温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

真賀温泉 真賀温泉館

2014年01月13日 | 岡山県
 
岡山県美作エリアの真庭市や苫田郡界隈は、足元湧出温泉の隠れた宝庫でして、特に真庭市湯原温泉の周辺にはこの手の温泉が数ヶ所集中していますが、今回はその中でも温泉ファンのみならず多くの観光客からも支持を集めている真賀温泉の「真賀温泉館」を訪れました。
当地は温泉地と呼ぶには心細いほど規模が小さく、今回スポットライトを当てる公衆浴場の「真賀温泉館」の他に2軒程の小規模な宿が、谷間の傾斜地で肩を寄せ合うように営業しているばかりですが、そんな物寂しい佇まいに反して、温泉街の中心に伸びる階段の入り口に掛かるゲートや温泉名を表す看板は、新しく小洒落たものに更新されていました。



黒い鋳物のゲートを潜って、温泉館がある崖上へ向かって階段を上ります。


 
駐車場の後ろ側にはお湯汲み場があり、訪問時にも持参したタンクにお湯を汲む方が列をなしていました。また階段の途中には洗濯湯と思しき湯溜まりもあり、この集落では温泉が入浴のみならず家事にも役立てられていることがわかります。


 
階段を登り切ったところが「温泉館」の玄関で、さすがに高いところですから見晴らし良好です。木造和風建築の前に立てられた紅色の和傘が絵になりますね。玄関の扉の右側には「湯賃先払御願申上候」(湯賃は先払にてお願い申し上げそうろう)と記された札が掛かっていました。和傘といいこの札といい、和の趣きど真ん中です。


 
外観の伝統的な趣きとは裏腹に、料金は下足場に設置されている現代的な券売機で支払います。とはいえ、現代的なベンダーマシンの上には、これまた伝統的な木板に筆書きされた「舌代」と題する料金表が掲示されていました。後述するようにこちらには3種類の浴室があるため、その種別によって異なる料金が案内されている他、お湯の持ち帰りを「売湯」と称している点が興味を惹かれます。「売湯」という表現は他にはあまり見られないのはないでしょうか。でも、お風呂なのにどうして「舌代」なんでしょうね。なんだかお茶屋さんみたい…。


 
浴室は「普通湯」と称する男女別のパブリックバス(男湯・女湯)の他、この温泉の名物である「幕湯」、そして数室ある家族風呂に分かれており、玄関や帳場に近いところから、女湯・男湯・幕湯・玉之湯(家族風呂の一つ)、そして階下に旭湯・泉湯(いずれも家族風呂)が並んでいます。



「幕湯」や「男湯」の前には、谷側に眺望が開けている明るい休憩室があり、窓に向かって並べられているベンチには扇風機も用意され、湯上がりのクールダウン対策もぬかりありません。


 
できれば入浴可能な浴室全てを利用してみたかったのですが、それでは自分の体が茹で上がってヘロヘロになってしまうため、今回は真賀温泉名物の「幕湯」のみの利用に留めました。既に観光ガイドブックやネット上ではこの「幕湯」に関する多くの解説がなされていますので、拙ブログでの説明は最小限に控えさせていただきますが、美作勝山藩の殿様が幕を張って湯浴みしたところからその名が付けられたという「幕湯」は、画像を見てもお分かりのように、間口が一間ほどしかなく、一見すると狭隘でウナギの寝床みたいに奥へ細長いお風呂に過ぎませんが、奥まった位置にある湯船は岩盤の上に設けられており、その岩盤からお湯が自然に湧き出している足元湧出のお風呂なのであります。またこのお風呂は男女に分けられないために混浴利用となっております。実は私はこの「幕湯」の利用は2回目なのですが、初回利用時にはこんな狭い風呂に2組のカップルと私一人の計5人が、それこそ肩を寄せ合うようにして入っていました。今回の訪問時にも私と入れ替わりに水商売風のカップルが入っていきましたから、ここは西日本の混浴好きな方には有名なんでしょうね。



