温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

御崎海浜温泉 浜の湯

2014年01月30日 | 北海道
 
前回問り上げた「恵山温泉旅館」にて入浴を済ませた後、その近所にある御崎海浜温泉「浜の湯」の現況を確認してみることにしました。海岸のコンクリ護岸下に設けられたこの共同浴場は、特徴的な佇まいが実に魅力的であり、以前から温泉ファンにはよく知られていた存在でしたが、一部の外来入浴者によるマナー違反が目立ってきたため、数年前から町内住民以外入浴禁止となっていまい、道路に設置されていた大きな案内標識も撤去されてしまいました。一般論として、いままで外来者の利用を受け入れていた地元民のための共同浴場が、一度でも外来者に対して門戸を閉ざしてしまうと、その後外来入浴を復活させることは稀有であるため、そのセオリー通りに考えていた私は、もうこの浴場で入浴できる機会は無いのだろうと諦めておりました。
そんな先入観を持ちながら、あくまで現状確認するだけの軽いつもりで現地へ行ってみますと、浴場周りの外観は以前と殆ど変わっていなかったのですが、入口手前に立っている柱に括り付けられている札には「この温泉は御崎町内会が管理しています」とは書かれているばかりで、以前にあった町民以外の利用を謝絶する文言は記されていません。さらに・・・


 
入口前のコンクリ壁には、湯浴みしているお姉さんのイラストと共に「ご利用の皆さまへ」と題された案内板には、
この温泉は、御崎町内会の皆さまにより管理されています。きれいに使いましょう。なお、温泉ポンプの維持管理のため、ご入浴は午後八時三十分までとしますので、ご理解とご協力をお願いします。
と説明されており、ここにも外来者お断りの文言が一切ありません。それどころか、明らかにこの説明文は外来者の利用を前提としている書き方です。もしかしたら…という淡い期待を抱きながら中の様子を窺っていると、タイミング良く、前カゴにお風呂道具を載せた自転車に跨ったお爺さんがやってきて、このお爺さんに入浴して良いか聞いてみたら、恐ろしく強い訛りで半分近くヒヤリングできなかったものの、入浴して構わないというニュアンスが伝わってきましたので、ありがたく入らせていただくことにしました。いつの間にやら、地元民限定という制限は解除されていたんですね。


 
階段を下りて浴場へ入ります。防波堤の一部を山側へセットバックさせ、その上にアクリル波板の屋根を載せてお風呂にしている構造は、拙ブログで以前取り上げている鹿児島県トカラ列島・中之島の「西区温泉」「東区温泉」に非常によく似ています。しかしトカラ列島・中之島と異なって、こちらの浴場は混浴となっており、脱衣ゾーンも男女共用である上、水着などの使用も禁じられているため、女性の方にとっては心理的なハードルがちょっと高いかもしれませんね。
入浴ゾーンとの仕切り塀には青い料金入れが括り付けられているので、こちらへ寸志を納めます。



入浴ゾーンは立派なコンクリ造で、床には石板が敷き詰められていますが、湯船から溢れ出るお湯の温泉成分が付着することによって、全体的に赤茶色に染まっており、元の色が全然わかりません。浴槽は6人サイズで、少しでも温泉らしい風情を醸し出そうとしているのか、山側の擁壁には岩が積まれて装飾されていました。


 

岩積みの隙間から突き出ているパイプにホースが接続され、そのホースによって槽内湯面下で源泉が吐出されています。その勢いも量も豊富でして、ホース口からは気泡が無数に上がっており、また吐出される勢いによって湯面では常に小波が立っていました。そして浴槽縁からは惜しげも無くドバドバとオーバーフローしており、上述のように床一面を赤茶色に染めていました。

湯船のお湯は薄い橙色を帯びた弱い懸濁で、ホースから出てくるお湯を手に汲んで口に含んでみますと、大雑把に表現すれば重炭酸土類泉的な味と匂いを有しており、具体的には石膏味+金気(鉄系)味+諸々の土類味+弱炭酸味、そして金気臭と土気臭がそれぞれ感じられました。また湯口では石膏を焼いて焦がしたような匂いもふんわり香ってきました。
プリミティブなお風呂ですから、湯船に対して何らかの手を加えるような設備も無く、加水加温循環消毒が一切ない完全なる掛け流しのお湯であり、加水など一切していないにもかかわらず、湯船では42℃前後の絶妙な湯加減となっていました。これぞまさに恵山の恵みですね。湯船で全身浴しているときに感じられる鮮度感は抜群です。重炭酸土類や金気が多いお湯ですから、湯中で肌を擦るとキシキシとした浴感がはっきりと伝わり、またお風呂上がりも肌からは金気臭や土類臭がふんわりと漂ってきました。前回の「恵山温泉旅館」と同じく恵山の火山活動が生み出した温泉ですが、強い酸性の明礬緑礬泉である「恵山温泉」とは全く異なり、こちらは肌への刺激が少ない重炭酸土類泉的な特徴を呈するお湯である点が、実に興味深いところです。いずれも甲乙つけがたい良泉である点は同じですけどね。


 
浴場の前を横切る道路を跨いだ崖下にはこのような櫓が立っているのですが、先程のお爺さんの話によれば、どうやらこれが源泉井(御崎1号井)のようでして、30メートルほど掘ってポンプアップしているんだそうです。今回入浴を共にした地元のお爺さんは、外来者の利用に対して今でもかなりナーバスになっており、地元の皆で出資して備品の揃えてこまめに手入れしているにもかかわらず、お風呂を荒らす者やゴミを散らかす者、酒盛りをする者、そして寸志泥棒をする者が現れて困っているんだ、と30分以上にもわたって私一人を相手に熱弁をふるっていらっしゃいました。よほど腹に据えかねていたのでしょう。
どのような経緯で外来者利用が再び可能となったのかわかりませんが、かつてのように大きな案内標識を出すこともなく、現在は知っている人だけが訪れる温泉として、来る者拒まずの姿勢でひっそりとお風呂を開いているような雰囲気です。せっかく外来利用が再開されたのですから、いつまでも我々外来者が利用できるよう、地元の方々への配慮を忘れずにいたいものですね。


御崎1号井
カルシウム・ナトリウム・マグネシウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉
詳細な数値は掲示なし

北海道函館市恵山町御崎 (地図による場所の特定は控えさせていただきます)

開場時間不明~20:30
寸志
備品類なし

私の好み:★★★
コメント
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