ماهی (マーヒー)
イスラーム圏の食事と言えば羊を中心とした肉料理が有名で、魚料理と言ったら何を食べているか皆目見当がつかないという方が多いのではないだろうか。
イランで魚料理と言えば、塩・胡椒で味付けしたフライとキャバーブ(ケバブ)、これに尽きる。そう、予想に違わずレパートリーは少ない。
イランは南にペルシャ湾(アラビア海)、北にカスピ海を有する国だが、食べられる魚の種類はさほど多くない。もちろん、その理由のひとつはイスラームの戒律である。鱗がない魚はハラーム(禁止)の食材である。
では、鱗がある魚とは何か。例えば、カスピ海からあがるマーヒー・セフィードと言われる白身魚(トルコ語でアク・バルックと呼ばれることも.。どちらも「白い魚」の意)や、ゲゼララと呼ばれる川魚の鱒が、イランの一般家庭の食卓に上る魚だ。マーヒー・セフィードのフライは、イランのお正月ノウルーズ(春分の日)のご馳走として、サブズィ・ポロゥ(ハーブと一緒に炊き込んだご飯)と共に食卓に上る一品だ。
しかし、イランならではの魚を挙げるとすると、何と言ってもチョウザメである。イランの特産品キャビアは、チョウザメの卵。チョウザメはサメ特有のアンモニア臭がして、匂いに敏感な人にとっては食べづらい。
一方、イランのキャビアはロシア産に比べて粒が大きく味も良い。一般に日本に輸入されているキャビアはロシア産だが、ロシア産のものこそがキャビアだと思っている人がイランのキャビアを食べたなら、その味の良さに驚かれることと思う。
以前、イランの友人が言っていたことなのだが、チョウザメが獲れるカスピ海沿岸の地域では、朝食のパンにキャビアを乗せて食べるという話だった。いささか大袈裟に言っているだけかもしれないが、本当の話なら何という贅沢だろう!
ちなみに、チョウザメのことをイランでは「ウズン・ブルン」と呼んでいるが、これはトルコ語で「長い鼻」の意。名前の由来はチョウザメの長い顔の形。しかし、イランで食べられる魚の多くが、なぜトルコ語で呼ばれているのかは謎である。
さて、北の特産品がキャビアなら、南の名物はエビのキャバーブだろうか。
エビはテヘランの魚屋でも簡単に手に入る。しかし、イランの広大な国土ゆえか、テヘランに着く頃には、エビは不快な臭いを放っていて、臭覚が敏感な私は大好物のはずのエビをあまり食す気になれない。
以前、ペルシャ湾岸の街ブーシェフルを訪れた際にエビのキャバーブを試してみたところ、確かにテヘランで食べるものに比べ、臭いが気にならなかった。
ところでイランで魚屋というと、通常鶏肉も一緒に売っているお店が多い。スーパーマーケットでは肉も魚も同じ売り場で売られているので気が付かなかったのだが、バザールの魚屋では、確かに鶏肉が売られている。その事実を知らなかった頃、写真のように、魚屋の店頭に吊り下げられた鶏肉を見て、何のためのディスプレイだろうと疑問に思っていた。
なぜ、鶏肉のみが魚屋で売られるか、これまた謎なのだが、単純にどちらも白身の肉だから・・・?案外これが理由なのかもしれない。(m)
*エジプトの魚はナイルの賜物・ フィッシュ&チップスのイギリス ・エーゲ海の幸ギリシャ・ マグロはスペインから ・日本の魚はやっぱり寿司!・ ポルトガルと言えば干し鱈料理
高級食材キャビアを一粒、二粒・・・『地球散歩』も、読まれる皆さんにとって一文一文が味わい深いものとなりますように。応援クリックをお願い!
人気blogランキングへ