上画像は湯舟側から脱衣室側を撮った様子です。浴室入口から湯船まで真っ直ぐですから、たとえサッシで仕切られているとはいえ、相互間は結構丸見えだったりします。また室内にはこれといった洗い場が無く、水が出る蛇口があるばかりで、用意されている桶も2~3個しかありません。しっかり体や髪を洗いたい方は、「幕湯」ではなく「普通湯」の方が良いかもしれませんね。


 
天然の岩盤を活かして周囲をコンクリで固めた湯船は5人サイズでかなり深く、身長165cmの私ですと胸までしっかり浸かってしまいました。従って湯船の中では立って入浴する感じになりますが、槽内にはステップもありますから、そこに腰掛けて座湯みたいなスタイルをとることもできます。
湯船には竹筒が立てられており、その口からはお湯が噴き上げられていました。この筒はちゃんと固定されているわけではなく、ちょっと動かすと容易に抜けちゃうのですが、元の位置に戻せばちゃんと再びお湯が噴き上がってくるのが面白いところです。お湯はこの筒が刺さっているところのみならず、岩盤の全体から湧出しており、入浴しているといろんなところからプクプクと泡が上がってくるのがわかります。



竹筒の口をアップしてみました。噴き上がるお湯がコンモリと盛り上がっていますね。常連さん(それも一人ではなく2~3人)はこの竹筒のお湯で洗眼していましたが、ここではお湯で眼を洗うのが流儀なのでしょうか。
お湯は無色澄明でほぼ無味無臭、ツルツルスベスベの気持ち良い浴感が得られる他、気泡の付着が激しく、その気泡のおかげか入浴中はツルスベ浴感と同時にフワフワとした軽やかな感触も楽しめました。
湧出する湯量も豊富で、ふんだんにオーバーフローしており、湯使いは言わずもがな加水加温循環消毒なしの完全掛け流しです。40℃くらいの長湯仕様な湯加減であるため、湯浴み客はみなさん1時間の時間制限ギリギリまでひたすら浸かり続けていらっしゃいました。でも、たとえ40℃というぬるいお湯であっても、長湯していればかなり逆上せて、しばらくは体の芯に熱源を持ったかのように発汗しつづけますから、休憩室の扇風機が大いに役立つのであります。


 
今回入浴したのは混浴の「幕湯」のみでしたが、その隣の「男湯」も見学のみさせていただきました。ひたすら湯に浸かるための「幕湯」と異なり、こちらは実用的な入浴を目的としているだけあって、脱衣室は「幕湯」の倍近いスペースがあり、棚や籠の数もしっかり確保されています。



浴室は「幕湯」を一回り大きくしたような造りでして、浴槽の容量も1.5倍ほどあり、その湯船の真ん中からは「幕湯」のように竹筒が突き出ていて、そこからお湯が噴き上がっていました。実用性を高めているだけに風情は劣りますが、広い上に異性に対する姿勢を気にしなくて済むので、こちらの方がゆっくり寛げそうな気もします。
この「普通湯」は150円で入れますし、歴史ある「幕湯」ですら250円なんですから、その安さには驚きです。しかもお湯のクオリティも良好なんですから、温泉マニアであるか否かを問わずに皆さんからの評価が高いのは当然ですね。


アルカリ性単純温泉 39.5℃ pH9.4 205L/min(自然湧出) 蒸発残留物0.14g/kg
Na+:48.0mg, Ca++:2.5mg,
Cl-:13.6mg, HCO3-:52.7mg, CO3--:15.0mg,
メタケイ酸等の数値掲示なし

JR姫新線・中国勝山駅より真庭市コミュニティバス『まにわくん』の「蒜山・久世ルート」で「真賀温泉前」バス停下車すぐ(2013年4月改訂の時点で一日当たり下り7便・上り5便)
岡山県真庭市仲間  地図
0867-62-2953

7:00~22:00 無休
普通湯(男湯女湯)150円、幕湯250円、家族風呂1000円/3人まで(1200円/4人、1400円/5人)
備品類なし(石鹸・シャンプー類など販売あり)

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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