地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

マルタ人と騎士団

2010-11-30 00:00:00 | コラム

 Maltese and the Order of Malta(マルティーズ アンド オーダーオブマルタ)

 


 

 

騎士団の登場は、マルタの人々にとってどんなことだったのだろうか。


 

十分な作物を生み出すことのない土地と、町には壊れかけた城壁。ロードス島を失い、喉から手が出るほど本拠地を欲しがっていた聖ヨハネ騎士団でさえ、移り住むのを躊躇したという。


 

文明が交錯するその土地柄、マルタの人々は、侵略と人身売買の危険に常にさらされてきた。建築事業が増え、新たな作物の栽培を取り入れ、経済的な発展を遂げたのは、騎士団が島に現れてから最初の100年ほどのことだった。16世紀後半からは常に飢餓が蔓延し、ペストに2度苦しんだ。大包囲戦では、人口の4分の1が亡くなったと推定されている。その後の大建築事業に誘発された経済的危機と、騎士団による絶対主義的な統治は、いくつもの反発を招いた。


 

騎士団が島の統治権を巡り様々な外交手段に出ている間も、彼らの不満は収まらなかった。18世紀に啓蒙主義が発展すると、島の有識者は自治権を主張するようになった。そして、ナポレオンが島への侵入を始めたとき、彼らは戦争の後ろ盾はしないと断言した。このことにより、騎士団はフランスに降伏、マルタ島支配の時代を終えたのである。


 

騎士団が去った後、支配者を替えながら、ついに独立国となったマルタ共和国。だが皮肉にも、今の彼らの観光の呼び物の一つは騎士団の功績だ。


 

マルタの人々を苦しめたのも騎士団、歴史に登場させるのも騎士団。やはり、マルタ人は騎士団とは切っても切れない関係なのか。[y]

 

 


 

★参考文献:メルチエカ、サイモン(2005)『マルタの聖ヨハネ騎士団』Casa Editrice Bonechi

 


 

 

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2010-11-26 00:00:00 | アラビア語(エジプト)

كستناء(カスタナ)

 今年の1月、エジプトの果物屋さんで栗を見た。エジプト通って15年、初めての事である。
 お店のおっちゃんは、お客が来た!とばかりに、もみ手で出てきたが、私がじっと栗を見ていたせいかどうか、さっさと引っこんでしまった。不可解である。そして出てくる気配がないので、アラビア語で何と言うかとか、どうやって食べるかなど聞きそびれてしまった。
 想像するに、調理法が面倒なので、お土産には不向きと判断。

 後日、「エジプトで栗を見たけど…」と日本在住のエジプト人に聞いたら、「甘栗おいし~よね!」と、トンチンカンな返事がまずかえってきた。そして「エジプトでは、食べるの大変」と続いた。
 やっぱり…
 
 ネットで調べたところ、サウジアラビアなど湾岸では食べられているようだが、エジプト人なり、エジプト在住者の栗の記事を見つけることができなかった。
 炭火の中に放り込んで、皮がハゼたら出来上がり。もしくは、炭火の上やオーブンでこんがり焼いている様だ。
 カスタナと呼んでいるところを見ると、トルコかギリシャから持ち込まれたと思われる。
 いずれの国も、焼き栗は名物。最近では、エジプトへは、トルコ産の栗が輸入されているようだ。

 とはいえ、あまり普及していない理由は、どうやらどんぐりなどと同じ、家畜の為の飼料としての消費が高い(?)からのようだ。
 いつか、栗をお土産にエジプト人の友だちの家を襲撃して、どうやって食べるのかさぐってこようと思う。[a]

 

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遺跡

2010-11-22 19:36:58 | ギリシャ語

Αρχαιολογικος  χωρος (アルヒェオロイコス ホーロス)

アテネのランドマークでありアテナ女神を祀るパルテノン神殿、                                                
競技場跡が残るオリンピック発祥の地オリンピア、                                                        世界の中心を意味する「へそ石」がありアポロンの神託を求めて多くの人が巡礼をしたデルフィー、                               音楽や観劇、入浴、運動も病気を治す大事な要素と考えた古代の治療所エピダウロス、                                              トロイア戦争が史実であることを証明したシュリーマンが発掘した黄金のマスク眠るミケーネ、                                          大理石モザイクの床と柱廊が残るアレキサンダー大王の王宮跡、                                                               ひび割れた大地に石が転がっているだけの神殿や宮殿跡も含め、全てが神話や世界史に関わる多くの物語を抱いている。名だたる世界遺産からmitraの語るruine(廃墟)までギリシャ全土に点在する遺跡の姿は多様だ。

