温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

館田温泉

2011年08月27日 | 青森県
 
津軽平野にたくさん点在する温泉公衆浴場のひとつです。駅から近く、また家族風呂もあるようですから、何かと利便性は良さそうです。いかにも青森県公衆浴場らしい飾り気が無くおとなしい外観。
玄関にある券売機で料金を支払います。受付前の休憩スペースでは、常連の爺様婆様が長椅子にゴロンと横たわっていました。


数年前にリニューアルされたらしく、更衣室は広くて清潔、使い勝手良好です。


銭湯らしく浴室にはカランがズラリとたくさん並んでおり、数えてみたら22ヶ所ありました。いずれもシャワー付きの混合栓です。青森県の公衆浴場は、どんな新しい施設でも昔ながらの押しバネ式カランを採用する傾向にありますが、こちらでは家庭でもよく使われる蛇口式のごく一般的なカランが設置されていました。この方が使いやすいですよね。

 
浴槽は左から大きな槽、2人サイズの浅めの槽、くるぶしまでしか浸からない浅い小さな槽の順番に3つが並んでいます。3本の塩ビパイプが突き出た湯口には湯の花を漉し取るために白いナイロンの網がかぶせられ、その中には赤い固形物がギッシリと溜まっていました。
加水されているものの湯加減は熱め。加水が手伝っているためかお湯の投入量は多く、浴槽の縁からふんだんにオーバーフローしています。お湯は薄い黄色を帯びた透明、津軽平野の温泉にしては薄い塩味、ほぼ無臭。


内湯から屋外に出ると、リニューアルの際に増設された露天風呂が据えられています。浴槽は御影石風の石板貼りで5~6人サイズ。県道に面している上、周囲は住宅であるため、露天風呂は板塀に囲まれており、景色を眺めることはできませんが、風はちゃんと流れてきますから、熱い内湯でのぼせた体を冷ますにはちょうど良いスペースだと思います。露天の上には梁が渡されているのですが、この梁や柱に用いられている材木には建設時に付いちゃったと思しき足跡がたくさん残されており、ちょっとガッカリ…。
外気の影響か加水が多いのか、内湯よりも露天の方が入りやすい湯加減でした。当然こちらも掛け流しで浴槽縁からしっかりお湯がオーバーフローしており、内湯同様に湯口にはネットが被せられていますが、網の目が粗いのか、あるいは外気に冷やされるためか、内湯より露天の方が湯中の湯の華が多く、小豆色をした大小の浮遊物がたくさん舞っていました。


露天浴槽の脇には一人サイズの水風呂もありました。井戸水を利用しているのでしょうか、水が溢れる流路の石板タイルは赤く染まっており、ここの地下水は金気が多いのかもしれません。

一見するとごく普通の公衆浴場ですが、館内の設備は使い勝手がよく、お湯はしっかり掛け流し、しかも露天風呂も用意されているというなかなかの充実ぶりです。こんな良質な温泉浴場が当たり前のようにたくさん存在している青森県って天国のような土地ですね。


館田源泉
ナトリウム-塩化物温泉 58.8℃ pH7.76 419L/min(動力揚湯) 溶存物質4.555g/kg 成分総計4.555g/kg
ナトリウムイオン1592mg/kg(97.01mval%) 塩素イオン2435mg/kg(93.87mval%) 加水あり・加温循環消毒なし

弘南鉄道弘南線・館田駅より徒歩8分(約600M)
青森県平川市館田前田278-3  地図
0172-44-8565

夏期5:00~22:00、冬期6:00~22:00
300円(朝8:00までは200円)
100円リターン式ロッカー・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント (16)
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福島県某所 二子浦温泉

2011年08月26日 | 福島県

福島県の浜通り地方某所に湧くファンの間では有名な「二子浦温泉」は、2005年に地元の水産会社のオーナーさんが「地元への恩返し」を目的として、ご自身の敷地に湯小屋を建て、掘り当てた温泉をわずか100円という超廉価で一般開放している温泉浴場でして、私も2年ほど前に訪れたことがありますが、当地は先の大震災で津波被害を受けた地域であるため、もしかしたら悲しい事態になっているのでは、と心配しておりました。しかしネット上の情報を調べてみると、震災後に訪問した方のブログを発見し、しかも以前より施設が拡大されているらしいので、これは是非自分の目で確かめなきゃいけないと思い立ち、先日行ってきました。
この温泉を紹介する温泉ファンの皆さんは、その多くが所在地など詳細な情報を隠した上でレポートなさっていますが、実際には福島民友新聞で何度か取り上げられているほど、外来者に対してオープンな施設なのです。しかしながら浴場自体がかなり小さく混雑が予想されること、そしてあくまで地元民の憩いの場であり、外来者が大挙すると地元の方に多大な迷惑が及んでしまうこと、などを考慮して、私も他の温泉ファンの皆さんと同様、場所の特定は遠慮させていただきます。
国道沿いに立っている看板の画像を掲載いたしますので、もし行かれる方はこれを参考になさってください。


