小学校の運動会で午前中だけの「時短」開催が定着してきたようだ。 新型コロナウイルスの影響は
和らいだが、教員の勤務時間削減や熱中症予防にもなるとして引き続き種目を絞る学校が目立つ。
弁当づくりが不要になるケースもあり歓迎する保護者も多いという。 一大行事の姿が様変わりす
るなか、地域と子どものつながりの維持へ工夫を求める声もある。
「頑張れ~!」。 9月末、東京・板橋の区立成増ケ丘小学校は4年ぶりに全校児童が集まる形で
運動会を開催した。 今秋は児童や多くの保護者がマスクなしで参加し、大きな声援のなかでリ
レーや騎馬戦をした。
ただ、コロナ前までは恒例だった入場時の行進や
全校児童が参加する「大玉送り」などは廃止。
PTAや来賓が参加する競技もなくし、プログラ
ムは午前11時半ごろに終わった。
時短の目的の一つは教員の負担軽減。校長は「運
動会の練習時間が短くなり、教員の業務量が減っ
た」と話している。コロナ禍で規模を縮小したこ
とが見直しのきっかけになった。浮いた時間の一
部はプログラミングなどの授業に充てたという。
時短開催を続ける学校は少なくない。 名古屋市立小の23年度の計画では全体の95%が半日だ
けの開催。 コロナ前の62%から大幅に増えた。 市教育委員会の担当者は「感染対策で時間
開催が広がりさらに加速した」とみている。 市教委によると、教員の負担軽減だけでなく、近
年の厳しい暑さによる熱中症を警戒する学校が多い。
運動会の見直しは教員の負担軽減策として国も呼びかけている。 文部科学省は恒例行事を一律に
コロナ前の形式に戻さず、必要なものを精選するよう現場に要請。 中央教育審議会(文科相の諮
問機関)は8月、教員の働き方改革の関する緊急提言中で、閉会式の簡素化や行進の省略によって
運動会の練習時間を減らした例を照会した。
学習指導要領で運動会は「健康安全・体育的行事」に位置づけられる。 規律ある集団行動や責
任感を身につける、体力を向上させるといった狙いがあり、開催方法や内容は各学校に委ねられ
ている。
文科省担当者は「地域の理解が得られるなら、半日開催の方が教員の働き方改革につながる。 推
進してほしい」と話している。 保護者は前向きに受け止める声が多いようだ。 愛知県の小学
校が23年度に実施したアンケートでは8割超の保護者が「午前開催で良かった」と回答。 全
日開催の支持は1割だった。 弁当づくりといった準備の負担を訴える声が寄せられている自治
体もあるという。
一方、寂しさを感じる人もいる。 今秋に午前開催した埼玉県の小学校の男性教員は「教員の負担
は減ったが保護者の間では『盛り上がりにかける』との意見は根強い」と明かす。 次回以降に
向け全日開催に戻すことも含め校内で協議するという。
日本の運動会は1874年に東京・築地にあった海軍兵学寮が開いた「競闘遊戯会」が先駆けとさ
れる。 85年に初代文部大臣の"森有札"が学校での運動会を奨励し広がった。 家族総出で応
援する光景が各地で見られ、地域を挙げた年中行事といった側面もあった。
運動会の運営に詳しい関西大の"神谷教授"は「子どもと地域のコミュニティーのつながりをつくる
意義は大きい」と話す。 教員の負担軽減のための時短開催はやむを得ない面があるとしたうえ
で「地域住民との共催による運動会をする学校もある。 子どもの教育的な観点を軸に開催のあ
り方を工夫する必要がある」と指摘している。
和らいだが、教員の勤務時間削減や熱中症予防にもなるとして引き続き種目を絞る学校が目立つ。
弁当づくりが不要になるケースもあり歓迎する保護者も多いという。 一大行事の姿が様変わりす
るなか、地域と子どものつながりの維持へ工夫を求める声もある。
「頑張れ~!」。 9月末、東京・板橋の区立成増ケ丘小学校は4年ぶりに全校児童が集まる形で
運動会を開催した。 今秋は児童や多くの保護者がマスクなしで参加し、大きな声援のなかでリ
レーや騎馬戦をした。
ただ、コロナ前までは恒例だった入場時の行進や
全校児童が参加する「大玉送り」などは廃止。
PTAや来賓が参加する競技もなくし、プログラ
ムは午前11時半ごろに終わった。
時短の目的の一つは教員の負担軽減。校長は「運
動会の練習時間が短くなり、教員の業務量が減っ
た」と話している。コロナ禍で規模を縮小したこ
とが見直しのきっかけになった。浮いた時間の一
部はプログラミングなどの授業に充てたという。
時短開催を続ける学校は少なくない。 名古屋市立小の23年度の計画では全体の95%が半日だ
けの開催。 コロナ前の62%から大幅に増えた。 市教育委員会の担当者は「感染対策で時間
開催が広がりさらに加速した」とみている。 市教委によると、教員の負担軽減だけでなく、近
年の厳しい暑さによる熱中症を警戒する学校が多い。
運動会の見直しは教員の負担軽減策として国も呼びかけている。 文部科学省は恒例行事を一律に
コロナ前の形式に戻さず、必要なものを精選するよう現場に要請。 中央教育審議会(文科相の諮
問機関)は8月、教員の働き方改革の関する緊急提言中で、閉会式の簡素化や行進の省略によって
運動会の練習時間を減らした例を照会した。
学習指導要領で運動会は「健康安全・体育的行事」に位置づけられる。 規律ある集団行動や責
任感を身につける、体力を向上させるといった狙いがあり、開催方法や内容は各学校に委ねられ
ている。
文科省担当者は「地域の理解が得られるなら、半日開催の方が教員の働き方改革につながる。 推
進してほしい」と話している。 保護者は前向きに受け止める声が多いようだ。 愛知県の小学
校が23年度に実施したアンケートでは8割超の保護者が「午前開催で良かった」と回答。 全
日開催の支持は1割だった。 弁当づくりといった準備の負担を訴える声が寄せられている自治
体もあるという。
一方、寂しさを感じる人もいる。 今秋に午前開催した埼玉県の小学校の男性教員は「教員の負担
は減ったが保護者の間では『盛り上がりにかける』との意見は根強い」と明かす。 次回以降に
向け全日開催に戻すことも含め校内で協議するという。
日本の運動会は1874年に東京・築地にあった海軍兵学寮が開いた「競闘遊戯会」が先駆けとさ
れる。 85年に初代文部大臣の"森有札"が学校での運動会を奨励し広がった。 家族総出で応
援する光景が各地で見られ、地域を挙げた年中行事といった側面もあった。
運動会の運営に詳しい関西大の"神谷教授"は「子どもと地域のコミュニティーのつながりをつくる
意義は大きい」と話す。 教員の負担軽減のための時短開催はやむを得ない面があるとしたうえ
で「地域住民との共催による運動会をする学校もある。 子どもの教育的な観点を軸に開催のあ
り方を工夫する必要がある」と指摘している。