地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

2009-10-12 12:45:39 | フランス語(チュニジア)

automne(オトン)

秋の風景・風物詩を求め・・・というわけでもないのだが、私が地中海諸国を訪れるのは偶然にも初秋の候が多い。チュニジアを訪れたのもやはり、ナツメヤシの実(デーツ)の収穫の季節を迎えた9月末だった。チュニジアの秋とは言っても、地中海に面した北部と内陸のサハラ砂漠では気候も全く違う。爽やかな秋風が肌を通り過ぎる地中海沿岸を離れチュニジアの奥へ奥へと向かうと、初秋と言えども日中は夏場のような強い日差しに照らされた、土色の乾いた風景に出逢うこととなる。
ナツメヤシの林から放たれるエメラルドグリーンの光、日干し煉瓦の建物と舞い上がるサハラの砂のベールが織り成すサンドベージュ。そのコントラストがなんとも美しい。
そして、オアシスの内部へ一歩足を踏み入れると、たわわに実る秋の恵みに目を奪われる。今まで在った緑と土色の2色の世界が、一気に華やいだ気配を纏い眼前に出現する。
ナツメヤシのオアシスは三層構造。天高く聳えるナツメヤシの林。その下には、オレンジやレモン、柘榴、無花果などの背の低い木々が涼しげな木陰を作っていて、中でも収穫の季節を迎えた柘榴が、赤くはち切れそうな実をいくつもいくつもぶら下げている。そして、夾竹桃などの夏を想わせる鮮やかなピンクの花々が未だ盛りの季節を保ち、絵画のように美しい景色を彩っている。そういった木々の根元では、地植えの野菜が群生している。

そして再び上を見上げると、少しだけ高くなった空を幾層にも覆う、ナツメヤシの天井。通常私たちが口にするデーツは、干し柿のように甘く熟した柔らかいこげ茶色の実。しかし、初秋にナツメヤシの林を訪れたなら、鮮やかな黄色の実が次々に枝から切り離され地面に放り出される光景を目にし、採りたてのデーツをお裾分けしてもらえる機会にきっと出逢えるはずだ。
熟していないデーツは初秋ならではのオアシスの味わい。その実は硬く、渋柿同様、未熟の果実特有の渋さが舌に残るものの、収穫したばかりの新鮮な木の実を食すという意味での喜びが大きい。
チュニジアのデーツと言えば、Deglet Nourが有名だ。「デーツのシャンパン」という異名さえ持つDeglet Nourは、甘みも深く柔らかい果肉が特徴的だった。この種のみは、枝付きのまま販売される点も一風変わっている。旅路の途中、枝付きのデーツをインテリアのように壁に掛けているお宅も拝見した。秋口には熟していない黄色の硬い実も、季節が進むごとに段々に熟し、栄養価の高いこのフルーツは、冬場の保存食としても重宝されることになる。

また、チュニジアの家庭で頂いた柘榴の味も忘れがたい。直系30cmほどの平皿に、丁寧に皮から剥がされた美しいピンク色の柘榴の実がたっぷり盛られていて、大きなスプーンでざくざくと頂く。種は出さずにそのまま飲み込むのが柘榴の正しい食べ方。乾いた砂漠地帯で口にした柘榴のみずみずしい甘みは、今でも記憶にしっかりと焼きついている。

滋養豊富なデーツ、乾きを癒す柘榴、いずれも極度に乾燥した砂漠地帯では重宝される食物だ。収穫の季節を迎え自然の恵みに感謝する。緑豊かなオアシスを一歩抜ければ厳しい自然が待ち構えているサハラでは、日ごろ何気なく購入するフルーツも楽園の果実そのものに思えてくる。(m)

秋の恵みに乾杯!ペルシャの柘榴もお楽しみください。
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12 コメント

