昨日読んだ本は、「南の島のたったひとりの会計士」。
奄美大島にUターンした、公認会計士の”奮闘記”。
島を愛し、公認会計士の顧客である大企業も公開企業もない島に帰った著者は、税理士として島興しに貢献できる希望に満ちていた。「絶対にシマに貢献できるち思ってるばぁ。命がけで立て直さんばぁ。シマが好きだからやぁ。」
しかし、その真剣なとりくみも行き違いがうまれ、ほどなく、「みんなやる気がないんだったら、どうしろというんだ。」と嘆く日がつづく。「やる気がなくて、だらしなくて、おまけに自分の足で立とうともしない。」
しだいに酒におぼれ、昼間から酔っ払い、やがて血を吐いて病院へ運ばれた。
酒をいっさい断った著者の再起がはじまる。
得意先の企業の苦難を、仲間が集まって力を合わせて助けた台風直撃の夜、「自分には何のメリットもないのに、電話ひとつで集まってくれるなんて・・」「だからみんな島がすきなんだよ。」「海がきれいだとかやぁ、食べ物がうまいとかやぁ、いろいろな理由があるけど、島で生まれた人間が一番すきなのは、やっぱり島のひとたちなんだよね。助け合いの精神とか、人情とかが今でも残っているからやぁ。」
困難を乗り越えて、話がはずむ。
おそらく、やる気がなくて、だらしなくて、自立しなくて、ということと、助け合いや人情は、同じものなのだろう。ビジネスの世界とはちがう価値観がある。
おそらくは、ビジネスの世界の価値観よりもすばらしくて、自滅する世界をすくう可能性をもっていると感じています。
ビジネスの価値観を島へ持ち込むのが正しいのかどうか。
島のほうが、未来を握っているのかもしれない。
屋宮久光著「南の島のたったひとりの会計士」扶桑社、2006.11.10刊、1300円+税