水産会社敷地内の湯小屋。外観は震災前と特に変わっていないようですが・・・あれ、小屋の右隣にある簾で囲まれた区画は何でしょう?

 
15時頃に訪問しましたが、既にお風呂では地元の方々の賑やかな話し声が響いてました。本当にお湯に入るためだけの極めてシンプルな無人の小屋です。ひと昔前の海の家のシャワーを連想させてくれます。料金は100円。壁掛けされている料金箱にちゃんと入れましょう。


二子浦温泉の最大且つ魅力的な特徴は、漁業用の青いプラスチックコンテナを浴槽として活用している点でしょう。農業用コンテナを浴槽に転用した例は青森県の八幡館温泉がありますが、いずれもとっても印象強く、お湯の質が良好であるのも共通しているように思います。
コンテナ風呂は震災前と変わらず、なみなみとお湯を湛えていました。浴室内にはカランが無いので、桶で直接湯船のお湯を汲んで掛け湯することになります。湯船に体を浴槽に沈めるとザバーっと勢いよくお湯があふれ出ていき、豪快な気分に浸れます。このコンテナには一度に3人入れるサイズ。コンテナ内には目盛がふってあり、一番上には1000と記されていました。長湯したくなるようなちょっとぬるめの湯加減で、極上のお湯です。当然ながら完全かけ流し。


外から見えた簾の囲いの中には露天風呂がありました。内湯と同じコンテナのお風呂です。以前訪問時には内湯しかありませんでしたが、先客の地元の方に伺ったところによると、2~3か月前に増設されたんだとか。震災に負けるどころか、むしろ増設してパワーアップされていたのであります。しかも料金は据え置き。大変な時にもかかわらず奮起なさったオーナーさんには心から感謝です。わずか100円でこんなお風呂に入れるのですから、なんだか申し訳ない気がします。
無色澄明のお湯は、透き通った見た目とは裏腹にかなり成分が濃く強力な性格でして、口に含むと苦しょっぱく、仄かにミシン油のような匂いが感じられ、溶けている食塩によってスベスベ浴感を有し、決して熱いお湯ではないのに(むしろどちらかと言えばぬるい方なのに)温まりパワーが強力で、いい湯加減だからと長湯すると体力が奪われて、たちまちヘトヘトになってしまうほどです。湯上りもなかなか汗が引かず、着替えた後の私はしばらく全身汗ダルマ状態になってしまいました。ということは冬には湯冷めを防いでくれるわけでして、寒い時期には心強い味方になってくれるでしょう。濃いお湯が完全かけ流しにもかかわらず100円なんですから、本当に恐縮しちゃいます。


浴場は国道の山側ですが、一方の海側には源泉井と温泉スタンドがあります。

 
こちらも無人ですが、箱にお金を入れればスタンドからお湯を汲むことが可能。スタンド利用には料金設定が無いようですが、投入されたお金は福祉団体へ寄付されるそうでして、つまりいくら入れるかは利用者の心次第というわけです。私財を投じて温泉を皆さんへ提供し、得た料金は工費回収へ宛てずに福祉へ寄贈するという、まさに神様仏様のようなオーナーさんの慈善心を尊敬せずにはいられません。

ちなみに常連さんのお話によれば、巨大地震の発生当時、男湯には2人が入浴中だったそうですが、あまりに強烈な震れのため浴槽(コンテナ)に掴まるのが精いっぱいで、小屋に大した損傷はなかったものの、小屋のすぐ裏に迫っている崖が崩れてくるんじゃないかという恐怖に駆られ、とても正気ではいられなかったんだそうです。不幸中の幸いというべきか、津波はこの小屋まで襲ってこなかったようですが、ただでさえ大地震は恐ろしいのに、運悪く入浴中はスッポンポンだったのですから、この上ない無防備なわけで、その恐怖感たるや想像を絶します。
何はともあれ震災を乗り越え、災害に負けるどころかむしろ浴槽が増強されて益々常連から愛され、いまだ復興途中にある地元の方々にぬくもりを提供しつづけているこの温泉は、地縁が強固な土地ならではの助け合いの精神の象徴ではないかと思いました。


