すっかり携帯電話の世の中になってしまった。
平成生まれの子が成人を迎えた今年、黒電話はもはやサザエさんワールドのアイテム。
平成君であるいとこが小学生の頃、我が家に泊りに来た。
祖母が、お母さんに電話しなさいと言ったところ、おもむろに受話器を取り上げて「重たい」と言った。確かに今の電話機は軽い。そして、次の瞬間、私たちは凍りついた。実に、彼が全ての番号を押し終えるまで、見てしまった。
そう。ダイヤルを「押した」のだ。まわすと言うことは、思いもよらなかったらしい。
「まず、0のところに指をいてれ、まわす。途中で放しちゃダメ!そうそう…止まるまでしっかりとまわすの。それから、今度は3に指を入れて…」と教える羽目になった。
「昔は電話をかけるのって大変だったんだね」と、平成君。今から10年ぐらい前である。ピンクの電話などまだまだ健在の頃である。
親に聞いたところ、確かに、ダイヤル式に、さわったことはないかもしれないとのこと。しかし、「え~??『押した!?』」と、非常に驚いた様子であった。
面白がった私たち。祖母は、「おばあちゃんの子どもの頃は、電線に風呂敷包みを結んでおくと、いつか届くと思った人がいたのよ」と言えば、母は、「私は良く近所の家に電話を借りに行ったわ」と、平成君には、これまた想像をはるかに超えた、マンガのような実話に目を丸くしていた。
電話を借りに行く証拠が、半世紀前の祖父の名刺に残っていた。
「呼び出し○○宅」と、書かれた後に、隣の家の電話番号が記されていた。
隣の家は、今は亡き、ムーミンパパの声優としても知られた俳優さんのお宅。ムーミンパパの「先生!お電話ですよ~」と言う声がすると、濡れ縁から、庭をつっきて行く、祖父の下駄の音が今でもしそうである。思えば優雅な時代があったものだ。近所の家に電話をかけ、呼びに行く人がいて、受けに行く人がいる…
今となっては、この三者全てがイライラしてしまい、成り立たないシステムであることは明白である。
FAX機能がなければ、固定電話は姿を消す日も近かったかもしれない。
昭和の化石である、私の子どもの頃は、FAXは万博の目玉であった。
逓信総合博物館が大好きだった私は、週末になると良く遊びに行った。何が楽しかったと言って、絵を描いて機械に入れると、その絵が隣の部屋の機械から出てくるのが面白くて、何度も試した。こんなに楽しい機械が、家にやってくるなどとは、夢にも思わなかったのである。
ましてや、パソコンなるものが、なくてはならないアイテムになり、イヤフォンがあれば、世界中の誰とでもいくら話をしても、国際電話料金がかからない世の中が来るなんて!思いもよらなかったのである。[a]
かろうじて現役エジプトのダイヤル式電話も、プッシュ!
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