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『人形【パペット】アニメーションの魅力☆ただひとつの運命☆』

2006年01月31日 | 読書日記ー実用
おかだ えみこ (河出書房新社)

《紹介されているアニメーション作家》

(ロシア)ヴワディスワフ・スタレーヴィチ/アレクサンドル・プトゥシコ/ロマン・カチャーノフ
(チェコ)ヘルミーナ・ティールロヴァー/カレル・ゼマン/イジー・トルンカ/ブジェチスラフ・ポヤル
(英米) ウィル・ヴィントン/ニック・パーク/ティム・バートン
(日本) 持永只仁/岡本忠成/川本喜八郎


私はアニメーションが好きでよく見ます。この本では特に人形をつかったアニメーションの歴史と作家についてを詳しく取り上げています。ひとことに「人形アニメ」と言っても、色々な手法やスタイルがあるものだととても勉強になりました。著者と交流のあった作家の人柄に関する裏話なども多数紹介されていて、見所満載の名著であります。おそらく現在のアニメーション業界に多大な影響を与えただろうアニメ界の巨人たちの苦悩と努力、逆境にも負けない情熱には心を打たれます。彼等の作品が美しく楽しく、そして何度見ても魅力が尽きないのは、その作品に注ぎ込まれたエネルギーが計り知れないほど大きかったからなのだということが分かりました。逆に考えると、楽をしようとか誤魔化そうと手抜きをすれば、やはり何をやっても優れた作品には成り得ないのだろうなあ、としみじみと反省させられるのでした。

面白かったのは、最初のスタレーヴィチ。家族で昆虫が登場人物のアニメを作っていたらしいのですが、その技術が見ただけではわからないような特殊なもので、今となってはその技術を受け継ぐものもなく、どういうものだったのやらさっぱり分からないらしい。しかも、彼が奥さんと娘さんに手伝わせ、ひっそりと作っていたアニメ(家内制手工業ですね)の内容が、倦怠期のカブトムシ夫婦がお互いに浮気をし合い、彼女のトンボをカブトムシの亭主に取られたキリギリス(カメラマン)がその浮気現場を盗み取りするという『カメラマンの復讐』。私は昆虫は大の苦手ですが、これは見たい! この人はかなりグロテスクで風刺のきつい作品を多く作ったそうです。頑なな信念というのは、取っ付きにくいものでもありますが、やはり美しいものですね。著者いわく、スタレーヴィチとチェコのヤン・シュヴァンクマイエルには通ずるものがあるそうです。ちなみに今回はシュヴァンクマイエルはこの本ではあまり出てきませんが、彼はシュルレアリストであってアニメ作家に限らないでほしいとご本人がおっしゃっているそうです。なるほど。
それからティム・バートンがもともとはディズニーの社員だったというのにも驚きました。へえ、そうだったのか。何となく意外です。私ときたら『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』をまだ見ていないんだよなあ。

読み終えて、今まで知らなかった作家や知っていたけれど見たことがなかった作家の作品をとても見たくなりました。というわけで、早速、ロマン・カチャーノフの『チェブラーシカ』をアマゾンに取り寄せ。普段は在庫切れ寸前のものばかり頼むので、2か月待たされて結局「確保できませんでした」と可哀想な目ばかりに遭わされていた私ですが、今回は2日で届きました。うむ、さすが人気作です。他には、カレル・ゼマンもかなり幻想的な感じなので、いつか是非見たいと思います。それから川本喜八郎も。昔、NHKで『三国志』とかやってましたね。人形が皆たいそう美しいのでよく見てました。『鬼』『道成寺』『火宅』の不条理三部作は是非見たい。さらに最近の『死者の書』も絶対見たいです。そう言えば、ロシアのユーリ・ノルシュテインもちらっと紹介されていて、今回『チェブラーシカ』と一緒にDVDを注文しようかなあとも思いましたが¥6、000ーくらいするので断念。しかしいずれ手に入れるつもりです。『ウォレスとグルミット』のニック・パークも新作がもうすぐ出るみたいですし、これから楽しくなりそうです。