温泉分析表掲示なし(保健所の許可証は掲示あり)

福島県いわき市某所(律令時代の地名が冠された漁港付近)

14:00~20:30(21:00までには出ること)
100円
備品類なし

私の好み:★★★

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蓼科温泉 共同浴場(プール平温泉浴場)

2011年08月24日 | 長野県
 
高原リゾートとして名を馳せる信州蓼科に、源泉が掛け流されている庶民的な共同浴場があると聞いたので、高山植物の宝庫である車山高原をトレッキングした某日、その汗を流すべく訪れてみることにしました。蓼科湖の北東に位置するプール平という地区に立地しており、目の前は蓼科郵便局、プール平バス停も至近にあり、斜前の広い駐車場も使え、利便性は抜群です。また界隈には別荘が多く、私のようにハイキングや登山の帰りに利用する客も多いため、施設内にはコインランドリーも設けられていました。玄関の券売機で入湯券を購入し、すぐ隣の番台でそれを手渡して中へ。


至ってシンプルな造りの脱衣所。程ほどのスペースが確保されているので、ストレスなく着替えられました。なお、この部屋から屋外へ出られるドアがありますが、そこには単にスノコが敷かれているだけで、周囲はブロック塀に囲まれていて外の景色は見られず、特に何かがあるという訳ではありません。お湯で火照った体をクールダウンさせるためのスペースなのでしょうか。

 
浴室もやはりシンプルな造り。中央にタイル貼りの浴槽が据えられ、その真ん中よりやや手前に大黒柱と思しき立派な柱がドーンと立っています。浴槽の両側にはカランが並んでおり(浴槽左側に5ヶ所、右側に6ヶ所)、そのカランから出てくるお湯は矢鱈に熱いので、もしかしたら源泉使用かも。

 
木箱に囲われたコック付の湯口からは、ボコボコと音を立て飛沫を上げながら源泉が浴槽へ注がれています。源泉そのままでは熱いので、源泉の栓に並行して冷水の栓も設けられ、お湯と一緒に加水されています。源泉投入量はとても多く、浴槽の縁から大量にオーバーフローしていきます。
お湯は無色透明、匂いはあまり感じられなかったのですが、口に含むと口腔内をちょっと収斂させる酸味が確認できました(お湯は飲用不可とのこと)。湯中には白い湯華がちらほら舞い、細かい気泡も見られ、お湯の中でじっくり浸かっていると、やがて肌に薄らと気泡が付着してきました。また、印象に残るほどではありませんが、温泉成分中の食塩の影響か、弱いツルスベ浴感が得られ、食塩と芒硝のダブルパワーによって湯上りの温まりも強めです。寒い冬に入湯したらお湯の実力(保温効果)が実感できそうです。

共同浴場ですのでお風呂としての面白みには欠けますが、界隈の日帰り可能な入浴施設としては珍しく掛け流しの新鮮なお湯に入ることができ、しかも安くて便利なためか、私の訪問時にも客足は途絶えることがなく、大人気の様子でした。気軽に立ち寄れる使い勝手の良いお風呂でした。


300t貯湯槽(三室平6・7・8・9・10号の混合泉)
ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 61.0℃
加水あり(源泉温度が高いため)、加温・循環・消毒なし

長野県茅野市北山4035-170  地図
0266-67-2100(東洋観光事業)

11:00~21:00
400円
100円リターン式ロッカー・ボディーソープあり、ドライヤー無し、シャンプー有料

私の好み:★★
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那須湯本温泉 雲海閣

2011年08月24日 | 栃木県
 
那須湯本のメインストリートから一本裏に入ったわかりにくい場所にある、かなり渋い(というか草臥れた)外観のお宿です。決して「る●ぶ」や「まっ●る」の誌上に掲載されることはないでしょうが、なぜか温泉ファンのサイトでは頻繁にこちらのお宿をお見かけし、しかもみなさんの評価が高いので、どんなものか日帰り入浴で行ってみることにしました。