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Unknown (タヌ子)
2009-10-13 16:38:29
デーツを頂点として、果樹がたわわに実り、花が咲き乱れる…
恥じらいのない、貪欲ともいえる風景に圧倒されそうです。
先日ザグレブの市場で見たことのない実を見つけたのですが、もしかしたら生のデーツだったのかも知れません。
デーツは干したものしか見たことがなかったので分からなかったのですが、黄色い実も混ざっていたので、もしかしたら…と思った次第。
まだあるかしら?
こちらの柘榴も漸く赤く熟してきました。
折角潤いを与えてくれる柘榴も、喉の渇きを覚えない気候で食べなければならないのがちょっと残念。
これから市場に買い物に行ってきます!
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タヌ子さん (mitra)
2009-10-13 20:01:27
「恥じらいのない貪欲ともいえる風景」、素晴らしい表現ですね!!
確かに、オアシスには「全て」がストレートに「在る」気がします。
ザグレブの市場、行きたいなあ!残念ながらクロアチアでは市場を見る機会がありませんでした。タヌ子さんがご覧になられたのはやはりデーツかしら?
熟す前のデーツはこんな感じです→http://ethno-mania.at.webry.info/200510/article_24.html
クロアチアでも熟していないデーツを食べているとしたら興味深いです。でも、どこの国から入ってきているんでしょうね。
柘榴はやっぱり乾燥地で食べるに限ります!
市場に行ってらっしゃいませ!(笑)
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こんにちは! (yokocan21)
2009-10-14 05:41:02
色鮮やかな果樹に覆われたナツメヤシ林が、目の前に広がってきます。
デーツにも色々と種類があるのを、今年のラマザン期間中に初めて知りました。(在トルコ12年にして初とは、恥ずかしい)トルコでデーツというと、ラマザンの食べ物なんです。「デーツのシャンパン」、こちらでも手に入ったら食べてみたいです。どんな味わいなんでしょう~。
ザクロといえば、絞りたてのジュースも美味しいです。オレンジジュースと並んで、秋~冬の定番ジュースです。
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yokocan21さん (mitra)
2009-10-15 22:08:44
ナツメヤシの世界も奥が深いですよね。
私も、イランのデーツにもいろいろ種類があることを最近知りました。熟れていない黄色のものをカラック、半熟(?)のものをロターブ、干し柿のように熟したものをホルマーと言います。ホルマーはデーツの総称でもありますが。食べ物など共通した名前が多いイランとトルコのことだから、トルコでも同じ名称のものがあるかもしれないな~と思い、書き並べてみました。日本でよく見かけるのはこのうちのロターブなのですが、箱に「ロターブ」と書かれているのを、イランに行くまで、ブランド名だと思っていました。
デーツのシャンパンは、甘みが強く、でもまろやかです。「シャンパン」とはよく言ったものです。
柘榴ジュース、イスタンでスタンドをたくさん見かけました!トルコのオレンジジュースはと~っても美味しかったですが、柘榴は試してみなかった(残念・・・)。だけど、こういったところにもトルコとイランに共通の生活文化を感じますね~(いつかイランのジューススタンドの記事も書きたいです)。
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ジューススタンド ()
2009-10-16 11:02:59
ネタとして採用(笑)
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碧さん (mitra)
2009-10-16 12:39:50
あ、実は私もちょっと前からそう思ってた(笑)
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再びすみません (yokocan21)
2009-10-16 15:23:53
デーツ、トルコ語では「フルマ」です。イランの「ホルマー」から来ていますよね!
ただ、種類によって言い方が変わるということはないようです。「○○産デ-ツ」という風に売っています。産地によってお値段が違っていたり、大きさや色が違う感じです。主に、イラクやイラン産のものが多いようで、地元トルコではデーツは採れないそうです。
ジューススタンドのお話も楽しみです!私は、ザクロとオレンジのミックスジュースが好きです。甘味と酸っぱ味が絶妙なんです~。

ところで、もう随分と前になるんですけど、「割礼」のことでメールさせて頂いたんですけど、届いてますか?ちなみに、うちの子もこの夏、遂に割礼しました。

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yokocan21さん (mitra)
2009-10-16 23:56:45
戻ってきていただいてありがとうございます!
あ、やっぱり名前似てますね~(というかペルシャ語起源か)。
そして、トルコで売られているものは名称の違いではなく産地の違いなのですね、なるほどなるほど。トルコでも南の方(シリア国境とか)ではデーツが採れるのかと勝手に思っていました。
柘榴とオレンジのミックス、私もどこかで飲んだ記憶があるなあ、トルコではなかったと思うのですが。あれ、確かに美味しいですよね!特にトルコの甘みの強いオレンジジュースだったら最高に美味しいことでしょう!
ところで、あ!やっぱりと思ったのですが、yokocanさんからのメールは以前から(去年より)毎回届いているのですが、ひょっとしたら私の方から差し上げる分が届いていないのでは?と、感じておりました。(私が出した分へのご返信がなかったので)う~ん、イランから出していたのが届かない原因なのだろうか・・・。
でも、今回こうしてここに書いていただけたことによって、「すれ違いメール」になっていたことにようやく気付きました。ご迷惑をおかけしました。ちなみに今日さきほどもメールをさせていただいたのですが、それは届いているでしょうか?
そういうわけで息子さんの割礼のお祝いの言葉も時期外れになってしまって残念ですが、この場を借りて改めてお祝いの言葉を言わせてくださいね!おめでとうございます!!!(もし、今日のメールが届いているようでしたら、過去に贈った分も再送いたしますね)
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不思議な物体 (オルサ)
2009-10-20 00:19:36
デーツを初めて食べたのは、チュニジアでした。枝付きのデーツを観た時、虫のようなその不思議な物体がいったい何なのかわからず、恐る恐る口に入れたところ、想像に反し、甘い干し柿のようなおいしさで驚いたのを覚えています。

その後、ヨーロッパでも売られていて、一般的に食べられていることを知り、さらに、日本でも輸入食品店で売られているのを知りました。ただ、日本で買ったデーツは、砂糖のような甘さしか感じられませんでした。

ラマダーン中、空腹を覚えながら日没後にDeglet Nourのデーツを味わってみたいです。
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オルサさん (mitra)
2009-10-20 19:39:44
地中海好きのオルサさんのデーツ・デビューはチュニジアなんですね!
虫のような物体・・・確かに!見かけはお世辞にもおいしそうとは言えません。でも、砂漠地帯で食べたあの甘~い味は、なぜか一生ものの想い出の味、なのですよね。
日本で購入されたデーツはどこ産だったのでしょうね。私も日本ではなかなか美味しいデーツに出逢えないのですが、ペルシャン・レストラン「ザクロ」で購入したイラン産は、まあまあの味でした。(yokocanさんへのコメントに記した「ロターブ」という種類)
そうそう、ラマダーン中空きっ腹の断食明けの一粒は、格別でしょうね!
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