pescado(ぺスカード)
ペルーの忘れられない料理の一つがセビーチェである。
私はなぜか、どこへ行ってもゲイに好かれる。いわゆる「オネエ」な感じの人たちではなく、一見してはまったく判らないが、おかげさまで旅先で貞操の危機に遭遇しない。
ペルーの旅の時も、どこに行っても会うゲイのカップルがいた。個人旅行で日本人にはほとんど会わなかったが、移動のバスや現地ツアー、泊まるホテルなど、なぜかことごとく同じところにぶつかった。独身男性2人!運命を感じる出会い…とは程遠かった。
ドイツ人のおじさんとメキシコ人のお兄ちゃんカップル。この組み合わせもおかしいが、日本人2人も目立つので、どちらも「また会っちゃった」といつも思っていた。
リトル・ガラパゴスと言われるパラカスという町(日本のツアーでは基本的に行かない)のホテルに泊まっていた時、「僕たちはどうやら同じ感性で旅をしているようだね」と話しかけられた。
町外れの、海に面した大きなホテルでのんびりとどこにも出かけないでいたら、一緒にお昼を食べに行こうと誘ってくれた。
ぶらぶら散歩しながら、小さな食堂に連れて行ってもらった。
そこで食べたのがセビーチェだった。
「海のそばにいるのに、新鮮な魚介を堪能しないで、ホテルの中のレストランを渡りあるっているなんてダメだよ!」と言われた。
白身魚とイカ、貝、サツマイモも入ったマリネ。
いつもメインをひとつにスープを2つで十分だった私たちは、この時も一皿しか取らなかったが、そのことを今でも後悔している。
ホテルではご飯を食べないという二人は、いろいろ食べ歩いて、この町で一番美味しかったというところに連れて行ってくれたのだ。
マダムがお昼寝した後、プールサイドでトランプしながら「ところで君たちは家族ではなさそうだし、カップルというには年が離れすぎているけど、どんな関係なの?」と聞かれた。
その後、マダムからは「あの二人はどういう関係なのかしら?」と聞かれた。
「同じ質問をされましたよ。私たちがお友だちというのを不思議がられるのと同じじゃないですか?」と答えたら、「そうね!」とマダムは納得していた。
不思議なご縁、魚のマリネを見ると思い出す。[a]