23・138億年かけてたどり着く、って
138億年前、ビッグバンという世界のオーニングベントの際に、大量の電磁波が放出された。
その波は休むことなく光速で飛びつづけ、138億光年を旅した今、時空間の膨張によって波長がだらだらに引き延ばされた「宇宙マイクロ波背景放射」として、宇宙空間を隈なく埋める雑音電波となってる。※1
それを観測することは、ビッグバンの残滓を見る行為でもあるんだけど、ビッグバン直後(38万年後)の様子まではたどれても、そこから先はすべての光がこんがらかったカオスなので、ビッグバンそのものの瞬間を見ることはできないんだった。
さて、138億年前、電磁波と同時に、強力な重力波もまた放出された。
途方もない質量塊が猛烈に時空間をゆがめ、そのゆがみが波となって光速でひろがり、138年の歳月を経た今日、われわれの元にたどり着く。
質量は、相対論的重力論によって実際に時空間をゆがめるので、その波が地上に流れ着くと、本当に地球がゆがむ。
ノーベル賞を獲ったリーゴチームは、わりと近い宇宙空間にあるふたつのブラックホールがお互いに向かってらせんに落ち合う、というまがまがしいイベントが引き起こす、アメリカの大地の東西と南北の距離の狂いを、量子単位で検出したんだ。
そんな観測装置を138億年先の宇宙空間に向ければ、138億年前の様子がわかるわけだ。
ところで、肝心の「138億光年先」ってのは、いったい空のどの方向にあるんだろう?
観測装置は、全天上のどのポイントに向けるべきなんだろう?
そのカギもまた、ビッグバンが握ってる。
つづく
※1 実際に、ブラウン管テレビで観られる放映後のザーザー画面は、背景放射を地上のテレビアンテナが拾ったものだ。
東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園