帳場で料金を支払うと「浴室は階段を下りた奥です」と簡単な説明を受けました。帳場周りは古いながらも、頑張って現代風の旅館らしい雰囲気を作り出そうとしている努力が垣間見られます。浴室への通路途中にはマッサージチェアーが置かれています。

 
説明に従い帳場奥の廊下へと進むのですが、この廊下と階段が結構長い。部分的にトンネルになっているのですが、壁の塗装は剥がれ、不気味なほど暗く、このような雰囲気に慣れていない方を連れていったら、間違いなく不安がること必至でしょう。ドリフのコントで志村がお客役のいかりや長介を脅かす舞台になりそうな感じです。


トンネルを抜けると今度は木の階段ですので、ひたすら下りていきます。コンクリの無機質な廊下と違い、このような木造の階段は湯治場のような情緒があっていいですね。お宿の玄関はメインストリートより高い場所に位置しているのですが、浴室はそれよりかなり下がっており、階段を下りきった浴室棟の廊下から外を見ると、そこから数十メートル先にメインストリートが同じ水平位置で見えました。

 
男女別内湯入口の柱には掠れた墨痕で「硫黄泉(男)」と書かれた札が下げられています。もちろん「硫黄泉(女)」もありますよ。脱衣所は至って簡素なものです。

 
浴室は湯治場風情たっぷり。窓は隙間だらけできちんと閉まらず、腰部のブロックは一部剥がれ落ち、全体的にちょっと草臥れすぎかもしれませんが、それが却っていい味を醸し出しています。洗い場はスノコ状に板が張られ、カランはありません。貫禄溢れる木の浴槽は二分割されており、綺麗に白濁した鹿の湯のお湯が張られていました。観光名所「鹿の湯」はいつも混雑しており、旅の恥はかき捨てとばかりに掛け湯をせずに入る客が目立ったり、あるいは熱い槽の周りで偉そうな爺様が胡坐をかきつつ、たまに入ってきてはその熱さに驚き尾っぽを巻いて逃げ出す一見の客を鼻で嗤って小馬鹿にしている光景をしばしば目にして、実に不快な思いにさせられるのですが(施設やスタッフが悪いのではなく客が悪いのです)、ここはそんな険悪修羅な雰囲気とは無縁、この時も私がひたすらお湯を独占でき、静かな環境で鹿の湯のお湯をじっくり堪能することができました。(失礼ですが)ボロい建物だからこそ、わかる人しか来ないんですね。


白濁した硫黄の湯はスベスベ感良好、鹿の湯らしいレモン汁のような強い酸味+苦味+渋みを有し、硫化水素臭が浴室内に漂います。2分割された浴槽は、向かって左側が熱くて訪問時は45.5℃、右側は万人向けの41.0℃でした。両方の浴槽を交互に入ることにより、刺激ある入浴が楽しめました。両浴槽の真ん中には湯口が設けられおり、そこに小さな穴の開いた木の栓が突っ込まれ、その穴の大きさを変えることによって源泉投入量を調整し、以て湯加減もコントロールしています。湯口上には穴の大きさが違う栓、そしてそれを叩くための玄能が並べられています。手間がかかる原始的な方法ですが、加水することなく温度を調整できるので、お湯の良さを損なずに済みますね。昔ながらの面倒な方法を敢えて選択しつづけているのは、宿がお湯を大切にしている証だと思います。いわずもがな湯使いは掛け流し。

 
ちなみに上述の暗い階段の途中には右に通路が分かれており、その先には以前、奥の沢噴気泉を引いて利用していた「明礬泉」浴室があったそうですが、ちょっと覗かせていただくと、今では全く使われておらず、浴槽も空っぽ、あたかも廃墟の如き状態でした。こちらのお湯も入ってみたかったのですが残念。

昔ながらの湯治場風情に包まれながら、ゆっくり静かに鹿の湯の源泉を堪能できる穴場のような存在。温泉ファンが太鼓判を捺すのも十分納得です。


鹿の湯・行人の湯 混合源泉
酸性・含硫黄-カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型)
68.4℃ pH2.5 蒸発残留物814.8mg/kg 成分総計1040mg/kg

JR那須塩原駅か黒磯駅より東野交通・那須湯本or那須ロープウェイ行バスで「湯本一丁目」バス停下車徒歩3分
栃木県那須郡那須町湯本33  地図
0287-76-2016

