温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

喜龍温泉 玉乃湯

2014年01月09日 | 青森県
 
私の温泉めぐりにおいては、わかりやすい場所にある施設ほど後回しにする傾向があるのですが、今回取り上げる青森県藤崎町の「喜龍温泉 玉乃湯」もその典型でして、2本の国道(7号と339号バイパス)が交わる交通量の多い交差点付近に位置していて、入口には大きなゲートが構えていることを十数年前から知っていたにもかかわらず、なぜか今まで入浴する機会が無く、先日ようやく初訪問を果たしてまいりました。



エントランスのドアには「自分のはきもので帰りましょう」と書かれた札が掲示されていました。ってことは、他人の靴を履いて素知らぬ顔で帰っちゃうマヌケな輩がいるんですね。普通の靴ならともかく、爺さん婆さんが履く靴ってみんな地味で同じような造りですし、また似たような製品が多いゴム長の使用率が高い地方でもありますから、気づかないうちに他人の靴を履いちゃう事象が発生するのでしょう。



妙にガランとした玄関ホールの奥に番台があり、ニコニコしながらちょこんとと座っているお婆ちゃんに料金を直接支払います。上述のようにアクセス面はかなり良いのですが、なぜかお客さんで混雑しているような気配が感じられず、余計なお世話ですが、ちょっと気がかりです。


 
スピーカーから演歌が流れている脱衣室は、まさに青森県の銭湯の典型的なスタイルです。リノリウム敷きの広い室内の片側には大きな鏡が備え付けられ、その反対側にある窓の下にはたくさんの棚が並んでいます。また中央には腰掛けと灰皿が置かれており、湯上がりでサッパリしたご様子のお爺さんが、腰にタオルを巻いた姿でその腰掛けに座りながら紫煙を燻らせていました。
そんなお爺さんを尻目に私が浴室へ向かおうとすると、浴室入り口のガラス扉に張られた「源泉かけ流し」という文字が目に飛び込んできました。屋外のゲートにも同じフレーズが記されていましたが、それほど湯使いには自信があるということなのでしょうか。


 
浴室もまた青森県の温泉銭湯に見られる典型的なレイアウトでして、即ち広い室内の中央に大きな浴槽が据えられ、その周りを余多の洗い場水栓が囲んでいます。男女両浴室を仕切る塀には、温泉名称に因んでいるのか、トラックの運ちゃんが好みそうなタッチの龍のタイル絵が飾られており、またその上には二昔前の高速道路を照らしていそうな街路灯タイプの大きな照明が設置されています。



浴室入口のすぐ前にも上画像のような小さな洗い場があって、銭湯の壁絵の王道である富士山と白砂青松が小さく描かれており、水栓からはちゃんと水やお湯が出てくるのですが、タイル絵の上には桶が積まれていますし、その設置場所や大きさから考えますと、洗い場というよりも、脱衣室と浴室とを視覚的に隔てる衝立のような役割を果たしているのでしょうね。


 
画像左(上)は浴室の奥から脱衣所方向を見た様子です。洗い場は浴槽を挟んで左右に配置されており、いずれもお湯と水の押しばね式カランの組み合わせで、その数は窓側に14ヶ所、男女両浴室の仕切り側に10ヶ所の計24ヶ所です。なお、カランのお湯は源泉使用です。またシャワーは壁直付の固定式ですが、全てのカランとペアになっているわけではなく、カラン一つ毎に取り付けられていました(つまり窓側7で仕切り塀側は5)。洗い場の一部には立って使うシャワーも用意されていました。


 
ヨモギ色に塗られた小部屋はサウナでして、その傍らにはステンレス槽の水風呂も据え付けられています。この水風呂に注がれている水は井水なのでしょうか、温度は20℃近くあり、少々金気が感じられました。またその金気の影響なのか蛇口も真鍮色に染まっていました。訪問日は肌寒かったのでこの水風呂は利用しませんでしたが、夏でしたら是非入ってみたいものです。


 
浴室の一番奥には泡風呂や打たせ湯も設けられていました。両者とも温泉使用です。


 
浴室の真ん中で漫然とお湯を湛える大きな主浴槽は、20人前後は余裕で入れそうな容量があり、一見すると脱衣室側と奥側で2:1に分割されているように見えるのですが実際には奥側がちょっと浅くなっているだけでして、槽内に立つ仕切り塀が低くて湯面下で留まっているために両者のお湯に違いは見られません(両者を仕切る塀は深さの違いを客に認識させるためのものかも)。
その仕切り付近の浴槽縁に設けられた上向きの湯口からしっかりした量のお湯が間断なく浴槽へと投入されており、きちんと掛け流されています。

お湯は僅かに黄色掛かっているように見える透明で、湯船においては無味無臭ですが、湯口にて微かにタマゴ的な味と匂い、そしてアルカリ性泉的な微収斂が感じられました。味と匂いに関してはタマゴ的と述べましたが、感じられた知覚が微少なのであまり自信はなく、臭素的あるいはガス的だったかもしれません。湯加減は43℃前後。湯船に浸かると、少々のニュルニュル感を伴うツルスベの心地よい浴感が楽しめました。

余談ですが、こちらの温泉の源泉名は「豊田温泉」であり、以前取り上げたことのある近所の「藤崎町藤崎老人福祉センター」は「西豊田温泉」です。両者は数百メートルしか離れていないのに、こちらは単純温泉である一方、「西豊田温泉」は食塩泉であるという違いがありますが、いずれもやや黄色掛かっている上、ツルスベ浴感がはっきりしている点は共通しています。こちら(龍喜温泉)の方が塩気が少ない分、体への負担は軽くて入りやすいような気もしますが、厳冬期の温まりは塩分の多い「西豊田温泉」に軍配が上がるわけでして、つまり、気候や客の好みに合わせて双方のいずれかを選択できるのですね。温泉資源が豊富な津軽平野ならではの贅沢な環境です。
広いお風呂に注がれるお湯はなかなかの良泉でした。


豊田温泉
単純温泉 43.0℃ pH記載なし 成分総計等の記載なし
Na+:186.6mg,
Cl-:227.0mg, HCO3-:152.7mg,
H2SiO3:140.3mg,
(昭和57年2月26日)
夏季は温度調整のため加水あり(冬季は源泉のまま)

JR五能線・藤崎駅より徒歩8分(650m)
青森県南津軽郡藤崎町藤崎字豊田58-19  地図
0172-75-5666

8:00~22:00
350円
ロッカー(100円リターン式)・ドライヤー(有料30円/5分)あり、番台にて基本的入浴道具販売有り

私の好み:★★
コメント
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