監督:山本沙代
シリーズ構成:岡田麿里
キャラクターデザイン:小池健
美術監督:田中せいき
《あらすじ》
ある秘宝を狙い、孤島に侵入するルパン三世。そこでルパンは美しくも妖しい女と出会う。その女の名は「峰不二子」と云い、流行りの謎多き女怪盗である…。甘美で危険な2人の邂逅が、この物語の始まりを告げる。不二子の前に現れる4人の厄介で型破りな男達…。神出鬼没な世紀の大泥棒「ルパン三世」、早撃ち0,3秒の天才ガンマン「次元大介」、剣の道に生き、時に殺しも請け負う「石川五ェ門」、ルパン逮捕に強い執着を持つ男「銭形警部」。決して交わってはいけない5人が、予測不能な軌道を描きながら、ぶつかりあい火花を散らす!
(日テレオンデマンド(番組概要)より)
面白かった…!!
『峰不二子という女』が終わりました。正直言って、初回と第2回目が面白かった以降は、第6話を除けば微妙な出来で、これは終わりまでもちこたえることができるのかと心配でしたが、第10話からは持ち直しましたね。最終回にこんなどんでん返しが用意されていたとは、ちょっと想像できなかったな。これはお見事! 見直すことはない作品になるかと思っていましたが、がんばって観てみるもんですね。最後の最後できちっと締めてくれたおかげで、もう一度観たいと思えてきました。これまでは日テレオンデマンドでしか観られなかったので、関西での放送が楽しみだな。
この『峰不二子という女』というシリーズはタイトルの通り、ルパン三世に登場する不二子ちゃんという女性にスポットを当てたものです。私はこれまで不二子ちゃんという人はいったいどういう人物であるのかについて深く考えてみたことがなかったので、これは面白い作品になりそうだと期待していたわけです。
そしてアニメが放送され、初回は素晴しいものでした。最終回までに何度か引用されることになる初回のあのシーン。教祖のてのひらから白い花のようなものを巻き散らすのに合わせて視点がグッと近づいたり遠ざかったりするところ。あの場面に私は脳天が痺れるような思いでした。こいつは凄いものが始まったぞ! とワクワクしましたが、結局その後は終盤に至るまであれほど気合いの入ったシーンにはお目にかかれなかったのは残念。ところどころ「紙芝居かよ!」と言うほどに、キャラがスライドしてるだけの場面があったりする手抜き感には別の意味で痺れましたね。不二子ちゃんの顔も「誰だよ!?」って叫んじゃうくらいのときがありましたし;
しかし、それでもまずこの作品の素晴しいところのひとつには、ビジュアルが非常に美しいことがあります。全13回を通してみても、途中あからさまに手抜きの場面もありましたが、要所要所にハッとするような美しい画面が挿入されてくるのです。独特の色使い、太い線描のタッチ、幻想的な表現のその幻想性。つい見入ってしまうような美しさがありました。
それから最初にも書きましたが、最終的にはストーリーも良かった。途中のエピソードには余計なものがあったのは否定できませんが、「峰不二子」とはどんな女なのか? というテーマをそこそこうまく掘り下げていたのではないかと思います。余計だった、と言えば、このシリーズのオリジナルキャラクター「オスカー」はいささか中途半端だったでしょうか。完全なる美貌を誇り男からも女からも愛されずにはいられない「峰不二子」という存在に対抗しうる人物になるかと期待しましたが、ちょっと惜しかった。ていうか、最後はもうちょっとしっかりと退場させてほしかった。でも第6話が素晴しかったから私はこのキャラを許すわ。
峰不二子とはどんな女なのか?
一分の隙もない美しさ、知性、狡さ、欲しいものを手に入れるためなら惜しげもなく誰にでもその肉体を与える女。第1回では不二子の露出度の高さが話題になりましたが(オープニングからして全裸)、これは不二子ちゃんが目的のためならばためらいもなくいつでも裸になって、その肉体を武器に仕事(泥棒稼業)をこなすのだということを強烈に印象づけることに成功していたと思います。彼女の肉体は、器としては完全なものであり、それを前にすれば男でも女でも惹き付けられずにはいられないほどに魅力的なのです。
しかし、彼女の完全な器の中身、心ということになると、どうなのだろう? 物語では不二子の内面、心の奥底に閉じ込められた過去の記憶について語られることになります。彼女はどういった理由で彼女であるのか? それに迫るにつれて、不二子は脅えて心を閉ざしていくと同時に、肉体もまた隠されていきます。中盤では不二子自体があまり登場しなくなる。彼女が不在のまま、ルパンや次元、五ェ門、銭形にオスカーらの行動によって、不二子の過去について少しずつ明らかになっていくというつくり。
不二子が閉じ込めた記憶。幼い頃の記憶。フクロウ頭と伯爵との日々。頭に冠のようなものをかぶせられて、そこに電流が……。残酷で残虐なこの一連のシーンが、しかしとても幻想的に、青く、美しく描かれていたのは本当に素晴しかったです。その姿をつかまえようとすると、無数の蝶になって消える、とかね。
峰不二子は過去にトラウマを抱え、それを乗り越えられないような女なのか?
過去のトラウマとか(その内容的にも)ちょっと安直じゃない? とか実は第12話までずっと思ってましたけれど、こんなふうに着地するとはな。いや、恐れ入りました!
欲を言えば、物語と人物についてもっとしっかりと構築、構成してくれれば、もう少し安心して観ることができたのにと思います。が、この不安定感があったからこそ、最終回であれだけスッキリすることができたのかと考えれば、まあそれもよかったのでしょうか。
さて、そんなわけで『LUPIN the Third~峰不二子という女~』は、良作と言えるかどうかはほとんど個人の好みでハッキリ分かれるところだと思いますが、私にとっては悪くない作品となりました。オープニングの「峰不二子という女」という題字が出るところなんか、何度観てもかっこいいですしね。ともかくも、やっぱり作品は最後まで観てみないといけないなという反省を促してくれるものでした。出だしはいいのに最後で大爆死するアニメもありますが、やっぱり最初から最後まで観てみないとですね……別に評論家になりたいわけでもないけどさ。「お、これは!」と最初に手応えを感じた作品くらいは、完走すべきだな。うむ、がんばってよかった。
不二子ちゃんは、やっぱり不二子ちゃんでした。
スッキリした!!
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