日帰り入浴8:00~21:00
400円(一応1時間までらしいのですが、アバウトのようです)
備品類なし

私の好み:★★★
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奥山田温泉 山荘しなの木

2011年08月23日 | 長野県
 
笠ケ岳の山腹に広がる高原の牧草地「山田牧場」。夏は文字通り牧場として、冬はスキーゲレンデとして人気を集める信州でも有名な観光地ですが、もともとこの地区は麓の松川渓谷のような温泉源泉には恵まれていなかったため、昭和40年代に地元の宿泊施設関係者が苦心の末にようやく松川渓谷に噴気の上がる源泉を掘り当て、そこから引湯して奥山田温泉として一般客に提供されるようになりました。松川渓谷の他の温泉群と異なり、奥山田温泉は蒸気に水を当てて人工的に造られた造成泉です。

 
この奥山田温泉に入れる山田牧場に私は何度も訪れているのですが、牧場内の施設数か所を訪れて入浴をお願いしても、ポンプ故障・休業日・日帰り入浴自体お断り、などを理由として宿側から断られることが多く、なかなか入浴する機会に恵まれませんでした。ここで入浴するには宿泊する他ないのかと諦めかけていたとき、ふとこの「山荘しなの木」の看板に掛かっている「営業中」という文字を見つけました。しかもその脇には「当館の温泉は全量掛け流しです」と書かれた札も提げられています。


この「山荘しなの木」は山田牧場へ入るウエルカムゲートの手前にポツンと位置しており、その孤立した立地ゆえに今まで見逃していたのですが、もしかしたら・・・と希望を抱き、玉砕覚悟で入浴をお願いしたら、宿のご主人は笑顔で快く受け入れてくださいました。私の訪問時はしばらく来客が無かったらしく、ご主人は私をロビーのソファーに座らせると、慌てて裏手に回ってシャワー用のボイラーを点火してくれました。


こちらのお風呂には「七福の湯」と「まきばの湯」の2室があり、この日の男湯には「七福の湯」があてがわれていました。民宿らしくこじんまりしていますが、木材や木材風樹脂建材を多用した温かい雰囲気の更衣室内はよく手入れされており、とてもきれいで清潔です。

 
洗面台の横にはアメニティー類が綺麗に並べて揃えられています。もちろんこれらは宿泊客用でしょうから、一介の日帰り入浴客である私は使用を遠慮しました。

 
浴室は内湯のみのシンプルなものですが、民宿とは思えない立派な造りで、浴槽は2~3人サイズ、天井は木材風の樹脂建ですが、壁は本物の木材、そして腰部や床はタイル貼りです。洗い場にはシャワー付き混合栓が2基設置されており、水栓金具は硫化して青黒く変色しかかっていました。


室内にはほんのり硫化水素の匂いが漂っており、ワインレッドの塩ビパイプから投入されるお湯は薄っすら白く濁るもののほぼ無色透明で、湯船の中では白い小さな湯華がたくさん浮遊しています。口に含むと、石膏のような粉っぽい味+砂消しゴム的な硫黄風味+苦み&渋みが感じられ、苦みや渋みは弱いのですが不思議と口腔の中にしぶとく残りました。浴槽のお湯は完全放流式(掛け流し)です。
いかにも造成泉らしく、硫黄(というか硫化水素)らしさを有しているけれども全体的な成分は薄いので、えてして刺激が強い傾向がある天然の硫化水素型硫黄泉よりも肌や身体への当たりがマイルドですから、濃い温泉が苦手な方には、むしろこのお湯のような人工の造成泉の方がおすすめだったりします。実際にこちらのお湯はとても優しい浴感だったので、私は瞑目しながらじっくりゆっくり浸からせていただきました。(ちょっと強引な解釈ですが、箱根の早雲山造成泉に近いお湯のように感じられました)
突然の訪問にもかかわらず、快く入浴を受け入れて下さった宿のご主人に感謝です! いいお湯でした。


奥山田温泉 五色上
単純硫黄泉 (蒸気泉と表流水の混合泉 湧出地:高山村大字奥山田3682-9)
72.9℃ pH6.8 湧出量不明(掘削による自噴を水に溶解) 溶存物質747.8mg/kg
ナトリウムイオン107.8mg/kg(62.87mval%)、塩素イオン133.4mg/kg(51.37mval%)

長野県上高井郡高山村奥山田3681-379  地図
026-242-2916
ホームページ

日帰り入浴可能時間不明(私は16:00頃に訪問しました)
400円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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