どの遺跡も豊かなものを与えてくれた。語り出したら尽きない中で一つ選んでご紹介したいのが遺跡だけの為に存在するデロス島。住む人もないので街は勿論、施設は小さな博物館と一軒のカフェのみで宿泊することもできない。人々は遺跡を見るためだけに訪れるのだ。紀元前480年、アテネを盟主として古代ギリシャの諸ポリス(スパルタなどの都市国家)が結成した対ペルシャの「デロス同盟」が結ばれた場所として記憶されている方もおられると思う。また神話の世界ではアポロン・アルテミスという双子の兄妹の生誕地であることから光輝く島とも呼ばれている。

青と白の島として有名なミコノスから船で約30分。広い遺跡をその日のうちに見て帰らなくてはならないので朝一番の船から満席だ。デロス島に着くと港に入場券売り場があり、写真のように目の前に遺跡が広がる。アポロンやアルテミスをはじめとする神々の聖域、劇場、住宅遺跡やシリア、エジプトなど異国の神々の聖所・・どれも興味深く、高台からは四方を囲むエーゲ海を眺めることができて清々しい。

ミコノスへの最終便は午後3時頃。船が出た後に残るのは海と風の音だけ。デロス島の遺跡は濃密な紀元前の時間を今なお失っていない。(さ)

 

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2010-11-17 12:43:07 | 日本語

奈良の金峯山(きんぷせん)は、全国の金峯山修験本宗の総本山。
全国にある「金峯山」「蔵王」「御嶽山」と名の付くものの殆どが
ここからの勧請によるものだ。
あなたの住む場所にもあるだろうか。

その金峯山にある金峯山寺は、修験道の役行者(えんのぎょうじゃ)が
創立したと言われる、いわば、山伏(やまぶし)などの山林修行者のための寺。
修験道(しゅげんどう)とは、山岳信仰と仏教などが合わさった日本独自の宗教だ。

金峯山寺の蔵王堂(国宝)には
60年に一度しか拝めない秘仏、三体の蔵王権現様がいらっしゃる。
普段は厨子の扉をかたく閉ざしてあるのだが、
今年は遷都祭で、特別にご開帳になったので見に行ってきた。

弥勒菩薩(みろくぼさつ)
釈迦如来(しゃかにょらい)
千手観音菩薩(せんじゅかんのんぼさつ)は
過去・現在・未来を守護されているとか。
像高が最大7,3mという屋内の仏像としては日本最大で、色はなんと真っ青。

特筆したいのは、ご本尊ではなく蔵王堂本体。
この堂に使われている柱すべてが、まったく製材されていない切り出した丸太のままなのだ。
いったい何本の柱がこの堂を支えているのだろうか。
私の目にとまったのは、梨の木の柱、そして山ツツジの木の柱。
考えられないほどの大木でどこまでも高く、涙が出そうなくらい力強く美しい。
今はもう国内には同種類の山ツツジは1本も残っていないそうで、
中国には仲間の木がまだあるらしい。

ご本尊が桜の木から刻まれたから、吉野は桜の名所だったり
この蔵王堂もいろんな山の木を使って建てられていたり。
なるほど、国土の殆どを山が占める日本古来の信仰の本家本元なわけだ。

一つ、面白いことを聞いた。
修験者、、つまり山伏(やまぶし)の服装を思い浮かべると
額に小さな黒いものを着けているでしょう?
あれは、現在でいうヘルメットの代わりらしい。
暗い山道を歩くときに、額を守ってくれる大切な道具だそうだ。

宗派など全く違うのはわかっているのだが、
サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路のように思える。
今昔、修験者たちは、信仰と真摯に向き合うために古道を歩いている。(ミ)

 

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マルタ騎士団

2010-11-13 00:00:00 | コラム

マルタ騎士団

 

Order of Malta (オーダー オブ マルタ)

 

故郷にはもう戻れない。

崇高なる使命も遂げられない。

私の心は今、懐疑でいっぱいだ。

神よ、なぜ私にこのような仕打ちを…?

