温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

大船温泉 下の湯(2013年10月再訪)

2014年01月31日 | 北海道

道南の温泉を巡っていた2013年秋の某日、せっかく亀田半島を訪れているのだから、あの名湯を外す訳にはいかないと思い、久しぶりに大船温泉「下の湯」へ向かうことにしました。こちらは以前にも訪れたことがあり、拙ブログでも取り上げております(前回記事)。ここ数年、各地の鄙びた温泉は相次いで廃業しているので、行こうと決めた際には同時に不安が脳裏をかすめたのですが、実際に現地へたどり着いてみますと、前回訪問時と全く変わらない秘湯感溢れる静かで渋い佇まいでしたので、とっても安堵しました。


 
モスグリーンに塗られた鋼鉄の橋の上から、川の上流側を眺めます。訪問した日はちょうど紅葉が見頃を迎えており、錦のように彩られた川原の中を、清流と白い白濁湯の二筋が流れていました。また湯小屋の背景も紅葉真っ盛りでした。


 
湯小屋の手前にあるお湯の中継槽からは、余ったお湯が川へこぼれ落ち、その流路が瘤状に盛り上がっていますね。これも以前同様。


 
湯小屋の右側に建つ民家で料金を支払ってから、湯小屋へ向かって引き戸を開けます。草臥れたソファーが置かれた脱衣室の様子も以前のまんま。


 
旧仮名遣いの注意書きも以前のまんま。



かなり年季の入った総木造の浴室も相変わらずで、イオウ臭が漂う薄暗い室内には白濁の硫黄泉が湛えられ、窓から差し込む陽光が湯船の湯面を青白く反射させていました。たかが数年で大きく変貌するわけないのかもしれませんが、でも関東人の私としては、遠路遥々やってきて、そして以前と変わらぬ姿で出迎えてくれると、得も言われぬ嬉しさが込み上げてくるものです。この浴室は果たして何年もの間にわたって、この古風な姿を維持しているのでしょうか。聞いた話によれば湯船は明治以前から使われ続けているらしいのですが、だとすれば、これまでどれだけの人がこの湯船で疲れを癒してきたのでしょうか。室内の湿り気とほの暗さが、郷愁を余計に駆り立てます。


 
昔ながらの湯小屋ですから、洗い場には小物を置く小さな棚や柄杓が用意されているばかりで、シャワーなんて現代的な設備は無く、かけ湯するには湯船から桶でお湯を汲む他ありません。でも室内の隅には桶がきちんと積まれており、その様子からは、このお風呂を管理なさっているファミリーの温泉に対する愛情が伝わってきます。


 
浴槽に張られたお湯は、やや青っぽく見える灰白色に濁り、湯中では溶き卵のような湯の華が大量に舞っています。湯船は体感で43~44℃くらいと思われ、人によっては熱く感じられるかもしれませんが、このピリッとする感覚がまた堪りません。湯中で肌を擦ると、サラサラに近いパウダリーな浴感とやや引っかかりのある浴感が混在しつつも、前者のほうが勝って伝わってきました。またお湯からはちょっと焦げた感じを伴うイオウ臭と砂消しゴム的イオウ臭という、2パターンのイオウ臭が放たれており、口に含むと石灰味と石膏甘味、薄塩味、苦味、硫黄味が感じられました。


 
壁の外側には上述の中継槽があり、そこから樋を伝って流れてくるお湯がこの湯口から吐出されているのですが、吐出口のお湯は50℃弱の熱さがあり、お湯を出しっぱなしにすると湯船が熱すぎてしまうため、私の訪問時は湯口に木の栓が突っ込まれており、投入量を絞ることによって湯船の熱さを抑えていました。とはいえ、客の好みによってこの栓を抜いても構わないわけで、実際に抜いてみますと、熱いお湯とともに大量の湯の華が入り込んできました(退室時には栓を元に戻しておきましたよ)。



この画像ではわかりにくいのですが、男女両浴室の仕切り下は貫通しており、湯船は男女双方で共通となっています。つまりこの仕切塀の下を潜れば容易に男女双方を行き来できちゃいます。上画像はその仕切り塀下を撮ったつもりなのですが、お湯の白濁が強いので、貫通している様子がさっぱり写っていませんね。女湯の湯口から吐出されるお湯の量は少なく、にもかかわらず湯加減は熱めであるらしいのですが、それもそのはず、お湯の供給量が多い男湯と共通の湯船なんですから、熱くて当たり前なんですね。

あまりに古い陋屋で全体的にくたびれていますから、衛生的な面や設備面の充実さを重視する方には不向きですが、いかにも秘湯らしい佇まいといい、歴史を感じさせる鄙びた風情といい、イオウ感がはっきり伝わってくる白濁したお湯といい、温泉ファンが好む要素をいくつも兼ね備えており、私もそれらにすっかり魅了され、湯船に浸かった瞬間に、いくつかのマイナス要素は一気にどこかへ吹き飛んでしまいました。また今回は運良く終始独り占めでき、この素晴らしいお湯を思う存分堪能できました。


温泉分析表掲示なし

北海道函館市大船町821  地図

8:00~21:00
200円
備品類なし

私の好み:★★★

コメント
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