温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

下風呂温泉 さつき荘(2013年10月再訪・宿泊) その2(お風呂編)

2014年01月03日 | 青森県
前回記事「下風呂温泉 さつき荘(2013年10月再訪・宿泊) その1(お部屋・料理編)」の続編です。

 
さてお風呂へと参りましょう。浴室の場所はリニューアル以前と同様でして、廊下の突き当りにあるこの勝手口より一旦屋外へ出てから、スノコの上を歩いて離れの浴室へ向かいます。画面には写っていませんが、このスノコから山側を見上げると、未成線である大間線のアーチ橋がすぐ傍に聳え立っています。


 
従前同様に浴室は一室のみですから、利用の際は貸切となり、扉の脇に掛かっている「どうぞお入りください」の札を裏返して「入浴中」にしておきます。


 
扉を開けステップを上がって脱衣所へ(上の画像は上がったところから浴室入口を見下ろしています)。


 
総木造の脱衣室に設けられている窓は突き出し窓になっているのですが、これを開放する際の仕組みが実に原始的でユニーク。というのも、開けっ放しにする場合には、蝶番の近くの穴にステンレスの釘を挿してつっかえ棒にするだけなのであります。せっかく改修したのだから、ちゃんとしたサッシを採用すれば良いのに…と思ってしまうのですが、硫黄の湯けむりが漂う当地では金属の腐食が激しく、立派なサッシを導入したところですぐにダメになってしまうため、窓には木材を使用し、金具も釘だけにしていつでも交換できるようにしているわけですね。ちなみに下風呂の温泉街に漂う硫黄のパワーというのは本当に恐るべきものがあり、宿の方曰く、テレビなどの電化製品は新品でも僅か1年程度で故障しちゃうそうですよ。


 
浴室に関しては、基本的なレイアウトは従前のものを踏襲しているものの、上屋自体はすっかり綺麗に作り直されていました。そればかりでなく、洗い場にはシャワーが新設されて、使い勝手も向上しております。床はスノコ敷きなのですが、導入1年で早くも腐食が見られた、半年前の春に張り替えたそうです。温泉のお風呂を維持管理することって、本当に大変なんですね。



常時硫黄のお湯に触れる浴槽は腐食に強いFRP製で、大きさとしては5~6人サイズといったところ。訪問時の湯加減は体感で44~5℃でして「もし熱ければ、湯口を板で塞いで、ホースの水で薄めてください」とのことでしたが、熱い風呂には百戦錬磨(のつもり)の私は、多少の熱さでしたら寧ろ気持ちよく入れますから、加水せずにそのまま入っちゃいました。


 
温泉ファンの間ではおなじみの知識かもしれませんが、黒湯と称されることもある海辺地2号泉に浴用で入れるのはこの「さつき荘」のみ。源泉から引かれてきたお湯はパイプから木の枡に落とされ、そして浴槽へと注がれています。その木の枡の中にはこの源泉の特性を象徴するかのような黒い湯の華がたくさん沈殿していました。お湯からは焦げたようなタマゴ的硫化水素臭が放たれ、口に含むと甘塩味とともに口腔内に痺れをもたらす強い苦味が感じられました。



湯船に浸かる前のお湯は灰白色を呈しており、湯面には薄い膜が張っているのですが、私が湯船に入ることによってお湯が撹拌されると、底に溜まっていた沈殿が舞い上がって、たちまちお湯が黒っぽい鼠色に濃く濁り始めます。上画像ではわかりにくいのですが、よく見ますと右手前側と左奥側でお湯の色が異なっているのがおわかりいただけるかと思います。状況によってはもっと黒く濁るそうですが、この日はこれ以上濃くなることはありませんでした。しかしながら入浴中の肌には細かい黒い斑点が付着しますので、お湯に黒さをもたらす硫化鉄がたくさん存在していることを実感することができます(同様の現象は、信州の七味温泉「恵の湯」でも体験できますね)


 
湯船の底にはたくさんの湯泥が沈殿しており、このようにケロリン桶で容易に掻き出すことができます。桶に汲んだ泥を見ますとかなり黒いですよね。



私が泊まった晩には私以外にお客さんがいなかったため、終始このお風呂を独占することができました。といっても、何時間も入り続けることはできませんから、夜3回、朝1回の計4回に留めましたが…。ちなみに夜のお風呂はこんな感じです。明かりは必要最小限に抑えられているので、軽く瞑目するだけで邪念が取り払われ、個性的なお湯とじっくり対峙していたら、時間の経過をすっかり忘れちゃいました。

落ち着いた雰囲気の中にさりげないセンスが輝く館内も、地元の海の幸がふんだんなお食事も、そして下風呂唯一の海辺地2号泉のお湯も、何もかもがブリリアントな新生「さつき荘」は、温泉ファンのみならず、どんな方でも間違いなく気に入ってしまうこと間違いない、実に素敵なお宿でした。今後ますます人気を博していきそうな気もしますが、お宿側としては、自分たちが提供したいサービスとペースを維持したいので、積極的には宣伝せずに温泉マニアを中心として口コミで評判が伝わっていけば良いといった感じの営業姿勢のようです。尤も下風呂温泉という土地は、観光地のくせにどちらかと言えば「来る者拒まず去る者追わず」というような、あまり商売っ気の弱い土地柄ですから、宿同士でお客を奪い合うようなこともなく、これからもそれぞれが個性を活かしながらほのぼのと共存してゆくのでしょう。客としては、新生「さつき荘」の登場によって魅力的な宿が増えたわけですから、良い意味で宿の選択に尚一層困ってしまいますね。


海辺地2号泉(再分析)
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉(硫化水素型) 57.2℃ pH5.8 溶存物質3.941g/kg 成分総計4.605g/kg
Na+:896.3mg(65.85mval%), Mg++:59.0mg(8.19mval%), Ca++:239.6mg(20.20mval%), Mn++:7.0mg, Fe++:0.6mg,
Cl-:1797.7mg(84.25mval%), Br-:3.8mg, I-:2.5mg, S2O3--:0.6mg, SO4--:273.8mg(9.47mval%), HCO3-:219.4mg(5.98mval%),
H2SiO3:71.3mg, HBO2:254.2mg, CO2:607.9mg, H2S:55.2mg,

JR大湊線・下北駅から下北交通バス佐井・大間方面行で下風呂下車
青森県下北郡風間浦村下風呂33  地図
0175-36-2625

日帰り入浴も可能ですが、料金やタイミングについては要問い合わせ
宿泊1泊2食付で8,500円(冬季は灯油代500円加算)
ボディーソープ・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (4)
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