トルコのブドウでオルサさんがコメントしてくださっているが、トルコのブドウの半数以上が種無しである。そのため干しブドウに向いているのもヨーロッパブドウである。
 ではアメリカブドウが美味しさを発揮するのは何か?
 アメリカでは房売りよりも、粒で売るのが定着しているとのこと。ジュースや、ゼリー作りに向いている売り方であろう。また適度な酸味と糖分に加え独特の強いブドウの匂いが子どもにも好まれる要因であろう。
 この強いブドウの匂い、ワイン好きの間では好みが真っ二つである。酸味の強いビターな感じの好きなヨーロッパワイン好きには、アメリカブドウ産ワインの匂いは鼻について飲めないのだそうだ。
 子どものころ、何でもグレープ味が好きだった方も多いであろう。グレープジュース、グレープゼリー、グレープと付けば何でも甘くて美味しいイメージが昭和にはあった。歯磨き粉にいたるまで、ドギツイ着色料や独特の甘味料味とグレープが結びついている気がする。
  なぜか、ブドウジュースとかブドウゼリーとは言わず、「グレープ」と英語で言っていた。子どものころの私は時に「グレープ」と「グレープフルーツ」を混同し、「ブドウ」ジュースが飲みたいにもかかわらず、「グレープフルーツ」ジュースと言った事がしばしばあったように思う。今思えば、グレープが略称で、グレープフルーツが正式名称だと思っていたのかも知れない。
 もともとグレープフルーツは「シャッドカ」という名前であったが、まるでブドウが生るように房状に生る事から、いつしか「ブドウのような果物」でグレープフルーツという呼び方が定着したと言う。
 ブドウは紀元前から宗教的にも、広範囲において人間と密接な果物であった。色も大きさも違えど、その形は誰が見てもブドウ。見た目がいかに重要かと言うことがよく判るエピソードである。[a]

さて、あなたのお好みは? 
ヨーロッパブドウ系→ギリシャイランエジプトトルコ
アメリカブドウ系→日本
見た目系→沖縄
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折り紙でピカソ

2008-10-08 21:54:55 | インフォメーション

 スペインは日本に並ぶ、折り紙の国である。以前イスラミック・ブルーにそのことを書いたことがあるが、意外と知られていない。
 3つの時から折り紙を折り続けて早…
 スペインに関係するものを折っていたら、いつの日かスペインで折る日も来るかしらと夢見る。
 今、フランス・パリの国立ピカソ美術館が改装のためピカソが大挙して(表現がおかしいですが)日本にやってきてる。
 雑誌もピカソ特集が目白押し。
 そんな事とは露知らず、ある日ピカソが私の脳に話しかけたのです。
 「バスク!」と…

 ピカソに取り付かれた私は、灰色の紙でなにやら四角を折り始めました。
 どうもマドリードのレイナ・ソフィア美術館にある灰色の絵を折り出そうとしているらしい。果たして完成するのかは、ピカソ次第?
 写真の四角がピカソに変化を遂げているのか?
 破壊されているのか未完成のような完成品なのか?
  気になる方は、お運びくださいませ。今年の折り紙作品展。

 とき 10/10(金)11:00-17:00
    10/11(土)10:00-17:00
    10/12(日)10:00-16:30

 ところ 
南大塚地域文化創造館 (03-3946-4301)
     JR大塚駅南口
     東京メトロ丸の内線 新大塚駅
     何れも徒歩5分

  実に24回目の出品です。成長が感じられるのか?「相変わらず…」と苦笑されるのか… お待ちしております。 碧

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2008-10-04 13:15:32 | スペイン語

Coche(コチェ)

 この夏、突然やってきて猛威を振るったゲリラ豪雨。ニュースを見ていて、ふと思い出したのがスペインのダリ美術館だ。車の中に豪雨・・・という非現実的な光景は、美術館の中庭で起きる。コイン差し込み口のついた小さなボックスが横にあり、何だろう?と思って1ユーロを入れると・・・いきなりゲリラ豪雨が発生!

 車内にはアイビーの葉に囲まれた奇妙なマネキン人形が3体、ずぶ濡れだ。美術館に来ていた子供たちだけでなく、大人も何だ何だと集まって驚くやら喜ぶやら。時間で止まった豪雨を再現させようと、誰かがまた1ユーロを投入。再び豪雨発生で、ひとしきり盛り上がった。以来スペインといえば、この車である。

 サルバドール・ダリは20世紀のシュルレアリズムを代表する画家。絵画だけでなく、ピンとした口髭姿での奇行も有名である。美術館はバルセロナから特急で1時間半、北カタローニャ地方にあるダリの生まれ故郷フィゲラスという小さな街にある。市民戦争の爆撃を受けた劇場を買い取り、サロンの天井画を手がけるなどして70歳の時に完成した。

 建物は上部に沢山の大きな卵が並ぶ奇抜なデザイン。ミュージアムショップも充実、ダリがデザインした宝石を展示した施設が隣接している。ピカソやミロの美術館、ガウディの建築が観光の目玉であるバルセロナにプラスすると、旅が更に面白くなること請け合いだ。

 ところで子供が大好きなチュッパチャプスとダリの関係を皆さんはご存知だろうか。バルセロナ発祥の棒付きキャンディーを世界展開させるためにダリにロゴを依頼、頼まれたその場でナプキンにデザイン画を書いたものが原型だそう。日本のコンビニやスーパーの棚にダリのデザイン・・お菓子売り場を通るのが楽しみになった。(さ)

 参考 『絵画のみかた』 視覚デザイン研究所 ・ ウィキペディア

いつもありがとう!Gracias(グラシアス)!  ダリの描いた時計溶け出して時間がわからなくなる前に他の地域、エジプトイランギリシャイタリアの車も読んでみてね。クリックはダリが描いたアリの数だけよろしくお願いします!人気blogランキングへ