錆びた十字を握っても、

あまりに照りつける太陽に、

あまりに碧い海に…

張り裂けそうな孤独感が、私を襲うのだ。

 

もしかしてもしかすると、新天地へと向かう海の上で、こんなことを思った人がいたかもしれない…

そんな風に感じた。

 

運命は、彼に対して過酷だった。欧州の後ろ盾を失い、ロードス島を追われ、8年にも及ぶ放浪の旅。

旅は、彼の高貴な身分や、崇高な志、故郷での約束された生活をすべて奪い、海をさ迷う放浪者へと落としめて行った。

 

実は、彼は気付いていない。まだ、彼には力があることを。

神は、彼に新たなる試練を与えようとしていたことを。

 

かくして、彼は運命を共にすると誓った仲間とともに、小さな島に辿り着いた。

マルタと呼ばれる終の棲家へ。[y]

 

 

※マルタ騎士団は、正式には「ロードス及びマルタにおけるエルサレムの聖ヨハネ病院独立騎士修道会」Sovereign Military Hospitaller Order of St. John of Jerusalem of Rhodes and of Malta(英語表記)といい、一般に聖ヨハネ騎士団と呼ばれています。ここでは、わかりやすく「マルタ騎士団」と表記しました。

 

 

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2010-11-09 00:00:00 | つれづれ帳

散歩仲間のタヌ子さんがクロアチアから「友」にお返事をくれました!

prijatelj(プリヤテリ)

アミーゴやアミ、フィロスなどと比べるとちょっと長くて覚えにくい。
そんなところから、クロアチア人は友達が少ないのかと言うと、そんなことは全くない。
特におじいちゃん、おばあちゃんの友達との交流は盛んで、中央広場近辺のカフェは高齢者カフェと化していて、ちょっと入るのに躊躇いを感じるぐらい(笑)
それも皆普段着ではなく、朝からお洒落をして集っていて、それが何とも楽しそうなのです。
親しき仲にも礼儀あり。
友達に会うときもきっちりとした身なりで家を出る。
そんな心がけがクロアチアの老人たちをパワフルにしてるのかな。
(タヌ子)

 

タヌ子さんのブログに散歩に行って、私たちはいつもよだれダラダラ、おなかはグーグー(笑)
「異邦人の食卓」で、満腹の旅を楽しみに、次のお散歩へ!


地球散歩では、世界各地、日本全国からの「お返事を」お待ちしています。
一緒に散歩しましょうね。(掲載については編集部で協議します)

 

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「地球散歩」が掲載されました

2010-11-05 00:00:00 | インフォメーション


明光義塾さんという、学習塾の機関紙「CRECER」、2010年冬号に「地球散歩」が掲載されました。
24ページのミニ冊子ですが、内容は盛りだくさんです。
地球散歩の書き手には、塾が身近な子どもをもつお母さんもいます。
お母さん、受験生を持つ親として興味深い記事だけでなく、「伝統文化を知る旅」という特集コーナーや、子ども部屋風水など、楽しい読み物が満載。
エンタメ情報缶のBlogコーナーに、「バーチャル地球散歩を体験できます」と載せていただきました。
ご縁があったら、ぜひ手にと手見てくださいね。[a]

この冊子は非売品です。詳しくは明光義塾さんにお問い合わせください。


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祭り

2010-11-01 00:00:00 | つれづれ帳

Festival


アメリカに住むMesaから届いた絵葉書を読んだ後にスコットランドの知人に会ったのでハロウィンについて聞いてみることにした。
もともとハロウィンはケルト民族の祭りで「夏の終わり」を意味する。ケルトの暦では11月1日が新年なので10月31日あるいはその前後に行われる火祭りが発祥だったという。
印象的だったジャコランタンについて尋ねると、何とスコットランドではカボチャではなく、Turnip(ターニップ)という大きなカブで作るとのこと。ハロウィン=カボチャのイメージだったのでビックリ。そして大きなカブと聞くと、昔々読んだロシアの民話の絵本を思い出した。

もう少し詳しく知りたくて帰ってから調べてみた。まずケルトの火祭りとは死者を迎えるもので、その目印としてロウソクに火をともし、ご馳走を用意するそう。まるで日本のお盆と一緒である。
また悪霊や魔女もさまよい歩くので、魔除けの灯り、災いを避けるための捧げものという意味もあり、また仮面をつけて追い払うことが仮装につながったらしい。アメリカでハロウィンが盛んなのはアイルランドからの移民が多いからということである。

ターニップはスゥエーデン原産の西洋カブでスゥイードとも呼ばれている。日本のカブと違って大きく、皮が固いので、カボチャと同じような感覚でジャコランタンを作ることができそう。スコットランドの伝統料理である羊の内臓の腸詰「ハギス」にマッシュして添えられるというからポピュラーな野菜だということもわかった。

スコットランドの大きなカブで作ったランタン。死者と向き合い、新しい年の幸せを願う人々の思いを灯りに託している。(さ)


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